ITワイド講座




イラスト:小湊好治


男子高校生諸君! 元気か?

のっけから書くのもなんだが、以前このコラムで紹介した、出会い系サイトで知り合った会ったこともない男のコと付き合うために同級生の彼氏と別れてしまった女子高生(覚えている方がいて下さると嬉しいのだけど…)。 その彼女は、結局会ったこともない新しい彼氏と、会うこともないまま「別れて」しまったのだそうだ。理由は「会えないから」。彼の名前を組み込んだ彼女のメールアドレスは、別のものに変わってしまった。それ見たことか、という声も聞こえてきそうだし、私自身もそう思う。

さて。世の中、いまだにどっちを向いても女子高生がもてはやされている。過剰と言ってもいいほどの珍重ぶりだ。テレビや雑誌でその手の話題を目にするたび、気になっていることがあった。−−男子高校生は何をしているのか?!

あふれるメディアの中で、男子高校生の動向を目にすることはほとんどないように思う。ニュースなどで流行モノの感想を聞くのは、だいたい女子高生だ。どこかの企業と一緒に商品開発を行なうのも女子高生。確かにニキビいっぱいの男子高校生諸君の話なんて興味がない、という方が多いのもわからないではない。
だけどいくらなんでも、不遇にすぎやしないか、男子高校生。−−というわけで、皆さんの関心をよそに、男子高校生に携帯事情を聞いてみた。

今回、話を聞いたのは公立高校に通う現在高2のA君と、私立高校に通う高3のB君。
 A君はそろそろ受験の準備のはずだが、本人はもちろん、通っている公立校もかなり呑気な学校らしく、こちらがハラハラするほど焦りはない。
 彼の趣味はバンドで、ドラムを担当している。といっても見るからにバンドマンな感じではなく、わりと地味なタイプだ。
 一方のB君は受験生だが、いち早く推薦入試で進学する大学を決め、3年生になるまで30分以上机の前に座ったことがなかったという勉強不足を要領でカバー。スラッとした外見と、ちょっと悪そうな雰囲気がいかにもモテそうなイマドキの高校生だ。

この二人の携帯電話の使い方というのが対照的だ。A君に「携帯電話ってどんなことに使ってる?」と尋ねてみると…「おかんから帰りにスーパーで野菜買ってこいっていう電話ぐらいかな。」「メールは?」「友達とメール2〜3通するのがほとんどかなぁ…」「どんな内容のメールをやりとりしているの?」「テストの範囲聞いたり、宿題聞いたりとかかなぁ…」「彼女とメールしたりしないの?」「(頬を赤らめながら)彼女とかいないっすから…。」

いいでしょう? 心あたたまる彼の返答。いまどきこんな純朴な高校生がいるのか、とつい嬉しくなって私は彼にケーキをおごったが、とても美味しそうにぱくぱく食べてくれた。

さてB君。同じく携帯の用途を聞くと、「一日に100〜200通は届くし、出してるよ」とさらり。相手はというと、彼女、出会い系サイトで知り合った年上の女性から中学生まで合計5人の女の子と、友人達。年上の女性とは既に2回デートもしているらしい。

なんとメール相手には、学校の英語の先生(女性)も含まれていて、「今日の授業、遅刻するよ〜」なんていうメールまで送っている。しかも先生からはちゃんと返事が届くというから驚きだ。学校では携帯の使用は禁止されているが、昼休み前の授業がちょっと延長した時には、別のクラスの友達に「食堂の席、取っといて」とこっそりメールを打つし、一緒に帰る約束をしていた友達が見つからないと「今どこ?」、掃除をサボっている同級生には「今、先生がそっちに向かってるぞ!」、と事ある毎に携帯が登場する。

何人もの女の子をかけもちしている彼に、浮気がバレたりはしないのか聞いてみた。もちろん彼は対策済みだ。いま男性誌には、特定のアドレスからのメールは暗証番号を入力しないと見られないワザや、特定の電話番号を電話帳に表示させないようにするワザなどが書かれているから、そういう情報を参考にバッチリ対策しているのだそう。

そんな彼も、何度か失敗はしている。出会い系サイトにアクセスしすぎたのと、メールのやりすぎで、請求金額が50,000円を超えてしまったらしい。当然両親に怒られて、3ヶ月間おこづかいを減らされてしまった。でももちろん請求書には、誰にメールを送ったのか、どんなサイトにアクセスしたのかまでは記されていない。だから出会い系サイトにはまっていたことは、ご両親は知らない。

友達や女の子からのメールや、カメラで撮った画像や送られてた友人の画像が詰まった携帯は、彼にとって必需品以上の存在。受験勉強を終えて大学入学を待つばかりの彼は、朝の目覚ましから寝る前のパズル・ゲームまで、携帯を手放すことがない。
 家族全員そろって夕食を食べるときだって、当然かたわらには携帯。もちろん食事中だって、メールが来たら返信する。家族も、もうすっかりあきらめて怒ることもしないらしい。

B君曰く、携帯のいい所は相手の時間を邪魔しないことだという。携帯依存症を疑いたくなる彼の言葉としては意外かもしれない。でもB君、なかなかマナーにはうるさい。電車の中では絶対にマナーモードにして音が鳴らないようにするし、彼女と会っている時はほかの電話には出ない(出るとマズいという理由もあるようだが)。
「電車の中で携帯をピーピーならしてるのは、俺達、高校生じゃなくてオヤジやオバサンの方だよ」ときっぱり言う。彼の友人達の間でもその辺のルールは守られているというから、彼らなりの美意識はあるようだ。

「相手の時間を邪魔しない」というのも彼なりの思いやりで、いきなり電話をするのは仲のいい友達だけだ。ちょっと距離のある友人には、電話をする前に「今から電話してもいい?」とまずメールを送るという。そんな彼も、メールの返事がないと「やっぱり不安になる」。
 何か気を悪くするようなことを書いたのか、と気になって眠れないこともある。
「メールって字数が限られてるし、誤解が生まれることも多いんだよね」と語る彼から私の所に届くメールも、いつもとても紳士的で丁寧なのだ。話をすると強気な発言が多いイマドキな彼のメールを読むと、メールというものは、意外に「その人の弱さ」が垣間見えるものかもしれない、といつになくしんみり考えてしまった。

ちなみに純朴少年A君最大の携帯失敗談は、「携帯を便器に落とした」こと。データの心配より、拾う勇気をふり絞る方が大変だったそう。やはり私にはわかりやすいB君の方が好ましく思える。
(2003.2.18)

堀田ハルナ

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