COMWARE PLUS プラス・サムシングを大切なお客さまへ

メールマガジンのご登録
ポスト
        
        

ITとOTの融合がクルマの自動運転を実現する

しかし、ITとOTの融合といっても、なかなかイメージが湧きにくい。そこで、ITとOTの融合がまさに進展しようとしている自動車産業を例に、メリットと課題を分析してみよう。
クルマは多様な制御技術を組み合わせて動いており、いわばOTの成果物である。かつての機械的な制御から電子制御が進み、最近ではクルマの各部分の情報をセンサーで収集・制御し、衝突防止機能を提供するなど発展を遂げている。一方で、IT系の技術も多く採り入れられている。音楽や地図などのコンテンツの利用や、駐車場、レストランの空き状況などの情報提供は、クルマの動きを制御するOT系の技術とは異なる分野で成長を見せ、普及が進んでいる。
しかし、最近になってITとOTが連携する動きが出てきた。クルマの自動運転技術の研究開発である。クルマと道路、クルマとクルマの間の通信技術や、ネットワークを介して提供された交通情報を使って、安全で快適な移動を実現しようとするものである。
将来的に自動運転を実現するには、クルマとネットワークの連携が不可欠になる。例えば自分のクルマが備えるセンサー情報だけでは、前を走っている大型トラックのさらに前の状況は知り得ない。クルマ単体で得られる情報に加えてITによるネットワーク経由の情報を駆使してOTで運転を制御する――これが自動運転の姿と考えられる。
このようにクルマではITとOTが連携し始めているが、現在ではまだスマートフォンを介して情報をやり取りする形態が一般的だ。しかし今後は、クルマが通信機能を備え、OTだけでなくITと連携するOSを搭載し、地図情報や道路情報、周囲のクルマの情報といったコンテンツを活用するような進化が見込まれる。ITとOTの融合により、交通の安全性を高める運転支援システムや自動運転技術が進歩するのである。

16_img01.jpg

利便性とリスクは表裏一体産業構造が変化する可能性も

一方で、ITとOTが融合する世界では、これまであまり考慮せずに済んでいたリスクが高まる恐れがある。ITとOTがもたらすビジネス上の課題を研究する早稲田大学ビジネススクールディレクター同大学IT戦略研究所所長の根来龍之教授はこう語る。「OTが支える産業システムは、これまで閉じた世界で独自のOSを使って運用されることが多かったのですが、ITとの融合によりネットワークを通じて開かれた世界と連携せざるを得なくなります。さらにWindowsやiOS、Androidなどの汎用(はんよう)OSをOTでも使うようになると、セキュリティーホールを攻撃されるといったリスクが高まります」

クルマを制御する機能やOSは、これまではクルマ単体で「閉じた」システムとして動いていた。今後は衝突防止や渋滞回避などのために、道路が発信する情報や周囲の他のクルマと情報をやり取りするようになる。ネットワークを介して得た情報を基に、クルマを制御するのである。その際に、ネットワーク側から悪意のあるデータがクルマに送り込まれ、運転者もOTシステムも想定しないような挙動をクルマが勝手に起こす危険性があるというわけだ。

16_img04.jpg

安全運転性能を高めるためにITとOTの技術を融合させたクルマが、ネットワーク経由で悪意ある攻撃にさらされて運転者の意思に反した動きをしたら元も子もない。ITとOTの融合から利益を享受するためには、その基盤を守るセキュリティー対策に力を割く必要がある。
さらに産業構造へのインパクトも考えられる。根来教授は「ITとOTが融合していくと、自動車産業において今までになかったレイヤー構造が生まれてくると考えています。これまではクルマは自動車メーカーが企画から製造、販売まで一貫して責任を持っていました。ところが、ITとOTが融合する世界では、クルマというハードウエアに、クルマを制御するための車載システム、通信機器、地図などのデータ、さらに交通情報を発信する道路や信号などのインフラといった機能ごとにモジュール化され、産業のレイヤー構造が生まれます」と語る。
このレイヤー構造は、自動車産業の姿を変えてしまうかもしれない。クルマを支える車載システムのOSや地図情報のデータのレイヤーを、アップルやグーグルといったITベンダーが押さえる可能性があるからだ。特にビッグデータ分析の基になる利用者の情報は数がモノを言う。大きな自動車メーカー1社が自力で頑張っても、ITベンダーの下で合従連衡する複数のメーカーが入手できる情報にはかなわない。すでに、アップルやグーグルは自動運転車の開発を進めており、アップルやグーグルのOSやデータを使ったクルマが公道を走る日も近いとみられる。
根来教授は「クルマは総合的なシステムで、家電や情報機器のように経験の浅い企業が既存の産業に取って代わることは難しいでしょう」と指摘しながらも、レイヤー構造の変化に対応する「レイヤー戦略」の立案が既存産業側に求められる時代が来ていると説明する。

次ページ さまざまな業界でも融合が進むメリットとリスクを直視し対策を

ポスト

事例紹介

スマートフォン用リンク

エバンジェリストが語るICTの未来

スマートフォン用リンク

ページトップへ

トップへ