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かしこい生き方のススメ
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プロフィール

童門冬二(どうもん・ふゆじ)
本名、太田久行。1927年東京生まれ。東京都庁に勤務し、都立大学事務長、企画関係部長、知事秘書、広報室長、企画調整局長、政策室長などを歴任後、退職。作家活動に入る。第43回芥川賞候補、1999年勲三等瑞宝章受章。『小説 上杉鷹山』(集英社文庫)、『「情」の管理・「知」の管理―組織を率いる二大原則』(PHP文庫)、『戦国武将に学ぶ「危機対応学」』(角川SSC新書)、『黒田官兵衛―知と情の軍師―』(時事通信出版局)など著書多数。

今回から3号にわたって歴史上の人物から、現代のビジネスについて学んでいきたい。ご登場いただくのは、戦国時代の武将から、幕末の志士まで多彩な人物を題材にした多くの著書がある作家の童門冬二さん。第1回目は、「個の力を引き出すリーダーシップ」をテーマに、歴史上の人物のエピソードや、現代に照らしたリーダーシップの在り方について、お話を伺った。

個人を生かすには足し算ではなく掛け算

― リーダーシップについて、童門さんが「この人こそ」と思われる人物は誰でしょうか?

個の力を引き出すのに優れたリーダーといって、真っ先に思い出すのは吉田松陰です。多様な人の集まる塾において、それぞれの特性を生かしながら、新しいものを生み出していった人物だと思います。

松陰は、自分の周辺にいる人間一人一人の特性を見いだす天才です。松下村塾に集まっている門下生を友と呼び、それぞれの人たちの長所を発見し、生かすことに努めました。松陰のそうした姿勢には、人を絶対に見限らないという大前提があります。欠点があるからといって、それだけで判断しないのです。
塾生には、何でも腹蔵なく話のできる友達をつくることを唱えています。具体的に「自分にないものを持っている人、つまり自分の欠点を補うような、長所を持っている人を探してみよ」というようなことを言っているのです。しかも友は、一人に偏ってはいけない。なぜならすべてに優れた人間はいないからです。多くの師を求めて、Aさんからはこういうところ、Bさんからはこういうところと「いいとこ取り」をしていくように説いています。
例えば、松下村塾にいた高杉晋作に対して、松陰は、世間知や、あるいは生き方、処世術に長けているが、学問が足りないと感じていました。一方、学問に優れているのは、やはり久坂玄瑞です。しかし、久坂は世間的な良識、見識が欠けているとも見抜いていました。そこで、松陰は、高杉には久坂から学問を、久坂には高杉から一般的な常識、世間知を学べ、と指導しています。

― とても具体的ですね。

ええ。とても面倒見が良い。松陰は、友の特性を発見したら、まずは本人に、生きていくヒントとして教えています。高杉や久坂の場合、それぞれ学問がないこと、あるいは処世が苦手なことをコンプレックスのように感じていたわけですが、「君は、自分のこれこれのマイナス面で悩んでいるようだ。確かにそれは短所かもしれない。しかし、君のこういう面は、そのマイナスをプラスに変えるような能力を持っているんだよ」と。
私は、松陰はこの時、異能対異能の相乗効果をも期待したのだ、と解釈しています。AさんとBさん、それぞれ欠けているところがあって互いに補うことができたら、それはプラスではなく、掛け算になるのです。Aの能力が100、Bが100だとしても、足したら200にしかなりませんが、掛ければ1万になります。それは会社を活性化したり、あるいは新しい製品を生んだり、今まで手の付けられなかった顧客のニーズに応えるには、そうした力が必要なのです。
ですから組織においては、AまたはBではなくて、AもBも包含することを常に考えていなくてはなりません。その役割を担っているのが、リーダーシップを発揮する立場にいる人なのです。

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