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IT大捜査線 特命捜査第007号:暮らしはどう変わる?ネットワーク家電の現在と未来 特命捜査第007号:暮らしはどう変わる?ネットワーク家電の現在と未来
  次々に発売されるネットワーク家電
 

今年4月、東芝が冷蔵庫、洗濯乾燥機、オーブンレンジと、これらをコントロールするITホーム端末とで構成する「フェミニティ」シリーズを発売。9月には、松下電器が宅内情報コントロール端末や携帯電話を使って家電を操作したり、家宅侵入などの異常を監視・通報する「くらしネット」システムを近畿圏限定で販売開始した。また、日立ホーム&ライフソリューションも2003年度中に、パソコンで情報の入出力や設定を行い、リモコンで操作できるネット家電を発売すると発表している。

これらは白物家電と呼ばれる製品だが、家庭内にあるAV機器にもネットワーク対応を謳う製品が登場。その先頭を行くのがハードディスク搭載DVDレコーダーで、従来のビデオテープレコーダーに代わる商品として、家電製品の中でも急成長が期待されている。また年末には、ゲーム機「プレーステーション2」のエンジンを搭載したハードディスク付きDVDレコーダー「PSX」の発売が予定されており、その価格の安さから年末商戦の目玉として話題を集めている。

次々に飛び込んでくるネットワーク家電のニュース。が、家電製品がネットワークにつながることで、実際にどのようなメリットがあるのか。その前に、そもそもネットワーク家電とは何なのか?
今一つ確かなイメージをつかめないまま訪れたのが、東京・有明にある松下電器の「パナソニックセンター」だ。去る11月6日、2階にある「くらし・環境ショウケース」がリニューアル・オープンし、2005年以降に実現されるであろう暮らしの未来像が展示されていると言う。

パナソニックセンター

東京・有明にある松下電器のショールーム「パナソニックセンター」。壁面の「アストロウォール」に映像が映し出され、外観からして近未来的なイメージ。

くらし・環境ショウケース

今回訪ねた「くらし・環境ショウケース」では、生活の質や価値を高めながらも環境負荷を軽減していく新しい豊かさを提案。

 
 
   

 
  「くらしステーション」が省エネとセキュリティの要
 

松下電器が描く2005年以降の暮らしを見てみよう。
まず、次代の暮らしを支えるエネルギーとして、電気では「燃料電池コージェネレーションシステム」と「太陽光発電」が、給湯では「自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機」が導入されている。
家庭内にはブロードバンドに接続された「くらしステーション」と呼ばれる端末があり、「くらしステーション」と各機器は特定小電力無線でつながっている。特定小電力無線とは、トランシーバーなどで使われている無線のことだ。

くらしステーションには「エネルギーマネージメント」「ネット家電」「見守り安心」という3つの機能がある。例えば、「エネルギーマネージメント」で「運転モニター」を選ぶと、エネルギーの稼働状況がリアルタイムで表示される。この日は、自家発電した2.37kwのうち1.52kwを消費し、余った電力を電力会社に売っている様子が映し出された。

「ネット家電」機能では、エアコンの切/入、お風呂の給湯、照明のON/OFF、電動シャッターや電子錠の開閉などが、家庭内の離れた場所から一括操作できる。人がいない部屋の照明を切ったり、エアコンの温度を設定する時も、いちいちそこまで行かずに済むというわけだ。もちろん、外出先から携帯電話で操作することも可能。

また「見守り安心」機能では、機器の運転や開閉センサーの切/入を設定しておけるので、出かける前や寝る前の確認・操作もワンタッチで簡単。鍵の閉め忘れや照明の消し忘れといったことが防げる。開閉センサーをONにしておくと、外部から不法侵入があった場合、警報を鳴らすとともに、携帯電話などあらかじめ設定した連絡先にメールで通知してくれる。
このように「くらしステーション」を中心としたネットワークでは、主に省エネと暮らしの安心・安全のサポートを目指している。

