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物理サーバーのサイロ化がそのまま仮想化に受け継がれてしまった

― 二巡目に移るうえで大切なことは何でしょうか?

宮原:最初の仮想化導入は、既存のシステムを仮想化し、コストダウンを図ることでした。その結果、かつてのシステムが抱えていた課題がそのまま引き継がれた一面があったのも事実です。

引き継いでしまった課題とは、膨大なサーバーが乱立していて、それぞれが独立し、他のシステムと連携が取れないといったサイロ化の問題などです。サイロ化された状態のまま仮想化に移行した場合は、仮想化後もサイロ化の状態が残ってしまいます。

しかも、物理サーバーから仮想サーバーへの移行は、一気に行われたわけではありません。企業には年度予算があります。またシステムごとにライセンスやサポート、リースの期間も関係します。順番に仮想サーバーへの移行が進められた結果、サイロ化された仮想環境の塊がいくつもできてしまいました。

― オンプレミスと同じ考えで仮想化に取り組んだこと。年度別予算という区切りがあること。それらは多くの日本企業が抱えている課題といえます。

宮原:本来であれば、最初に仮想化するときに、将来を見越した設計をし、そのまま拡張していけるようにしておけばよかったのです。次のリプレースで検討するべきは、サイロ化した仮想環境を整理しなおすことでしょう。

年度予算で区切って順番に移行するのではなく、関連するシステムをまとめるようにしたり、アプリケーションのライセンス期間でまとめたりするのも、解決に向けた一つのアプローチといえます。

とはいえ、次は仮想サーバーから仮想サーバーへの移行の場合は、物理サーバーからの移行ほど大変ではありません。仮想化に対する理解やノウハウもありますし、仮想化のテクノロジーも進んでいます。

ハイパーコンパージドインフラストラクチャー(HCI)などは、既存の仮想サーバーをさらに集約するシステムとして注目されています。HCIは、コンピューティングとストレージ、運用ツールをセットにした仮想化環境構築に適したもので、短時間で仮想サーバーを構築し効率よく運用できるという利点を持っています。HCIのようなものが登場したのも、時代の必然といえるでしょう。

図2:仮想化への意識の変化

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ビジネスのスピードアップに貢献する仮想化

― 仮想化は、これからのビジネスにおいてどのように役立つものでしょうか?

宮原:仮想化の迅速性、俊敏性、柔軟性といった利点はさまざまな面で現れるでしょう。情報システム部門であれば、ITシステムの開発手法が変わるという点が挙げられます。システム開発に仮想化を活用すれば、効率よく開発できます。それはビジネスのスピードアップにも寄与できるでしょう。

最近、企業のシステム開発で感じているのは、「内製化への揺り戻し」が起こっているということです。かつての企業で用いるITシステムは、自社、もしくはSIerと協力して、フルスクラッチで作るものが多かったのですが、近頃はSaaS型のクラウドサービスの利用も増加していました。ところが、やはり自社専用のものを開発する重要性が認識され、内製化を望む声が高まっているように感じます。

仮想環境であれば早ければ申請したその日のうちにテスト環境を作ることも可能です。簡単に用意できるから、必要なときに申請して、使い終えたら消すのも容易です。その結果、ビジネスに必要なITシステムを、効率よくスピーディーに開発できるわけです。

こういう「作っては消す」ということを何度もできるのは仮想化のいいところ。仮想化には仮想化の活用法があって、どんどん作り直せばいいということですね。自社のビジネスに、仮想化の利点が生かせそうなところがあれば、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

コンテナやSDN、SDSに注目。ただし最新テクノロジーの導入は慎重に

― 現在注目しているテクノロジーはありますか?

宮原徹氏

宮原:仮想化に似たものに、コンテナという技術があります。コンテナも、私にとっては仮想化の一種と認識しています。従来のハイパーバイザー型の仮想化は、ホストOSのうえに、仮想的なOS(仮想マシン)を用意し、アプリケーションを実行します。例えば、仮想サーバーは、物理サーバーの上に仮想化技術を使って作ります。

一方コンテナは、OSの上に仮想マシンではなく、アプリケーションを実行するためのコンテナと呼ばれる領域を作り、利用者に提供します。コンテナの特徴は、ハイパーバイザー型よりも軽量で可搬性の高い環境が構築できる点、シンプルなために必要なリソースが少ない点などが挙げられます。

将来はハイパーバイザー型仮想化のように、あるサービスを利用するために、大量のCPUやメモリーを用意して仮想マシンを構築するというアプローチは時代遅れになっていくのかもしれません。

― コンテナの流行も数年は続くと思いますが、その先はいかがでしょうか。

宮原:これから普及してくる仮想化のテクノロジーとして、SDN(ネットワーク仮想化)、SDS(ストレージ仮想化)は注目しています。ただしこの二つは、まだまだ普及の兆しが見えてきた段階で、コモディティ化(一般化、低コスト化)されたとはいえません。

サーバー仮想化は、いろいろなシステムで当たり前のように活用されています。それに対して、SDNもSDSも先進的な企業が導入を始めたばかりで、ナレッジが蓄積されるのはこれからでしょう。導入する場合は、先行事例などを参考に、メリット、デメリットを十分に検討することがポイントになります。

仮想化に取り組み始めたばかりのころは、誰もが導入に慎重でした。ビジネスで使うシステムを仮想環境に乗せて、業務に影響が及んだらどうしようと、石橋をたたくように進めたものです。

情報システム部門は、ビジネスで利用するシステムに責任を持たなくてはいけません。それはオンプレミスだろうと、クラウドだろうと、仮想化だろうと変わらないことです。それぞれの利点、ビジネス上の導入効果、テクノロジーの将来性などをしっかり検討したうえで、責任を持って最適と思えるITシステムを導入し、運用していくことが情報システム部門の仕事ではないでしょうか。

― ありがとうございました。

【取材後記】

仮想化の変遷を振り返ると、企業のインフラ環境が急速に変革を遂げてきたことがよく分かります。現在ではITシステム、そしてそれを支えるインフラやネットワークがビジネスの最前線になり、多くの企業がITビジネスを積極的に活用しようとしています。このような環境の中、情報システム部門もビジネスのスピードに合わせて、その最前線を担う会社の戦力として変革を遂げていかなければなりません。

情報システム部門は、これまでの「企業における影の力持ち」から「ビジネスを成功に導くキーとなる部署」として、蓄積したナレッジや経験をこれまで以上に企業のビジネスに生かすとともに、自ら変革を行っていく……。今回の宮原様のメッセージは、そのような新しい歩みを始める情報システム部門への激励であり提言でもあると思います。

後編予告

仮想化が浸透することで、情報システム部門の業務も変わってきます。次回は、宮原様に「ハイブリッドクラウド時代に進むべき道」について伺います。

【 制作/コンテンツブレイン 】

2017/6/16

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