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フィジカルの変化に合わせてサイバーも自動的に更新される

これまでのシミュレーションでは、フィジカル側に変化があった場合でもサイバー側に別途修正指示を出さなければ変化しません。サイバー側の更新がフィジカル側の更新に追いつかないため、時間がたつほど両者の乖離(かいり)は大きくなり、シミュレーションの精度は下がります。

これに対しデジタルツインでは、フィジカルの変化がサイバーにリアルタイムに伝わり、モデルは常にアップデートされていきます。

また工場出荷時にはまったく同じ性能・仕様の機器でも使用環境が違えば消耗や劣化の度合いが異なっていきますが、従来のシミュレーションでは故障や停止のリスクを避けるために余裕を持たせた設計が必要でした。

デジタルツインでは、個々のフィジカルモデルに対応するサイバーモデルが最新の状態を反映していますので、従来よりもリスク対応のための余裕分(マージン)が少ない設計でも、予期せぬトラブルなどを最小限に抑えられます。たとえば航空機ならマージンを減らして積載量を増やすなど、より遠くへ、より大量な輸送が可能になります。

製造現場を超えて利用されていくデジタルツイン

デジタルツインは、顧客に販売する製品のシミュレーションだけではなく、自社工場の製造ラインや自社・他社を含めたサプライチェーンのシミュレーションにも応用できます。開発・調達・製造・物流・販売などの各プロセスにおける状況を過去の実績や予測から数値化してサイバー空間で管理し、無駄の少ない製造販売計画を立てるとともに、内部トラブルや外部環境がサプライチェーンに与える影響をリアルタイムに対応します。

最近は、製品のライフサイクルが短くなる傾向にあることから、SCM(サプライチェーンマネジメント)よりも、PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)が重視される業種もあります。PLMのカバー範囲はSCMよりもさらに広く、開発以前の企画・マーケティングから販売後の保守・廃棄までを含めた管理が求められますが、デジタルツインでは、IoTやビッグデータ解析がより高精度のPLMを実現して無駄の少ないビジネスを実現しています。

図2:活用が広がる「デジタルツイン」

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デジタルツインの活用事例

航空機用エンジンへの取り組み

イメージ:航空機用エンジン

インダストリアル・インターネットの旗振り役でもあるアメリカを代表するコングロマリット(複合企業)は、デジタルツインの推進でも先頭を走っています。同グループの中核をなす世界的な航空機用エンジンメーカーでは、従来、同じ型式のエンジンであれば画一的にメンテナンスや部品の交換時期が決められていました。どれだけ稼働したからどれだけパフォーマンスが低下しているかというような、個々のエンジンの状態を把握するのは困難だったからです。

しかし、デジタルツインを導入すると、フライトデータや天候データなどに、エンジン各所に装備されたセンサーから発信された情報を加えて個々のエンジンのサイバーモデルが作られます。フィジカルのエンジンの状態をリアルタイムに把握できるので、今後発生する可能性が高い問題を予測し、あらかじめ対策を採ることができます。

風力発電所(ウィンドファーム)への取り組み

イメージ:風力発電所(ウィンドファーム)

風力発電機が生産できるエネルギーは、風向きや風の強さはもちろん温度や湿度によっても変動し、もちろん地形も大きく影響します。デジタル・ウィンドファームは、デジタルツインでサイバー上に仮想発電所を構築するもので、ウィンドファーム内の個々の発電機の向きやブレードのピッチ角、タービンの効率などをデータ解析技術によって個別にカスタマイズし、発電所全体のエネルギー生産量を約20%向上させられるといいます。

IoTも活用したスマートファクトリー

イメージ:インダストリー4.0

インダストリー4.0の中核を担うドイツを代表する世界的なものづくり企業は、そのコンセプトを全面的に取り入れた「スマートファクトリー」を推進しています。IoTによってすべての機器が接続され、フィジカルに連動したサイバー空間で機器の配置や作業員の動きなどをリアルタイムに把握できるものです。これにより、顧客の多種多様な要望に応じて製造ラインを柔軟に切り替えられ、特注品の注文にもフレキシブルに応じられるマス・カスタマイゼーションが実現します。この一環として、最終出力を3Dプリンターで行うDDM(Direct Digital Manufacturing)にも対応する計画です。

バーチャル・シンガポール

イメージ:シンガポール

フランスに本社を置く3Dエンジニアリングのソフトウェア開発会社では、シンガポールの政府機関と「バーチャル・シンガポール」構想を進めています。これは、建物・道路・交通機関・通信などのインフラから地形や気候まであらゆるデータをサイバー空間に再現し、都市国家・シンガポールそのもののデジタルツインを作り上げようというものです。公共工事や効率化や公共輸送の最適化、さらには将来の都市作りにまで役立てようとする意欲的なプロジェクトで、2018年の完成をめざしています。

デジタルツイン同士の連携も重要に

デジタルツインは、IoT化で先を進む製造業を中心に普及が進んでいますが、製造業以外の業種でも有用なソリューションです。IoT化の進展につれて、製品・製造現場から建物全体、企業全体、さらにはサプライチェーンやコミュニティーへの拡大が見込まれます。

いずれは、デジタルツイン同士の相互連携が求められることになりますが、そのとき重要になるのはサイバー空間でのセキュリティーとシステムの安定性、そしてデータの相互連携です。サイバー空間に起因するリスクを回避できる仕組みがきちんと担保されていくかどうか、相互連携の将来像を見据えられる企業が存在するかどうかが、デジタルツインが広がっていく鍵になるでしょう。

【 制作/コンテンツブレイン 】

2018/03/16

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