※「くらし・環境ショウケース」の展示内容は、既に発売されている「くらしネット」とはシステム・仕様が異なります。

燃料電池

家庭用に開発された「燃料電池コージェネレーションシステム」。写真中央のボックスが水素ガスと空気を反応させて電気を作り出す装置。右側の背の高いボックスが排熱を回収して作った温水を溜めておく貯湯槽。

室内模型

エアコンや電動シャッター、照明などの展示物は、作動した状況を見ることができる。写真右下にあるディスプレイが「くらしステーション」で、実際には壁に埋め込まれる。

ネット家電画面

エアコン、ふろ給湯、照明、電動シャッター、電子錠を集中コントロールする「ネット家電」機能。外出先からも携帯電話で同じ操作が可能。

携帯画面01
見守り画面 携帯画面02

「見守り安心」機能の「おでかけチェック」画面。あらかじめ設定しておけるので、慌ただしい外出前もラク!

外出先から宅内外に設置されたネットワークカメラの画像を見ることができる。また、外部侵入があった場合には、現場を撮影した画像付きのメールが送られてくる。

 
 
   

 
  ネットワーク家電としてのAV機器
 

前段では、白物家電や電灯など「設備系」ネットワークの未来像をご紹介したが、家庭内にはもう一つ、「AV系」のネットワークがある。現行の松下電器の製品・サービスで言うと、「DIGA(ディーガ)」と「Tナビ」がこれに当たる。

「DIGA」は今流行りのハードディスク付きDVDレコーダー。ブロードバンドルータにつなげば、外出先から携帯電話で番組チェックをし、録りたいテレビ番組を“リアルタイムで”予約できる。ネットワーク家電としてのAV機器は各社とも、この宅外からの録画予約が主流。ちなみに、「DIGA」での番組予約は、携帯電話のコンテンツプロバイダー・株式会社アイラテが提供する録画予約サービス「TV nano/番組サーチ」を利用する。

DIGA

携帯電話から番組予約ができるハードディスク内蔵DVDビデオレコーダー「DIGA(ディーガ)」。これはブロードバンドレシーバー内蔵の「DMR-E200H-S」。

Tナビ

「Tナビ」のトップページ。テレビを見ていて気になる情報があれば、「Tナビ」ボタンで画面を切り替え、即、調べることができる(写真上)。
「Tナビ」のメニュー画面。10月末現在、41の専用コンテンツが用意されている(写真下)。

Tナビ-リモコン

コンテンツのブラウズはテレビのリモコンで行う。一般のホームページも見られるが、表示が崩れたり、欠けたりすることがある。

一方「Tナビ」は、インターネットを利用したデジタルテレビ向けの生活情報ネットワーク・サービス。簡単なリモコン操作で、便利で役立つ生活情報が入手できる。例えば、テレビのグルメ番組を見ていて気になるお店があったら、「Tナビ」に切り替えて検索。対談番組に出演している人の本が読みたくなったら、「Tナビ」のオンラインショッピングですかさず注文。「Tナビ」ボタンを押すだけで、番組画面とコンテンツ画面がぱっと切り替わる。

「Tナビ」は、デジタルテレビ「VIERA(ビエラ)」か「デジタルT(タウ)」を購入し、ブロードバンド回線につなげばOK。「コレって、ちょっと前にあったインターネットテレビ? 」と思う人がいるかもしれないが、インターネットテレビとは基本的なコンセプトが違う。どちらかと言えば、iモードのテレビ版と言った方がいいだろう。携帯電話で快適に閲覧できるコンテンツ「iモード」があるように、テレビで簡単にブラウズ・操作できる専用のコンテンツ「Tナビ」が用意されているのだ。

   
 

