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コムジン診療所 骨粗鬆症 〜ちょっとした衝撃で骨折の危険〜


カルシウム不足で骨がスカスカに!?

骨は、コラーゲンなどのたんぱく質でできた線維に、カルシウムやリンなどのミネラル(骨塩)が付着して出来ています。鉄筋コンクリートに例えると、支柱となる鉄筋がたんぱく質、セメントがミネラルです。骨粗鬆症の骨とは、鉄筋コンクリートでできた壁が薄くなったり柱が弱くなったりして、弱い衝撃でも倒壊しやすくなった建物のような状態なのです。
骨には、骨を作る骨芽細胞と、骨を壊す破骨細胞の2種類の細胞があり、古い骨を壊しては新しい骨に作り変える新陳代謝(骨代謝)が絶えず行われています。ところが、骨の元になるカルシウムの供給が不足すると、骨を壊す破骨細胞の働きが、骨を作る骨芽細胞の働きを上回ってしまい、そうした状態が続くと骨粗鬆症になってしまうのです。

ホルモンの働きも骨芽細胞と破骨細胞のバランスに深く関係しています。人間が生きていくためには血液中に一定量のカルシウムが不可欠ですが、血液中のカルシウムが不足すると、“カルシウムの貯蔵庫”である骨からカルシウムを溶かし出し、血中のカルシウム濃度を保とうとする働きが起こります。この時、血中カルシウム濃度を調整するために破骨細胞に骨を壊すよう指令を出しているのが副甲状腺ホルモン。一方、破骨細胞にストップをかける働きをするのがカルシトニンです。そして女性ホルモン(エストロゲン)は破骨細胞の増加を抑えたり、破骨細胞による骨破壊機能を抑制します。これらのホルモンがバランス良く働くことが骨を健康な状態で保つために必要なのです。

もともと女性は男性よりも骨量が少ない上に、生理、妊娠、授乳の度にカルシウムを消費します。幸い女性ホルモンが骨量を維持する働きをしてくれますが、閉経によって女性ホルモンが欠乏すると、女性の骨量は男性よりも急激なカーブを描いて減少します。閉経期以降の女性に骨粗鬆症が多く見られるのは、こうした背景があるからです。


インスタント食品ばかり食べている人は要注意

骨量は思春期から20歳くらいにかけて急上昇して最大値となり、40歳くらいまではその最大値が保たれて、その後減少に転じます。ただし、骨量最大値にも減少スピードにも個人差があり、そこには複数の遺伝的素因と環境因子が関係しています。

骨粗鬆症の危険因子

加齢

高齢になると、骨芽細胞の働きが衰えるだけでなく、胃腸の消化・吸収能力が低下してカルシウムを取り込む量が減少します。

閉経

閉経後は女性ホルモンの分泌量が減少します。閉経以外にも、何らかの理由で生理が早くになくなってしまった人、卵巣を摘出した場合などは女性ホルモンの分泌が減少が見られます。

運動不足

骨に負荷がかからない状態が続くと、骨からカルシウムが溶け出してしまいます。また、小さい頃から運動嫌いで体を動かさないと、骨にかかる負荷が少ないためカルシウム量が増えず、丈夫な骨が形成されません。

カルシウム不足

カルシウム不足は骨粗鬆症の根本原因です。

リンの取り過ぎ

インスタント食品などに使われるリン酸塩等からリンを取り過ぎるとカルシウムの吸収が低下します。添加物の多い食品や清涼飲料水の取り過ぎは危険因子に。

塩分の取り過ぎ

せっかくカルシウムをきちんと摂取していても、塩分を取り過ぎるとカルシウムを尿中に排出してしまいます。

過度の喫煙や飲酒、カフェインの取り過ぎ

他の生活習慣病につながるものは骨にもマイナス。カフェインはカルシウムの尿への排出を促進してしまいます。コーヒーは1日3杯までにとどめるのがベター。

胃切除など消化管の手術後や消化器系に問題がある

胃腸の消化・吸収の働きが弱いと、カルシウムを十分に取り込めません。

家族に骨粗鬆症の人がいる

遺伝的体質がある人は、骨粗鬆症になる確立が高いことがわかっています。


骨粗鬆症になると…

ちょっとした衝撃で簡単に折れてしまうのが骨粗鬆症による骨折の特徴。転んで地面に軽く手をついただけで手首の骨が折れてしまったり、尻もちをついただけで太ももの付け根の骨が折れてしまうこともあります。また、急に身長が縮んだら骨粗鬆症の疑いが。そのうちに背中が丸まって腰背痛がおこります。脊椎は骨粗鬆症の影響が出やすい骨で、なかでも典型的なのが体の重みでジワジワと骨が圧迫されてつぶれてしまう圧迫骨折。初期は痛みがないので気付かずに放置していると、内蔵が圧迫されて内科的な症状が出ることもあります。
立ち上がる時や重いものを持つ時に背中や腰が痛むなど、自覚できる症状が表れるのは、多くの場合更年期を過ぎてから。気が付かないうちにジワジワ進行し、転倒などで骨折して初めて、自分の骨が弱っていることに気付くケースが多いのです。

