御社の事業について、携帯電話のコンテンツプロバイダーというのは競合も多いと思いますが、他との差別化はどのように図っていらっしゃるのでしょう?

当社はむしろ特徴がないんです。当社はもともと、インターネットをベースにしたビジュアルコミュニケーションというところから始まっていますので、携帯電話はビジネス展開のひとつに過ぎません。
 携帯電話では、単一のキャラクターを提供するようなものではなく、早い段階からそのメディア性を意識して総合サイトを立ち上げるようにしました。  ちょうどその頃、ポケベルが流行ったので携帯電話も"女子中高生がターゲット"といった意見が多かったのですが、当社は、実際2万円を越えるような端末を買うのは、20代30代の男性が多いだろうという予測していました。
 そこで、奇をてらって何かを当てようとはしないで、マーケティングの王道を行きました。その年代の男性向けということで言うと、例えばグラビアやプロレスといったコンテンツです。しかも選手名鑑や選手入場曲の着メロ、試合の予定表や試合速報といったニュースまでも提供して、携帯電話はメディアだという意識と、雑誌やスポーツ新聞のようなイメージで定期購読者を獲得するという作戦で臨みました。
 成功すれば、競合が出てきますが、私どもはたとえばプロレスならプロレスで、そのマーケットでは早めにしっかりとした内容のものを作っているので、すでに固定のお客様を確保しています。実際、当社はサイト数は多くない代わりに、どのサイトも10万、20万、30万というユーザーがいます。雑誌でもその人数なら結構なロットですし、それだけのユーザーを獲得しているとサイト運営にも予算が取れて中身も充実し、さらに多くのユーザーを獲得できるというような上昇スパイラルに乗ることができていると思います。


そうした「王道マーケティング」の思考は、商社などにいらしたときに学んだものですか?

いえ、自分の感性を信じていないからです。私自身が凄腕編集者などではないし、しかもユーザーに気に入っていただいたかどうかは、雑誌と違ってアクセスログが取れます。雑誌はどの記事が人気があったのか、ある程度推測になってしまいますが、携帯コンテンツなら、ユーザーがどのページをどのように見ているとか、階層としてどこまで入ってくるかといったデータが取れるので、それを丁寧に解析しています。
 凄腕編集長が抜けると雑誌の売り上げがガタッと落ちたりしますね。それは会社にとってはリスクですから、ログの解析の仕方や次の企画の動かし方、運用の仕方といったものをうまくマニュアル化して、すごく"当てる"よりは"外さない"ようにしています。


非常に確実な手法ですね。

分野にもよりますがノウハウが自社に残らなくては意味がありません。最初の頃は一つずつ検証し、社員にもノウハウをつけるようにしてきました。
 ただ、一人一人がある程度のレベルに達してきたら、その下にまたチームを作って細胞分裂していくのが企業ですし、そういう意味では常にいろいろなことを仕掛けてはいます。


これからの展開を可能な範囲でお知らせ下さい。

当社はインフラの会社でもなければデバイスを作る会社でもありません。ブロードバンドにしろ普通の携帯にしろ、その使い道を考えましょうという会社です。
 ですから、携帯電話もそうですし、次世代携帯電話、携帯端末以外のインターネットに接続される家電、固定電話、テレビ、ゲーム機とあらゆる端末について、ネット接続とからめて、いろいろな提案をどんどんしていこうと思っています。
 また当社は現在すでに台湾やフランスなど海外6カ国でサービスを提供しています。日本では4年かけて端末が進化して、それに沿って我々コンテンツプロバイダーと呼ばれる業種が育っていったのですが、海外の場合は日本の5年位前の携帯からいきなりカメラ付きアプリ対応6万5000色というレベルになってしまったので、現地ではコンテンツプロバイダーが育っていません。それで海外でも画像やさまざまなアプリ、動画を端末の発売に合わせて出してほしいというような話を頂いています。
 今後は日本だけでなく、海外でも端末は普及しますから、そこに向けても新しいビジネスチャンスを見つけていくつもりです。


イラスト:篠原元恵
ご本人も言うように、一般的な「女性社長」とは少し違った雰囲気の飯田さん。「美しく仕事がしたい」という確固たるポリシーをもち、常に明快な方向性を社員に示しながら、一方で女性という気負いもなく、自然体で経営に向かう姿は、男性、女性の区別なく活躍していける環境が定着してきていることを意味しているのかもしれない。

 今回でこのコーナーは最終回を迎えることとなりました。これまでご愛読いただいた皆さん、有り難うございました。
【飯塚りえ】  

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