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< 脳のクセから考えるコミュニケーション術 >

いつも集中してやる気満々、周囲とのコミュニケーションもスムーズ…。そんな姿は理想だが、現実はそううまくはいかない。どうしても気が散るし、なぜかいつも意見の食い違う上司、同僚、部下もいる。そんな時、「人にはそれぞれ脳のクセがあり、それを考慮するとうまくいくこともある」、と言うのが、脳神経科学を専門とする諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀さんだ。

脳の違いから、組織づくりと交渉術を考える

― 考え方や感じ方といった「脳のクセ」というと、最初に思い浮かぶのは、やはり男女の違いでしょうか。

篠原菊紀さん

はい、大前提に個人差があるのは理解いただきたいのですが、一般に、男性と女性では脳内神経回路に違いがあります。男性は左脳なら左脳、右脳なら右脳と、それぞれの中で情報をやり取りする傾向があり、女性は左右の脳で情報をやり取りする連結性が高いという特徴があります。これが男女の行動特性として現れています。狩猟採集時代、男性は獲物を仕留めるために1日の大半を費やし、女性は周囲と調和を図りながら子育てをしたり木の実を採取していた、というのが象徴的です。男性の脳は一つのことを専門的に追求するのに対して、女性の脳は多様なタスクを並行してこなすのが得意といえるでしょう。

もちろん、一点集中の女性もいれば、男性でもマルチタスクで物事を進める人はいますが、性格や行動特性は、3割から5割が遺伝要因によるものと言われています。ですから、一つの課題を突き詰める業務なのか、複数のタスクをまとめてネットワーク化するような業務なのか、それによって男女の特性を活かした組織づくりをすると効率が上がるのではないでしょうか。

― コミュニケーションにおいても男女の違いはありそうですね。

男性はシステム型思考の傾向が強く、何がどういう仕組みでできているのか、あるいは、どういうヒエラルキーがあって自分はどの位置にいるかと考える傾向があります。女性は共感思考型といって、仕組みや構造よりも、気持ちや共感を優先します。ビジネスにおいても、この違いを理解しておくと損はありません。

例えば、取引先に提案を持っていくとしましょう。相手が女性であれば、「消費者はこんなことを感じています」と、現場の声を伝えられる人間を連れて行くと順調に進むかもしれません。相手が男性の場合は、ヒエラルキーを重視するという視点から、社長を連れて行くのが効果的な場合もあります。男性の脳は画像処理が得意ですから、グラフや表を使った資料を用意するのも有効です。取引先に誰を連れて行って、どんな情報を伝えたら説得できるか、そういったことを考える上でも男女の脳のクセを知っておくと有効ですね。

「脳のクセ」にアプローチするコミュニケーションとは

― 一概には言えませんが、思い当たる節が多々ありますね。そうした男女の脳の違いは、組織内のコミュニケーションにも影響しそうですが、どうでしょうか。

篠原菊紀さん

ええ。組織内のコミュニケーションがどうもうまくいかない、あるいは部下や同僚と意思疎通がしづらいと感じるときは、メンバーの脳のクセについて考えてみるとよいと思います。ハーバード大学の研究で「パートナーとの関係がうまくいっていると思うのはどんなときか」という調査があります。それによると、男性は自分が楽しいとか、これをやりたいというポジティブな気分でいるときに、それを相手が察知して邪魔をしないでいてくれると、関係が良好だと思うようです。晩酌をしながら好きな番組を観ている時にそっとしておいてくれることを好むわけです。他方、女性は、自分が抱えているネガティブな気持ちに相手が気付いてくれて「大変だね、大丈夫?」と気づかってくれること自体が良好な関係だと思うのですが、男性は、ネガティブな話が出る状態を「うまくいっている」とは思わず、解決しようという気持ちが働きます。女性は、解決して欲しいと思っていないので、女性と気持ちのすれ違いが起こるわけです。これも、思い当たることがあるでしょう?(笑)

これはビジネスの場面でも同じなのです。男性はソリューションが得意なので、問題解決の方向へ話を進めたがりますが、女性は「こういう場合にみんながどう感じるか、もっと考えたほうがよいのでは?」というような考え方になりやすいのです。どちらも大事ですし、どちらを優先するかは状況によって変わってきますが、会議など議論を先へ進める必要がある場面では、脳のクセによってこうした思考の違いがあることを念頭に置くとよいと思います。

― では、男女ではなく個々人の持つ特性として、性格や個性に現れる脳のクセにはどのようなものがあるのでしょうか?

信頼性の高いパーソナリティ診断として知られる「TCI(気質性格検査)」では、遺伝要素が強いとする四つの気質を定義しています。新しいもの好き(新奇探求)、リスクヘッジをしたがる(損害回避)、周囲から認められたい(社会報酬依存性)、完璧主義(固執)の四つです。このうちどれか一つに当てはまるというものではなく、誰もがすべての気質を持っていて、4因子の強弱が異なるのですね。この気質分析は、組織の人員配置や従業員のパフォーマンス向上に役立つと思います。 例えば、新しもの好きな人はフットワークが軽く、次々と新しいことに取り組むため、組織が活性化されます。しかし、そんな人ばかりでは会社は潰れてしまいますね。リスクヘッジがきちんとできる人に予算管理などの財政面を任せることで、事業として成立するのです。

あるいは、周囲から認められたり共感を得ることが快感と感じる人は、ほめられて伸びるタイプですから、人前で高い評価を与えたり、部長からの声かけを増やしたりすることでパフォーマンスが上がるでしょう。他方、人からどう評価されるかよりも、今、自分が取り組んでいることの完成度にこだわるタイプには、「がんばっているね」と声をかけるよりも、完成度そのものをほめるほうが効果的なのです。

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