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2003年6月〜2007年5月 
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コムジン診療所 手足のふるえ 〜たかがふるえと油断しないで〜


ふるえの原因は?

「振戦」とはふるえをさす医学用語で、「本態性振戦」とは「生理的振戦」(緊張、興奮、恐怖、寒さなどの原因により、ごく自然な生理現象として現れるふるえ)が激しくなったものと考えられます。しかし、この「生理的振戦」は一時的なもので、原因が消え去ればふるえも解消されます。もともと私たちの体の動きをつかさどる運動神経系はある一定のリズムでふるえる特性をもっており、その特性が、緊張や恐怖などのストレス要因によって増幅されたものが「生理的振戦」だと言えるでしょう。
また、年をとるにつれてふるえが出てきたり、ひどくなるなど高齢者特有のふるえを「老人性振戦」といいます。ある一定のリズムでふるえるという運動神経系の特性は、若い頃ならストレス要因がない限りうまくコントロールできるのですが、年をとって筋肉の衰えや神経細胞の減少が顕著になると、制御するのが難しくなってきます。老人性振戦の場合、リラックスした状態でもふるえの症状が出るのが特徴です。
生理的振戦と本態的振戦の間に明確な境界線はありませんが、ふるえがごく自然な生理現象の域を越え、仕事や日常生活に支障をきたしたり、精神的な苦痛を感じるようであれば、それは治療の対象となる病気と考えられます。本態性振戦は、ふるえの原因となるような疾患がなく、ふるえ以外の神経症状もなく、ふるえだけを唯一の症状とする病気です。年をとるにつれてふるえが増幅される傾向にありますが、ほうっておいても基本的に病気が悪化することはありません。が、「ふるえ」を伴う神経疾患には、本態性振戦の他、パーキンソン病や甲状腺機能亢進症(バセドー病)、クローヌス、ジストニア、書痙、小脳の障害などさまざまなものがあります。たかがふるえと侮らず、まず、自分のふるえの原因がなにかを知ることが大切です。


症状のトップは字を書くときのふるえ

「字を書くとき手がふるえる」というのは、本態性振戦の典型的な症状ですが、他にも「箸でものをつかむとき手がふるえる」「頭がふるえる」「声がふるえる」といった症状があります。本態性振戦のふるえは手や指先に現れることがもっとも多く、とくに細かな作業をするときふるえが強くなる傾向があります。
手や指にふるえが出やすいのは、手の骨格筋とせき髄の運動細胞をつなぐ神経回路が、ふるえの起こりやすい構造になっていることがひとつの原因と考えられます。また、手や指は、日常生活でもっとも頻繁に使う部分で、目につきやすく、ふるえが目立ちやすいという側面もあるでしょう。頭のふるえ、声のふるえなども比較的よくみられる症状ですが、声がふるえてうまく話ができないといった状態は、本態性振戦の症状がかなり強く出ているケースで、他の神経疾患にはみられない本態性振戦特有の症状といえます。
本態性振戦は、ふるえ以外に何の症状もなく、とくに不都合を感じていなければ治療の必要はありません。問題は、ふるえの症状が進行し悪化するかどうかですが、これは人によってさまざまです。ほとんどの場合、加齢によってある程度ふるえが進行することはあっても、病気そのものが悪化することはないでしょう。しかし、ふるえが自然に解消できるといったことは期待できません。
本態性振戦は、ある日突然発症するというものではなく、年をとると共にしだいに顕著になってくるものです。また、ふるえは、ある一定の姿勢を保とうとしたとき(姿勢時振戦)や、ある動作をするとき(動作時振戦)にあらわれるのが特徴で、安静時にはほとんどみられません。


気になるふるえを自己チェック

手足や頭のふるえなどが気になり、日常生活に支障が出てきた場合、病院を受診する前に、ある程度自己チェックできることがあります。

1.

まず、どういう状況でふるえるのかを確認する。ある動作をしたときふるえるのか、あるいは一定の姿勢を保とうとしたときにふるえるのか、など

2.

いつ頃からふるえるようになったのか、あるいはふるえるようになってからの時間的な症状の経過はどうか

3.

