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コムジン診療所 あなたの健康を名医がバックアップ:Vol.003:水虫 〜身近な病気・水虫を知ろう〜
身の周りに潜んでいる水虫の「素」

水虫の正体は「白癬(はくせん)菌」というカビの一種。梅雨から夏の時期にかけて発症が増えるのも、この菌が高温多湿を好むためです。

白癬菌は皮膚の表面を覆っている角質層のケラチンを栄養源としていることから、体のどこにでも寄生します。最も多いのは汗腺が密集している上、靴という通気性の悪い環境に置かれがちな足に寄生する「足白癬」、いわゆる一般的な水虫ですが、それ以外にも、手に白癬菌が寄生すれば「手白癬(手の水虫)」、爪に寄生すれば「爪白癬(爪の水虫)」、頭部ならば「頭部白癬(シラクモ)」、内股ならば「股部白癬(インキンタムシ)」、それ以外の顔やお腹、足の甲などに寄生すれば「体部白癬(タムシ)」となり、感染部位によって病名も症状も違ってきます。

また、他人に伝染する力を持っているのも白癬菌の特徴。空気感染や直接接触による感染の可能性はほとんどありませんが、注意しなくてはいけないのは白癬菌が何かを介してうつるケースです。

皮膚の最外層にある角質層に棲み付いている白癬菌は、皮膚が垢となって体外へ剥がれ落ちる時、一緒にくっついていきます。しかし、体外に追いやられてもすぐには死なず、垢が干乾びるまで約半年〜1年間生き続け、再び人に寄生するチャンスを待ち続けるのです。そのため、家族に水虫罹患者がいる場合はもちろん、プールや銭湯、スポーツジムなど多くの人が裸足で歩く場所や、公共施設に備え付けられたスリッパを使う場合などは、感染の可能性が高くなります。また、動物の毛に白癬菌が寄生している場合もあり、可愛いペットからうつされるケースも増えています。

このように、私達の身の回りのいろいろな所に潜んでいる白癬菌。いつ、誰が水虫に罹っても不思議はないのです。

清潔第一。罹ってしまったら、まず病院へ

水虫の一番の予防法は、毎日の入浴時に足を石鹸で丁寧に洗うこと。たとえ白癬菌が付着しても、菌が角質層へ侵入するまでには2〜3日かかるので、その前に洗い流してしまえば感染は防げます。石鹸は普通のもので十分。指のまたを1本1本開いて、優しく丁寧に洗った後は、乾いたタオルで水気をよく拭き取りましょう。

その他、通気性の良い靴や靴下を選んだり、オフィスではサンダルに履き替えるなど、足の蒸れを防ぐ工夫もできるだけ取り入れて下さい。また、家族に水虫罹患者がいる場合は、掃除や洗濯をこまめにすることが大切。特にバスルームの足拭きマットやスリッパ、寝具などは常に清潔にし、乾燥させておくように心がけます。

水虫に罹ってしまった場合は、まずは一度、皮膚科医の診察を受けて下さい。市販薬もたくさん発売されていますが、同じ水虫でもタイプ・症状の違いによって使用する薬は異なります。また、本当は違う病気なのに、勘違いして水虫の薬を使い続けると、症状を著しく悪化させてしまうこともあります。

「病院に行くのは恥ずかしい」などと放置したままでいると、他人への感染だけでなく、爪や手など、自分自身の感染部位も拡げてしまうことになります。さらに、白癬菌に寄生された期間が長くなるほど症状は悪化し治りにくくなるため、なるべく早い時期に診察を受けることが大切です。

水虫は適切な治療さえ行えば90%以上が治りますが、完全治癒までには、軽症の場合でも最低3カ月はかかります。根気強い治療こそが水虫退治の近道。来年の夏を快適に過ごすために、症状が軽くなっても油断することなく治療を続けましょう。

 
足の水虫のタイプと主な症状
水虫を予防・治療する6カ条

監修者プロフィール
比留間 政太郎(ひるま・まさたろう)

医学博士。順天堂大学医学部皮膚科学教室講師。
1947年埼玉県生まれ。74年東京医科歯科大学医学部卒業。78年同大学大学院医学研究科卒業。84年防衛医科大学校皮膚科講師を経て、97年より現職に。専門は皮膚科学、医真菌学、真菌アレルギー学。著書に『「水虫のこと」知って!』(芳賀書店)など。

 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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