ITワイド講座




イラスト:小湊好治


古い携帯はオシャレじゃない?!

「携帯電話って、どのぐらいの頻度で買い替えるもん?」
待ち合わせ場所に現れた同僚(男性、30代)が、取るものも取りあえず、といった風にいきなり切り出した。どうやら彼、ある商品のモニターを頼んでいた女子高生に「オジサンの携帯、古いね」と馬鹿にされたらしい。

確かに物持ちのいい彼の携帯は、いまだにモノクロ。携帯電話の新しい機種というものにそれほど興味のない私にも、それが随分昔のものだということはわかるし、何よりも、なんだかとてもキタナイ(ま、これは同僚のだらしなさ故なのだが)。
「確かにあなたの携帯、角っこなんて色が剥げてボロボロだし見るからに古そうだね…」と、とりあえず正直に答えたのだが、ふと手元を見ると自分の携帯だって、あまりキレイではない。
でも何の不便もないし、まだ使えるし、壊れたわけじゃなし…などと思っていた。

すると翌日、お気に入りの若い友人、今をときめく女子高生のゆかちゃんに
「結構古い携帯使ってるんですね〜」と言われてしまった。
えーーーー? 古い? この携帯が??!! 買ったのはたしか去年の9月。その時点で最新機種ではなかったものの(2001年下半期の製品。古いですか?(笑))、
私は、携帯なんてちゃんと電話とメールが使えれば、あとは軽ければ軽いほどいい、という考え。これは73gと軽量だし、iモードだし、別に何の不便もないんだけど。
どの携帯も通話とメールの機能にはそう大きな違いはないハズだから、壊れなければ何年だって使うつもりだったし、実際前の携帯も、壊れるまで約3年間使っていたのだ。
でも、若くてチャーミングな彼女に言われて、なんだかちょっとだけ自信がなくなってしまった。携帯って、もっと頻繁に買い替えるものなんだろうか?

ゆかちゃんの携帯は、可愛いピンクのカメラ付だ。
携帯の裏側には、彼氏とツーショットの大きなプリクラがぺったり張ってある。
彼女がこのカメラ付携帯に買い替えたのは、つい先日。
お年玉で買った最新機種なのだそうだ。
別に前の携帯が壊れたわけではない。彼女が携帯を買い替えたのは、周りの友人たちと同じキャリアのものが欲しかったから。このところ、メールが安い、とあるキャリアを使う友人が増えているらしく、乗り替え組と歩調を合わせたいというのが理由なのだそう。キャリアが同じであれば、キャリアごとに異なる絵文字も自由に使えるし、画像を送るにも便利だから、とゆかちゃんは言う。
それに友達が新しい携帯を買うと、なんとなく自分のものが古びて見えるから、つい新しいものが欲しくなるそう。「携帯会社もだいたい半年に一度ぐらい新しいものを出すでしょう? 結局そのサイクルにはまってるんだと思う」と笑いながら話す。
企業側の戦略もちゃんと認識しているのか?!と驚いたら、その辺の事情は、メカに詳しい彼氏の受け売りなんだそう。新機種の情報は、だいたい彼氏や男の子の友人から仕入れるらしい。

「買い替えると電話番号が変わっちゃうのに、困らないの?」という質問には、「疎遠になっている友達にメールを送るきっかけになるから」と、なんともポジティブシンキングなお答えが返ってきた。大人の私は、それが面倒で買い替えはなるべく避けたいと思っているというのに。

今、高校2年生のゆかちゃんが初めて自分の携帯電話を買ってもらったのは、中2の時。周りの友人たちはだいたい高校生になってからというから、結構、早いほうだ。持ち始めた当初は、嬉しくてつい友人に見せびらかしていたそう。そして、今の携帯で5台目。一年弱で買い替えていることになる。

1年に一度とはいえ、携帯電話を買い替えるにはお金が必要。壊れてもいない携帯の買い替えに、ご両親は簡単にお金を出してくれるのだろうか、と人ごとながら心配だ。しかしゆかちゃん曰く、それほど問題はないそう。使えば使うほどたまるポイントを使えば、数千円で新機種を購入できる。彼女の場合、毎日かなりのメールをやり取りしているおかげ(?)で、すぐにポイントが貯まるそうだ。

買い替えるときに彼女やその友人たちが気にしているのは、細かい機能ではないらしい。一番のチェックポイントはデザインだ。通信速度が速かろうと、新機能が備わっていようと、“カワイイ”と思うものでなければ欲しくはならない。逆に言えば、“カワイイ”デザインの新機種が発売されれば、つい買い替えたくなるらしい。そして、常に新しい機種を持っている、というのはちょっとしたステイタスでもある。両親に買ってもらったブランドもののバッグやお財布と同じく、いつもピカピカの携帯を持っていると、「あの子はリッチだよね」ということになるらしい。

価格ももちろん重要ではある。彼女の場合、月1万円までは通話料を両親が負担してくれるが、それ以上はお小遣いから出さなくてはならない。だから、安ければ安いほうが有り難い。
でも、だからこそ、例えば基本料などが他より少し高めのDoCoMoは、ステイタスとしての価値を持っているのだそう。いつもDoCoMoの最新機種を持っていれば、ちょっとした“お金持ち”気分になれるというのだ。

彼女達にとって、携帯電話はブランド品とそう変わらない“オシャレ・アイテム”のようだ。“いつでも連絡が取れる便利な移動電話”なんて考えている私は、どうやら彼女達から遠いところにいるようだ。
(2003.1.28)


堀田ハルナ

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