 



食事と運動の2本柱で防ごう

骨粗鬆症を防ぐポイントは、第一に骨を作るカルシウムを十分に摂取すること。日本人のカルシウム所要量は1日に600ミリグラムとされていますが、成長期には1,000ミリグラム、吸収力が低下する高齢者は800ミリグラムの摂取が理想です。ちなみに牛乳1カップ(200ml)には、231mgのカルシウムが含まれています。カルシウムは広く様々な食品に含まれています。日頃からバランス良く多くの種類の食品を取り、カルシウムを摂取することが大切です。

カルシウムが豊富な食品

牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品、小魚や海藻、豆腐や納豆などの大豆製品、野菜(小松菜や水菜などの青菜類)

腸でのカルシウム吸収を促進し、骨芽細胞の働きサポートするのがビタミンD。カルシウムを効率よく吸収するために必要な栄養素で、魚類、しいたけなどに多く含まれています。またビタミンDは紫外線に当たることで体内でも作られるので、普通の食事をして、適度に日光に当たっていれば、一日の必要量を満たすことが出来ると考えられています。
適度な運動も骨を強くして、骨粗鬆症を防ぐためには不可欠です。運動によって骨に負荷がかかると、その部分にカルシウムが沈着して骨の形成が促進されます。骨にかかる負荷が大きい運動ほど骨を強くしますが、大切なのは年齢や体力に見合った運動を継続的に行うこと。まずは日常生活の中でこまめに体を動かすことを心掛けましょう。
一生のうちで最も骨が作られるのは成長期から思春期にかけて。この時期に十分な栄養と運動、睡眠で、できるだけ骨量を増やすことが丈夫な骨を作るためには欠かせません。骨量が減少に転じる青年期以降は、骨量の減少を出来るだけ緩やかにすることがポイント。骨量維持のためにも、生活習慣や食習慣を見直してみてください。

骨粗鬆症は「静かな病気」と言われ、初期は自覚症状がありません。心配がある人はもちろん、心配がない人も、一度検診を受けて自分の骨の健康状態を知っておくことをお勧めします。

 

監修者プロフィール
細井 孝之(ほそい・たかゆき)

東京都老人医療センター内分泌科部長
千葉大学医学部卒業後、千葉大学医学部、日本赤十字医療センター、東京大学医学部第三内科等を経て、東京大学医学部老年病学教室講師・外来医長に。現在は、東京都老人医療センター内分泌科部長のほか、東京大学医学部講師(老年病学)、東邦大学医学部客員講師も務めている。また、東京骨を守る会企画委員長として、骨粗鬆症に関する一般向けの情報提供、啓発活動にも注力。著書に、『骨粗鬆症の最新医療』(講談社)、『骨粗しょう症を防ぐ食事と生活』(成美堂出版)など。



どこでもできる簡単ストレッチ
第4回 「背中」

オフィスや家庭で気軽に行えるストレッチを紹介します。
第4回は「背中」。日頃の生活の中で、想像以上に負担がかかっているパーツにもかかわらず、自分では目が届かないためケアがおろそかになりがち。まめにストレッチしてみずみずしさを取り戻しましょう。筋肉を痛めないように気をつけて、ゆっくりと伸ばして下さい。

緊張をほぐす 上体をひねる 広い範囲を伸ばす

▲ 足を肩幅に開いて背筋を伸ばし、両腕をまっすぐ前に出して、手のひらが内側になるように組む。息を吐きながら、組んだ手を遠くに押し出すようにして徐々に背中を丸める。腕でボールを抱え込むようなイメージで。

 

▲ 片手を前から回して脇に添え、もう一方の手を後ろから回して手の甲を背中に当てる。ゆっくりと息を吐きながら、体の軸を中心にバランスを取りつつ、両肩を水平に回して徐々に上体をひねる。手を替えて反対側も同様に。

 

▲ 両足を肩幅に開いて背筋を伸ばす。軽く膝を曲げて両手をももに置き、お尻を突き出す。次に、顔をお腹に向けておへそを見るようにしながら、ゆっくりと背中を丸めていく。腕や肩に力が入り過ぎないように。

 

ストレッチ監修/萱沼文子

 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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