ふるえ以外に動悸や息切れ、あるいは動きにくい、転びやすいといった運動障害や感覚障害の症状はないか

4.

ふるえの程度をみるための簡単なテストをしてみる



あなたのふるえをチェック!

テスト1 「文字やうず巻きをかく」

ふるえの程度をみるための目安としてもっとも一般的に採用されているもの。ふるえの強い方の手で、できるだけサインペンを使って書く。うず巻きは、点線の上を内側から外側へなぞるように描いていく。ふるえの強い場合、文字はガタガタとふるえて読みにくく、うず巻きも点線からはみだしてしまう。

 
     

テスト2 「手を前に出して水平に保つ」

姿勢時振戦のチェック。両腕を水平に前に出し、手のひらを下に向けて、指を開いた状態を保つ。ふるえが見られるようなら本態性振戦の可能性も考えられる。

 
     

テスト3 「水を入れたコップを持つ」

動作時振戦のチェック。水を半分以上入れたコップを口元へ持っていき、水を飲む動作をする。水が激しく波打ったり、こぼれるようなら本態性振戦の可能性がある。

 
     

ふるえ自己チェックリスト

※ 「はい」の方が多い人は、本態性振戦やパーキンソン病の疑いがあります。
※ 1〜5に「はい」が多い人は本態性振戦、6と7が「はい」の人はパーキンソン病の可能性があります。
※ 「いいえ」が多いのにふるえのあるという人は他の疾患の可能性があります。医師に相談してください。

基本的に症状がふるえだけの場合、あるいはふるえに加えて他の症状を伴う場合は、内科か神経内科を受診するべきです。とくに症状がふるえだけの場合、神経内科を受診するのが一般的です。
本態性振戦は明らかな原因となる疾患がなく、ふるえが起こるメカニズムについてもまだ十分に解明されていません。治療については、ふるえの根本的な原因を取り除くのではなく、症状を抑えたり、軽くする対症療法が中心になります。本態性振戦の治療は主に薬剤によって行われますが、患者さんの60〜70%は、薬によって症状が改善されます。ただし、慢性的な神経疾患であるため、近眼の人がいつも眼鏡を必要とするように、症状を抑えるためには、継続的な薬の服用が必要です。


 

監修者プロフィール
柳澤信夫(やなぎさわ・のぶお)

1960年東京大学医学部卒業。同大学大学院修了後、1965年東京大学医学部付属病院助手。米ハーバード大学留学を経て、1980年信州大学教授。1993年信州大学医学部付属病院長。1996年信州大学医学部長。1997年国立療養所中部病院・長寿医療研究センター院長。2001年より現職。前日本神経学会理事長。日本学術会議会員(第17期)。著書に「気になる『ふるえ』がわかる本」(法研)など



どこでもできる簡単ストレッチ
第9回 「足首」

立つ、歩くという何気ない日常の動作で、常に全体重を支えているのが細い足首。そのため足首は、むくみやすく、疲れがたまりやすい部分です。日頃から頻繁にストレッチをすることで、血行を良くし、しなやかな足首を作りましょう。

足首まわりをほぐす 足首の表側を伸ばす アキレス腱を伸ばす

▲ 両足を前に伸ばして床に座る。両手は上半身がまっすぐになるように支える。息を吐きながら左右のつま先がつくように内側にひねる。同様に外方向にもひねる。日常生活にはあまりない動きなので新鮮な刺激が得られる。頻繁に行うと効果が高まる。

 

▲ 右のつま先を床につける。支える足(左脚)を軽く曲げ、右の甲を床に寝かせるようにして足首に体重をかける。甲から足首の表側全体を気持ちよく伸ばす。かかとを外側に向けると、外くるぶしから向うずねが良く伸びる。左右交互に繰り返す。脚が疲れてだるい時に効果的。

 

▲ 足首の力を抜いて、右足を一歩前に出す。つま先を上げて、アキレス腱を伸ばす。さらに腰を引いて、肩を膝に近づけるように上体を倒し、体重を脚全体にのせる。足首からふくらはぎまで気持ちよく伸ばす。はずみをつけずに、ゆっくりと丁寧に。

 

ストレッチ監修/萱沼文子

 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page
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