  「KEBAB」で 家電的な使い勝手を実現
 
横山さん

「KEBAB(ケバブ)」についてお話を伺った松下電器産業株式会社  ネット事業本部の横山 謙さん。

AV機器や「くらしステーション」のような家電制御端末は、ブロードバンドルータを介して、インターネットにつながっている。これによって、携帯電話などのモバイル端末から、宅内にある機器の制御が可能になるわけだが、厄介なのがルータの設定だ。

「ルータを使うとなると、ポートの割り当てをしなければなりません。通常、この設定はパソコン上で行いますが、これが難しい。少なくとも、コードをコンセントに差し込めばすぐに使える家電のレベルではありません。また、宅外から宅内機器を制御するには、ルータに割り当てられるグローバルIPアドレスを特定する必要があります。これらルータにかかわる難しい設定をせずに、家電機器をインターネットに簡単・安全に接続できるようにしたのが、『KEBAB(ケバブ)』という技術です」と語る松下電器産業株式会社  ネット事業本部の横山 謙さん。

「KEBAB」は、ちょうど料理のシシカバブのように、宅外と宅内機器とをルータの持つNAT(※)を越えて“串刺し”にして通信することを可能にする。このシステムは、「KEBAB」クライアントと「KEBAB」サーバ、アプリケーションサーバから構成されており、「DIGA」や「くらしステーション」の中には既に「KEBAB」クライアント機能が搭載されている。
さらに「『KEBAB』は、いったんクライアントとサーバとの接続が確立すると、それを維持するので、宅外から“リアルタイム”で機器を操作することができます」。これで放送直前に録画予約しても、番組を頭からきちんと録画できるというわけだ。

●リアルタイム宅外制御技術「KEBAB」
KEBABの図

「KEBAB」が、家庭の内と外を「簡単」「リアルタイム」「安全」につなぐ。


ネットワーク家電と聞くと、テレビも冷蔵庫も、家庭にある電化製品が何から何まで一つのネットワークにまとまるようなイメージがあるが、実はそうではない。白物家電や電灯などの「設備系」と「AV系」という2つのネットワークがあり、前者は省エネやセキュリティ、後者ではエンターテイメント性といったように、用途や求められる機能が異なる。もちろん、将来的には連携も考えられている。例えば「『Tナビ』対応デジタルテレビで『くらしステーション』の画面が見られたり、DVDレコーダーがホームサーバ的な役割をして、おじいちゃん・おばあちゃんの家のテレビから孫の家のDVDレコーダーにアクセスして、保存されている映像を取り出せたり、といったことですね」と横山さん。

始まったばかりのネットワーク家電だが、究極の目標は、ネットワークをことさら意識することなく、その利便性を誰もが簡単に、つまり“家電的に”楽しめるようにすることのようだ。

※NAT(Network Address Translation):プライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに付け替える技術で、ルータの機能。

取材協力:松下電器産業株式会社  http://www.matsushita.co.jp

 
   

 
  追加調査
 

●白物家電系の統一規格「エコーネット」
洗濯機は東芝がいいけど、冷蔵庫は松下のを使いたい。となると、家電を制御するコントローラも2台必要で、別々に操作するのか? ネットワーク家電が従来の家電製品と同じ感覚で買えるようになれば、当然、こんなことも起こってくる。
将来、異なるメーカーの製品でもスムーズにつなげられるよう、電機メーカーや電力・ガス会社100社以上が参加して作ったのが、規格策定団体「エコーネットコンソーシアム」だ。昨年11月には、白物家電や電灯など設備系の統一規格「エコーネット 規格 Ver.3.00」を発表。東芝の製品も松下電器の製品もこの規格に準拠しているため、双方の無線をブリッジする機器「エコーネットルータ」を使えば、一つのコントローラで操作できるようになると言う。
3〜4年後、あなたが家電製品の買い替えを検討する時、ネットワーク家電が有力候補として上がっているかもしれない。

 
特命捜査第007号 調査報告:伊藤捜査員 特命捜査第007号 調査報告:伊藤調査員
写真/海野惶世 イラスト/小湊好治 Top of the page

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