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電気街へ行くと大きなダンボール箱の中に無造作に山積みにされ、投げ売りされている使用済みプリント基板だが、あれらは基板についたままの電子部品を取るためのもので、部品を外された基板自体には何の価値も無い…と思われている。しかし、見方を変えてみるとその中に実に美しいパターンを発見することができる。
プリント基板で作ったノート、バインダ、クリップボード、名刺入れなどのステーショナリ類を、最近アメリカのミュージアムショップやトレンディな雑貨屋などでよく見かけるようになった。様々な色の樹脂版表面に描かれた微細な幾何学模様は、織物の柄のようにも、はたまた壮大な都市計画図面のようにも見える。
もし、新たにこのような模様を作ろうと考えたら大変である。まず原画を書いて、版下原稿を作成し、フィルム原稿を起こし、製版し、印刷も並大抵の手間ではない。その全ての工程を考えたら誰もやる気にならないだろう。ところが、電子工業の産業では、中国だろうとマレーシアだろうと世界中どこの工場でも毎日何百万枚と生産され続け、それと同じくらいの量が捨てられているのだからこれを利用しない手はないのである。選り取り見取りでただ(・・)同然、しかも丈夫とくればいうことない。
プリントボードのステーショナリは、単に新しくて個性的な雑貨という以上に、「気が利いたリユースやリサイクルは楽しくてかっこいい」というある種のメッセージを伝えてくれる道具でもある。実際には、情報機器などの部品として使われた後、不要になって捨てられた基板をきれいにして使ったのでは手間がかかりすぎるので、工場の検査ではねられた電気的な不良品や、作りすぎて余ってしまったボードなど、製造ラインの廃棄部品を再利用するケースが多い。しかし、それでも立派なリサイクルである。もし、強化プラスチックの板に導電性のインクでプリントされたこの複合素材の産業廃棄物を素材に戻して再生しようとしたら、複雑な工程を必要として結局は採算が取れないだろう。
省みられない価値を見出し、魅力的な商品にするのはデザインの力である。電子的な情報媒体としての役割を終えたプリント基板が、一転して手書きコミュニケーションの道具として余生を送るというのもおしゃれな話ではないか。

益田文和



益田文和(ますだ・ふみかず)
1949年東京生まれ。1973年東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年 INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1994年国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年Tennen Design '95 Kyotoを主催
1991年(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している


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