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コムジン診療所 うつ病 〜ストレス社会にひそむ心の危機〜


発症数のもっとも多い中高年層

悩みや心配事があったり、仕事や人間関係がうまく行かない時などは、誰でも気分が落ち込み、憂うつになります。これは一時的な「うつ状態」で、普通は時間の経過と共に立ち直ることができるものです。が、いつまでたっても落ち込みから抜け出せず、何ごとにも無気力・無関心な状態がほとんど一日中、しかも2週間以上続いたら「うつ病」の可能性が高いといえます。通常の生活が送れないほど生きるエネルギーが低下した状態が「うつ病」なのです。

    うつ病の主な初期症状

うつ病は幅広い世代にわたって発症しますが、患者数のもっとも多いのが40〜60歳代の中高年層。世代によって、発症要因や症状の現れ方も少しずつ異なります。
・ 20〜35歳
抑制症状が強く、引きこもり、感情の平板化などで、抑うつ症や焦燥感などは軽い。そのために診断が困難なこともある。
・ 35〜45歳前後
心身共に安定している時期だが、膨大な量の仕事を抱え、疲労こんぱいして発病するケースが多い。精神的な症状と身体的な症状が同時に出やすいのが特徴。
・ 45〜55歳前後
職場だけではなく、家庭内での人間現関係や老後の不安など問題を抱えやすく特定の症状が強く現れやすい。
・ 55歳以上
精神的なストレスに加え、老化や病気など身体の衰え、配偶者の死などにも影響されやすい。身体的症状が強く現れる傾向がある。

 
精神症状
抑うつ症状(気持ちの落ち込み、憂うつ感、悲哀感、孤独感など)
抑制症状(思考力の低下、行動力の低下、意欲の低下、感情の平板化など)
不安、焦燥感(落ち着きがない、強いあせり感など)
自責感、罪悪感(自分が悪い、生きているのは迷惑などと思い込む)
身体症状
睡眠障害 耳鳴り 手足のしびれ
食欲の低下 めまい 性欲の低下
微熱 息切れ・動悸 疲労感
頭痛        

心の病の多くはストレスがきっかけ

適度なストレスは生きるエネルギー源になりますが、重いストレスが長期間続いたりするとストレスにうまく適応できなくなり、心身に変調をきたします。とくに中高年期は、男女を問わず、職場や家庭内での精神的負担が大きく、様々なストレスが重なりあう時期。両親や配偶者の死、リストラや転職、病気、子どもの独立…。こうした喪失体験や環境の変化が強いストレスとなってうつ病になる場合があります。

同じようなストレスを受けても、上手にコントロールできる人と処理しきれずに心を病む人がいるのは、その人の性格が大きく関係しています。うつ病になりやすいのは「執着性格」と「メランコリー親和型性格」と言われるタイプ。「執着性格」とは、責任感や正義感が強い完璧主義者タイプ。非常にまじめでがんばり過ぎるため、心身共に疲れ果ててうつ病になることが多いとされています。「メランコリー親和型性格」は、基本的な性格は執着性格と似ていますが、加えて人と争いを好まず、周囲に気を遣い過ぎて、ストレスを内にためてしまいます。また、柔軟性に欠け、環境の変化に弱いという面も持っています。

うつ病の発症メカニズムにはまだ未解明の部分も多いのですが、脳内の情報を伝える「神経伝達物質」が関わっていることも次第に明らかになってきました。また、体の病気がうつ病を引き起こしたり、うつ病と体の病気が併発したりすることもあります。中でも糖尿病や高血圧、ガンなどの病気がうつ病を併発しやすいと言われています。

うつ病を引き起こす主な要因

慢性化を防ぐためには

40歳以上の人がうつ病になると、症状が長引いたり再発を繰り返すことが多く、慢性化する確率が圧倒的に高くなります。気になる症状がある時は早めに精神科を受診しましょう。様々な病気が合併することの多い中高年は総合病院で診てもらうのがベスト。うつ病は自分一人で治せる病気ではなく、専門的な治療(十分な休養、薬物療法、精神療法の3つが基本)が必要です。

慢性化の原因

1. うつ病だという自覚がなく、治療の機会を逃している
2. コミュニケーションが苦手、人に弱味を見せたくないという傾向が強く、身近な人にも悩みを相談できない
3. 体の不調が全面に出るため、精神科以外で受診し、正しい診断が得られない
4. 病気になること、休むことに抵抗感や罪悪感があり、十分な休養をとれない
5. 社会復帰を急ぐあまり、症状が消えるとすぐに元通りの生活に戻ってしまう
6. 環境因や心因となる問題が解決されず、持続したストレス下にある。

疲労感や不眠、無気力感といった不適応症状は「エネルギーを使い果してしまいます。少し休んでください」という心と体からの合図です。SOSが現れた時点で自分が大きなストレスを抱えていることに気づき、少し休息しようとすれば、うつ病になるリスクもかなり低くなるはずです。まじめで責任感の強い人は、がんばり過ぎて無理を重ねる性格を自覚して、セーブするよう努めましょう。そうした心がけがストレス管理につながり、うつ病の予防や再発防止に役立ちます。


 

監修者プロフィール
中山 和彦(なかやま・かずひこ)

1951年愛媛県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。同大精神医学講座講師、助教授を経て、現在、同講座教授。96年よりロンドン大学に客員教授として留学。2001年より大連医科大学の客員教授。専門は精神薬理学、非定型精神病、女性精神医学、臨床てんかん学。著書に『こころのかたち』『抗うつ薬の科学』『中高年のうつ』、共著に『プライマリ・ケアのための心の病』などがある。



どこでもできる簡単ストレッチ
第7回 「お尻」

洋式トイレが一般化し、現代人は“しゃがむ”という動作をほとんどしなくなっています。その結果、特に硬直化して弱くなっているのがお尻のまわりの筋肉。お尻の筋肉の柔軟性が失われると腰痛などになりやすいので、こまめにストレッチを。

しゃがんだ姿勢で伸ばす 床に座って伸ばす 椅子を使って伸ばす

▲ 両膝を開き、体重を前にかけてしゃがみ、かかとを床につけてリラックス。息を吐きながら、両膝の間に上体を沈めていく。この時、かかとやお尻が浮かないように注意。両手で頭を抱え、さらに背中を丸め腰を下げる。

 

▲ 背筋を伸ばして床に座り、右ひざを立てて右足を左膝の外側に置く。背筋が伸びてバランスがとりやすい位置に右手をつき、上半身を右方向にひねる。視線は右肩を見るような感じ。同時に左の背中が伸びていることも意識して。

 

▲ 椅子に浅く座り、右脚を左膝にかける。右脚にほおづえをつくようにして、上半身をゆっくりと前に倒す。お尻の外側が気持ちよく伸び、体を前に倒すとさらに効果アップ。脚を替えて反対側も。テレビを見ながらできるストレッチ。

 

ストレッチ監修/萱沼文子

 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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