中腰になったり、腰をひねるなど、何らかの動作をきっかけに腰に激痛が走るギックリ腰。このように突発的に起こる腰痛発作を医学の分野では「急性腰痛症」と呼んでおり、ギックリ腰はその俗称です。腰には骨や関節、椎間板、神経、筋肉などが複雑に入り組んでいて、腰痛を引き起こす原因もさまざまですが、ギックリ腰の原因の多くは、腰椎のねん挫や腰の筋肉の肉離れ。重い物を持ち上げたり、飛び跳ねたりといった急激な動作がきっかけになることもあれば、普段からの姿勢の悪さや運動不足、肥満などの下地があるところに、ちょっとした動作が引き金となって障害を起こすこともあります。
もし、急に腰が痛み出したら――まずは安静第一。硬めの布団の上で、無理をせず自分が一番楽だと感じる姿勢で静かに寝ていましょう。屋外で発作が起きた場合は、壁に背中を押し付けてうずくまり、痛みが和らぐのを待ってから立ち上がります。タクシーで帰宅する時には、膝を抱えてうずくまるような体勢で乗ると比較的楽なようです。
痛みが強い場合は市販の消炎鎮痛剤を服用すると良いでしょう。また、痛む部分が熱を持っていたり腫れているようならば、氷や冷湿布で冷やすこと。冷やして炎症を鎮めてから、今度は蒸しタオルなどで温めて血液循環を良くすると回復が早まります。
ギックリ腰の場合、安静にしていれば数日、長くても1週間ほどで痛みは治まります。1週間以上たっても痛みがひかなかったり、足にまで痛みが響くような時は、慢性腰痛に移行していたり、椎間板ヘルニアなど別の病気の可能性があるので整形外科で診察を受けて下さい。また、安静にしていても痛みが鎮まらない時には、内臓の病気を心配しなくてはいけません。この場合はできるだけ早く内科を受診するようにします。
ギックリ腰を経験しないためにも、また再発を繰り返さないためにも、大切なのは腰痛を起こさない生活づくり、体づくりです。
ポイントとしては、まず、普段からの姿勢や動作。立つ時、座っている時、歩く時、寝る時など、いつでも脊椎の生理的彎曲(逆S字型カーブ)を保つ良い姿勢をとるよう心掛けましょう。特に腰に大きな負担をかける“前かがみ”の姿勢には要注意。また、荷物を持ち上げる時は、面倒でも一度しゃがみ、荷物をお腹に密着させて持ち上げるようにします。二つ目は運動。腰を支える腹筋や背筋を強化するための体操や運動を、無理のない範囲で日常生活の中に取り入れます。そして三つ目が標準体重の維持。体重が重いほど腰への負担は大きくなるので、肥満は大敵。自分の標準体重を計算し(※)、太り過ぎているようならダイエットを検討して下さい。
※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 で算出します。
1割増程度は許容範囲と考えて良いでしょう。
|