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老舗の強みを時代とともに新たな価値に変えて

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職人の設計により実現した、ビジネスシューズの立体的な牛中底。

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手縫いの場合、約半年で一人の職人によって一足がつくり上げられる。

大塚製靴の長い歴史のなかには、製靴業界における素材の進化や技術的な革新がいくつかある。例えば、ウレタン素材の登場はいまやウォーキングシューズの代名詞ともいえる同社のオリジナルブランド「ボンステップ」を生み、接着剤や底材の進化によってセメント式製法(※1)やインジェクション式製法(※2)といった新しい靴の底付けの方法が開発された。ビジネスシューズの場合、その製法は前出の2つに加え、グッドイヤー・ウェルト式製法(※3)、マッケイ式製法(※4)、ステッチダウン式製法(※5)の5つが基本。それは昔も今もほぼ変わらない。そして、どの製法であっても、また手工制であれ機械制であれ、靴づくりには必ず職人の手業が加わる。扱うのが革という天然素材ということもあり、裁断や縫い合わせ、底付けなどすべての工程で、気温や湿度といった条件に合わせた調整が必要なのだ。そこで求められるのが“経験”で、素材や技術的な進化以上に、その“経験”こそが靴づくりにおいては要となる。そして、老舗シューメーカーの大塚製靴には150年の間に培った“経験”の蓄積があり、それが一番の強みだ。

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東京・六本木ヒルズの直営店「シューマニュファクチャーズ オーツカ」。

そしてもう一つ、大塚製靴の歩みで忘れてはならないのが、「ハッシュパピー」や「ジョンストン&マーフィー」といった海外ブランドとの提携だ。日本人の足を熟知する同社が企画・デザインから手がけたそれらのブランドの国内モデル(日本向け商品)は、多くのファンを生んだ。高い技術力と国内における圧倒的な信頼でビジネスチャンスを掴み、ライセンス事業は一時主軸となっていた。そして現在、靴の市場も成熟期を迎え、もはや世代などでターゲットを括ることができなくなってきたいま、世代を超えて本物を求めるお客様に向けたオリジナルブランド開発に力を注ぐ。このように、大塚製靴は常に時代を見据え、柔軟に事業転換を図ってきた。2012(平成24)年には満を持して、東京・六本木ヒルズに直営店「シューマニュファクチャーズ オーツカ」をオープン。手縫い職人が腕をふるうフルオーダー手縫いのビスポークをはじめ、同社の“経験”を結集させ、本当に履き心地の良い靴を提供している。同店にはお客様との二人三脚で靴選びをサポートするシューコンシェルジュに加え、お手入れや修理などアフターケアを担当する職人が常駐。単に良い靴が買えるだけではなく、昨今の“体験型消費”志向に着目し、靴づくりそのものが体感できるのが大きな特徴だ。実際、ショップに足を運ぶのは幅広い世代の靴好きだけでなく、日本の丁寧なものづくりに魅せられた中国をはじめアジアからの観光客も多く、インバウンド消費も取り込んでいるという。

そうした職人の手業に代表される伝統を継承しながらも時代に合わせて新しい試みに挑戦する同社の精神は、「ほかにはないモノを置きたい」百貨店からの期待も高い。伊勢丹新宿メンズ館とのコラボレーションによる商品開発では、大塚製靴が得意とするクラシックなビジネスシューズに日本屈指の目利きバイヤーのアイデアを反映し、“新クラシック靴”との呼び声も高い名靴を誕生させた 。いまや40代以上の男性一人あたりの靴の消費量は年間1.9足で、その平均単価は2万円に満たないなか、大塚製靴は「職人技が体感できる靴」や「ここでしか買えない靴」を提案することによって、これからも老舗の強みを時代にフィットさせ、真似することのできない価値へと変えていく。

  • ※1アッパー(甲革)と表底を接着剤で貼り合わせ、プレスにかけて熱圧着する製法。作業工程が短く、機械で量産できるため、安価な靴づくりに適している。
  • ※2ポリウレタンなど底材となる素材が液状の原料の時に金型に注入し、底を付ける製法。接着強度が高く、耐久性、耐水性に優れているため、ウォーキングシューズに適している。
  • ※3高級紳士靴の代名詞にもなっている伝統的な製法で、重厚なつくりが特徴。型くずれせず履き込むほどに足に馴染み、何度でも修理ができるため、長年愛用できる。
  • ※41860年代に欧米で生まれた製法で、日本では明治30年頃導入された。構造がシンプルで軽量なのが特徴。
  • ※5アッパーの端を表底に貼り付け、その部分を出し縫いするというシンプルな製法。軽くて屈曲性が良く軽快な履き心地のため、カジュアルシューズに適している。

取材協力:大塚製靴

2018/2/13

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