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【第7回】〜最終回〜
IT先進国へとさらに邁進する韓国
■進む生活のオンライン化
韓国では2002年9月末現在、超高速インターネット加入世帯が1,000万世帯を突破し、世帯普及率は7割に達しています。電話が一家に一台あるのが当たり前のように、超高速インターネットも家庭に接続されているのが当たり前の世界になっています。あらゆる分野においてインターネットの基盤整備が進められるとともに、社会生活の様々な局面においてインターネットを利用した各種財やサービスの取引を行う利用者も急速に増え、インターネットが既にライフラインとして生活の一部となりつつあります。このような生活のオンライン化が進む状況について主な統計データを以下に示します。
インターネット利用人口 | 2,565万人 ・総人口約4,700万 | 2002年6月末 | インターネット利用時間 | 12.2時間/週 ・コンピュータ使用は14時間/週・コンピュータ保有世帯比率60.1% | 2002年7月28日 (韓国統計庁調査) | 超高速インターネット加入世帯 | 1,004万世帯 ・総世帯数1,450万 | 2002年9月末 | 携帯の無線インターネット利用者数 | 828万人 ・携帯電話利用者の32.3% | 2002年9月末 | インターネットバンキング利用者数* | 1,448万人 ・月間利用件数1億3,000万件 ・全金融取引の2割以上を占め、取引額は165兆5,000億ウォン | 2002年6月末 | オンライン証券取引利用者数 | 115万人 ・一般投資家134万人の86.2% ・証券取引総額3,132兆9,000億ウォンの50.8%がネット取引 | 2001年末 | 公認電子署名の加入者数** | 345万加入 ・個人加入者比率は約70% ・公認電子署名発給件数276万件 | 2002年6月末 | インターネットショッピングモール数 | 2,372サイト ・うちオンライン専門サイト804 ・2002年5月の月商5,000億ウォン以上 ・小売市場規模は年間120兆ウォン、うちネット販売が約5% | 2002年6月末 | オンラインゲーム市場規模 | 374億5,000万円 ・全ゲーム市場規模(インターネットカフェ含む)は4,111億3,000万円 | 2002年予測 (韓国先端ゲーム産業協会調査) |
(注)
統計データについて出所のないものは全て韓国インターネット情報センターの数字を引用。
* 2002年7月より銀行の週休二日制が始まり、インターネットバンキングの利用者が増える。** 2002年4月より電子政府サイトが開始され、各種行政サービスで個人認証のために公認電子署名が利用される。
■韓国政府はeビジネスの発展を最優先
2002年6月20日、韓国政府は「eビジネス発展国家戦略会議」を開催し、電子商取引の比率を2005年までに現在よりも30%引き上げるという国家戦略を掲げました。韓国の経済成長の原動力として、世界最高レベルにある韓国の情報通信インフラ基盤を活用したeビジネスの発展を、政府の最優先課題と位置づけました。特に、中小企業のIT化支援、インターネット基盤を活用した輸出産業支援、電子取引における国家間協力の推進、電子取引発展のための電子署名等の関連法制度の整備が重点政策目標として挙げられました。中小企業を支援することで国家全体の国際競争力を高めるという輸出依存型国家としての姿がよく表れているといえます。
■法的効力のある電子署名の利用が急速に拡大
政府によるeビジネス推進とあいまって、公共セクター・民間セクター双方において、インターネットを使った各種財やサービスのやり取りが活発化しています。ネット上でのこうしたやり取りの際には、個人認証を行う手段としてPKI(公開鍵基盤)を使った電子署名が求められ、現在この電子署名が個人レベルに急速に普及しつつあります。
韓国では2002年4月より改正電子署名法(2001年12月成立)が施行され、公認認証局が発給した電子署名(以下、公認電子署名)に対して法的効力が認められ、公認電子署名の加入者(及びその使用者)が当該署名の使用に際して何らかの損害を受けた場合には公認認証局が損害賠償責任を負うことが義務付けられました。この改正電子署名法の施行によって、例えばインターネットバンキングなど、それまで私設認証局が発給していた電子署名を、公認認証局が発給する電子署名へと切り替える企業や機関が増え、これが一般利用者による電子署名の利用促進を後押ししています。
加えて、改正電子署名法が施行された2002年4月には、電子政府サイト(http://www.egov.go.kr)が正式に稼動を始め、各種行政サービスがオンラインで利用できるようになりました。例えば住民票コピーの申請などの行政サービスを受けるには、公認電子署名がなければ利用できないため、2002年5月、電子署名の利用者が大幅に増えて321万人となりました。その後も利用者は堅調に増え続け、2002年10月末現在、463万人が公認電子署名を利用しています(韓国情報保護振興院調査)。
なお、今後、携帯電話など無線網を利用した無線電子認証が実用化されれば、公認電子署名の利用者数は爆発的に増えるものと予想されています。政府も、「モバイル政府」なる構想(2002年11月)を掲げ、2003年に約750億ウォンを投じて、携帯電話や個人情報端末(PDA)などを利用した納税などの各種行政サービスの提供計画を発表しています。
■先見性をもった政府政策、即実行型のビジネス感覚、そして対処療法的な問題解決
韓国におけるブロードバンドの爆発的な普及は様々な要因が複雑に絡み合って実現されたのですが、やはり政府主導による先見性のある各種政策が確実に実施されている点が日本と大きく異なるといえそうです。1995年より超高速通信網の基盤整備進め、ブロードバンドが一般家庭に普及した2001年にはIT文化立国を標榜し、インフラ整備からコンテンツ産業の振興に重点を置いた政策に移行しました。そして現在は、ブロードバンドインフラを活用したコンテンツ流通と電子取引の拡大に向けた政策に注力しています。
もちろん、ブロードバンドの普及を後押ししているのは、ビジネスの現場において著作権に対する権利意識の希薄さが蔓延しているためとの指摘もあります。インターネット放送を例に挙げれば、著作権処理が曖昧な状態で、地上波テレビ番組がインターネットで無料提供されることとなりました。それを可能としたのは、無料放送の段階から著作権者に対して相当の権利料を支払うというのではなく、有料放送に切り替えて収益が上がった段階で著作権者に対する権利料の分配システムを検討するのが妥当であるという見方が強かったためです。しかし、このような著作権に対する対処療法的な問題解決のスタイルは、日本のビジネス慣行には馴染まないかもしれません。
いずれにしても、先見性をもった政府主導の政策、即実行型のビジネス感覚、そして対処療法的な問題解決が、動きの早いITの世界を勝ち抜いていくためには必要であるといえそうです。この韓国の結果を恐れず邁進する実行力ないし行動力と、予め想定される問題に対する対処法を整備してから前に進む日本の慎重さや正確さが融合すれば、日韓による新たな国際市場展開も期待できるかもしれません。
(2002.12.11)
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