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IT大捜査線 特命捜査第002号:進化するマンションのITインフラ
  電気メーカーとのコラボレーション
 

汐留、品川、六本木と都市の再開発が進むなか、都心居住、特にタワー型マンションが人気を集めている。一時期、「インターネット・マンション」をウリにする物件が多かったが、最近はどうなのか?

お話を伺った鹿島株式会社開発事業本部事業部課長の山本俊行さん。

山本課長
外観

「TOKYO TIMES TOWER」の外観。鹿島建設独自のスーパーRCフレーム工法で、柱・梁のない住戸空間を実現。最上部には、車のオイルダンパーと同じ原理で揺れを制御する制震装置「HiDAM(ハイダム)」が設置され、地震や強風による建物の揺れを軽減。

「TOKYO TIMES TOWER」のモデルルームが、今回の訪問先。秋葉原駅前再開発地区に建つ、40階建て・総戸数319戸のビッグプロジェクトで、5月に販売を開始している。このマンションの建設を担当する鹿島建設株式会社の山本俊行課長にお話を伺った。

山本課長によると、都市部でのマンション建設ラッシュの背景には、地価の下落や容積率の緩和、オフィス物件の供給過多に伴い、逆に住宅の投資利回りが良くなったことなどがあるという。また、住まいを探す側としても、「どうせマンションに住むのなら便利な都心」「都心なら眺望や日照のいい超高層」を望む人が増え、都心回帰が進んだ。

照明やAV機器をコントロールする、無線LAN対応のパソコン「エアボード」。もちろん、インターネットへの接続も可能。

ディスプレイ
ユビキタス

Sスタイルのベッドルーム。プロジェクターがセットされていて、寝ながらテレビを見られる。

モデルルームで最初に案内していただいたのが、電機メーカー・ソニーとのコラボレーションによる住戸。最近の物件は、デザイナーズマンション、有名インテリアショップによる内装などを謳って差別化を図っているが、電機メーカーとのタイアップは珍しい。

「ユビキタスな映像空間」をコンセプトに設計された住戸(Sスタイル)は、AV機器があらかじめ組み込まれた近未来空間。プラズマディスプレイが設置されたリビングの床にはブルーの照明が走り、ガラスのパーティション、あるいはベッドルームの天井、バスルームの壁面にはプロジェクターによって映像が映し出される。しかも、これらのAV機器は、“エアボード”と呼ばれる無線LAN対応のパソコンによってコントロールできるという。そこには、思わずため息が漏れるような空間が出現していた。

 
 
   

 
  マンションにおけるインターネット事情
 

今や新築マンションにおいて、ブロードバンド環境が提供されているのは当たり前だが、山本課長は、変化の速いインターネットの世界はマンションにとって頭痛の種だという。

従来マンションLAN/TYOKO TIME TOWERマンションLAN「マンションにおけるインターネットの基本的な考え方は、太い線を買ってみんなでシェアしましょうということ。これは一見いいように思えますが、追随性が非常に弱い。つまり、ネット環境を組む時と実際に使う時、それから5年後10年後も同じ状況で使えるかというと、そうではない。逆に言うと、がっちり組んでしまったがゆえに、2年後3年後には使えなくなる状況が結構あります」

また、あるマンションでは、一部のヘビーユーザーが会社とつなぎっぱなしにして回線を独占する、という不測の事態も発生した。

そんな過去の事例を鑑みて「TOKYO TIMES TOWER」では、カスタマイズに重点を置いてネット環境を構築したという。
「1戸に1本の光ファイバーを引いて最大100Mbpsのインターネット環境を提供する。これが標準のサービスですが、それでは満足できない方、個別でセキュリティを組みたい人は、既設の光ケーブルを使って、ご自身で別のプロバイダーと契約することが可能です。さらに、既設の光ケーブルでは足りない、例えば1テラ必要という方は、共用のパイプスペースを通してご自分でケーブルを引いていただくこともできます」

ここまで拡張性を高めたのには理由がある。
「秋葉原という土地柄、SOHOでeビジネスをなさる方も多い。ソフトを貸したり、売ったりする商売はトラフィック量が非常に多い。ときには標準でかけている強固なセキュリティが邪魔になる場合もあります。私達としては、eビジネスは歓迎なんです。というのも、そういうビジネスは、実体としての人間が出入りしないので、他の住人に迷惑をかけない。オフィスと住宅が混在することの弊害が発生しにくいからです」

