では、実際に「e−むらづくりモデル地区」ではどのような形でIT化が進んでいるのだろうか。
下のイラストを参照しながら説明しよう。まず、中心になるのは真ん中にある地域情報センターの設置。ここは情報基盤の整備にあたる部分で、具体的には、既に敷設されているCATV網をベースに、農漁協や直売所、学校、役場、集落などをネットワークで結ぶ。
イラストの周縁に描かれた施策は、国の支援を活用する等を通じて、整備された情報基盤を有効に活用する内容の整備となる。
例えば、「ITを利用した効率的販売」という部分を見てみよう。地域情報センター、直売所や朝市、直売グループに生産物(商品)を納入している農漁家、住民宅は、すべてCATV網で接続されており、直売所にある商品はすべてデータベース化される。このシステムにより、住民は自宅のパソコンで検索すれば、いま直売所で何がいくらで売られているかを知ることができる。また、直売所では仮に商品が品薄になったとしても、その情報はすぐに地域情報センターを通じて農漁家に送られるから、タイムリーな補充が可能となる。
これは、e−むらづくり計画の基本方針1.にあたるITの活用例。生産者・販売者・消費者すべてにメリットがある施策だ。
また、ITは農山漁村の生活環境の向上にも役立っている。元来、農山漁村地域は高齢化が進行しているだけでなく、町村役場・集落・仕事場・医療機関など各施設が遠く離れているのが特徴。高齢者にとっては病院へ行くのも大きな負担となる。イラストの「在宅健康相談による担い手確保」という部分を見てほしい。農漁家の自宅と医療・保険機関はCATVの高速回線でつながっているので、カメラを使った遠隔医療や在宅健康相談が可能になる。また、携帯電話が使えない地域も多い農山漁村で万一自宅にいる高齢者が倒れたとしても、無線による緊急通報で、その情報を田畑に出ている家族に伝えることができる。
ITの活用は移動に伴うコストを低減し、同時に高齢者の安全を高めることにも役立っているのだ。これはe−むらづくり計画の基本方針2.を形にしたものといえる。
「都市と農山漁村の共生・対流ポータルサイト」は、e−むらづくり計画の目標のひとつを具体化したものだ。都市から農山漁村には多くの情報が流入しているが、農山漁村から都市への情報発信はまだまだ少ないのが実情。これではなかなか都市と農山漁村の交流を図ることができない。
そのため、2003(平成15)年3月に全国レベルで「都市と農山漁村の共生・対流ポータルサイト」が立ち上がった。既にさまざまな農山漁村情報の発信が行われており、今後は農山漁村地域の特産物・自然・文化・伝統等、都市の人々が求める魅力的な情報をより積極的に発信していくことになるという。例えば、田畑で収穫する生産者の生の声を動画で公開する、といったことも可能になるだろう。
他にも、遠隔制御や監視システム等を用いて農林漁業にかかる労力を軽減する、養殖場など離れた場所から情報を入手し、漁業活動の効率化を図る、情報発信できる農林漁業者育成を支援するため、情報化を指導する人材の育成や子供たちへのIT教育を行うなど、e−むらづくりモデル地区ではさまざまな形でITの導入が行われつつある。
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