 
 
   

 
  都心型マンションにおけるセキュリティ
 

警察庁が発表した犯罪資料統計によると、平成14年度の侵入盗の件数は全国で33万8294件。前年比11.4%増となっているのに対し、検挙率は29.1%でしかない。もはや日本の安全神話は崩壊した、と言っても過言ではないだろう。

自分の身は自分で守るしかない状況のなか、人口の密集する都心マンションでは、セキュリティへの取り組みを高度化している。「TOKYO TIMES TOWER」で採用されているのが、「ダブルオートロック&ノンタッチキー」システム。
ノンタッチキーとは、IDチップが埋め込まれたディンプルキーで、センサーにキーをかざすだけで解錠できる。複製が極めて困難である上、非接触型なので鍵穴がつぶれにくい、荷物で手がふさがっている時に便利などのメリットがある。

従来のオートロックの場合、エントランス部分のロックを解除すればどの住戸へも行けるが、ダブルオートロックでは、エントランスに加え、エレベーター内で再度キーをかざさないとボタンが押せない仕組みになっている。
さらに、夜間は自宅のあるフロアにしかエレベーターが止まらないので、知らない人と乗り合わせることもない。

ダブルオートロックによる入館システム
   
 

  携帯電話による来訪者入館システム
 

「ダブルオートロック」は確かに安全だが、来訪者はどうするのか?
この問題を解決するのが、マンションで初めて導入された「携帯電話による来訪者入館システム」だ。
マンション居住者のA氏の住まいに、B氏が訪ねる例で、その仕組みを説明しよう。

1)B氏はあらかじめ、何月何日何時に訪問することをA氏に伝える。
2)A氏は専用ホームページにログインし、来訪者の氏名、訪問日時、メールアドレスを入力。
3)B氏の携帯電話に案内メールが送信される。
4)B氏は送られてきたURLにアクセスし、2次元バーコードを入手する。
5)訪問当日、B氏はエントランスの解錠パネルに2次元バーコードを表示した携帯電話をかざし、入館。
6)さらに、エレベーター内のセンサーに携帯電話をかざし、A氏の自宅のある階に降りる
  (指定された階にしかエレベーターは止まらない)。


携帯電話による来訪者入館システム
 


「このシステムは東京通信機がオフィスや研究所用に開発したものをマンション向けにカスタマイズしたものです。2次元バーコードは一度きりのみ使用可能なので、今日のバーコードは翌日には使えません。その上、時間も指定されている」ので、ほぼ完璧なセキュリティを確保できる。

拡張性のあるインターネット接続環境、319戸を1フロア10戸レベルで管理するセキュリティシステム――、マンションは、集合住宅でありながら、より戸建に近い感覚へ、個人のニーズを細やかに汲み取った住まいへと向かっているようだ。

取材協力・図版提供 : 鹿島建設株式会社 http://www.kajima.co.jp
 
   

 
  追加調査
 

劇的な変貌を遂げる“アキバ”
「JR秋葉原駅前再開発」とは?

東京・千代田区のJR秋葉原駅前に、建設の槌音が響いている。ここは、旧東京青果市場とJR貨物ヤードの跡地を中心とした地域。東京都は、2000(平成12)年に発表した「東京構想2000」の中で、秋葉原地区を「IT関連産業の世界的な拠点」として、また翌年には都心・副都心に次ぐ新拠点と位置付けている。
再開発の核となるのが2棟の「秋葉原ITセンター(仮称)」で、1街区には産学連携機能を集約した31階建ての秋葉原ダイビルが、3街区にはIT&集客機能スペースとして一般に開放される22階建てのUDXビルが建設される。
また、2005年秋には、茨城・つくば市と東京・秋葉原を45分で結ぶ常磐新線「つくばエクスプレス」が開業予定。2006年度中には、新しいアキバがその姿を我々に見せてくれるだろう。

 
特命調査第002号 調査報告:池上捜査員
撮影/海野惶世 イラスト/小湊好治 Top of the page

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