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1960年代の後半に上映された『ミクロの決死隊』は、なかなか衝撃的な映画だった。小さく小さくなった「ミクロの決死隊」が、人間の体内に入って敵と戦うストーリーだったはずだ。うろ覚えの記憶を確かめるべくレンタルビデオ屋に走ったのだが、「懐かしの名作」コーナーに置かれていない。ネットで調べたら、どうもVTR化されていないようだ。ど、ど、どうしてなんだろうか? 名作ではなかったのか? 妻に話をしたら、「あんなもん、病院にいけば見れるからよ。」と確信に満ちた答えが返ってきた。(妻の答えは常に確信に満ちているのだが…) ミクロの世界は、今やそれほどまでに日常化してしまったのか…。先日胃の調子が悪く胃カメラを飲んだ友人も、横になりながら自分の胃の中を画面で見たと言う。もはや「決死」の覚悟はいらないのかもしれない。

決死の覚悟を持たない超小型の機械やロボットは、マイクロマシンと呼ばれている。このマシンは数ミリのものから、数百ミクロンのものまでいろいろあるようだ。顕微鏡じゃなくっちゃ見えないものまであるというからすごい。しかもこのチョーーー小さい高度機能のマイクロマシンは、実に多種多様な分野で研究・開発されている。ざっと見渡しただけでも、医療機器・家電・情報機器・環境機器・自動車・宇宙危機・計測機器など、かなり広い領域で期待されている技術なのだ。

これからに期待のかかる未来型技術かと思えば、これが意外なことに実に身近なところにも見つけられる。マイクロマシン世界の最初の成功者は、なんと「バブルジェットプリンター」だ。そう、これならウチにもある。綺麗だし安いし、ここ数年で一挙に広まった商品だ。これはすごく小さな気泡の膨張力をポンプの駆動力として利用している。何かを微小なものにすることで広がる可能性は、限りなく大きいというのは、なんだが不思議な感じがするものだ。

医療の世界をのぞいてみよう。薬のカプセルの中にコードレスのカメラとセンサー、記憶装置を入れ込んだ全消化管モニター・マイクロマシンも近い将来には実用化するようだ。これを飲みこむだけで食道・胃・腸などすべての消化器内部を観察・記録できると言うのだ。しかし、このカプセル…どうやって回収するのだろうか? やはり下剤を飲んで体内から出すのか……。いや、これを考えていると先に進まなくなるから、深くは考えないようにしよう。このメディカル・マイクロマシンの検査結果を自宅のパソコンが記録して、さらにネットで医療センターなどに繋げば、自宅検診システムはほぼ完成の領域に近づく。

昨年、東北大電気通信研究所は、ガン組織内を動いて治療する針型マイクロマシンの試作に成功した。
このマシンは磁石でできていて、その磁力を熱に換えて、生体内の組織を局所的に「焼死」させることができるそうだ。試作したマシンは、直径0.8ミリ、長さ12ミリの磁石に、高さ2ミリのねじを取り付けたもの。実験では寒天や牛肉の中を動き回っていたそうだ。体内に入れるにはまだ大きいような気がするので、ちょっと怖い…。しかし、更に技術が進めば、ガン治療が大きく前進することは間違いない。ハサミやカメラ、センサー、レーザーなどを組み込んだカテーテル(管)ができると、管を入れるだけの大々的な手術も可能になる。医療現場にIT技術者があふれる日もそう遠くないだろう。

ビジネス分野でも、マイクロマシンの活躍の場はあふれている。配管が張り巡らされているようなプラントには、自走型配管検査マシンが最適だ。配管がひび割れていたり、欠損していたりすることで起こり得る大事故を未然に防ぐこともできる。この検査データをデータマイニングすれば、配管に亀裂が生じる賞味期限をかなり正確に割り出すことは簡単だろう。

自動車の世界はどうなるだろう。これまでは、熟練のエンジニアが耳でエンジン音を聴き分けてエンジン故障を診断するような匠の世界だったが、これからはもっと簡単なスイッチポンの世界へ変身していくだろう。1年目のエンジニアも、その道30年の親方的エンジニアも横並びになってしまう。自動車のエンジンを分解せずに点検して、更に故障箇所をメカニカルロボットが修理してしまうのだ。この機械が割に安く販売されるようになったら、もう工場に車を持っていく必要もなくなってくる。ふむーーーー、かなり魅力的だが、熟練エンジニアの頑固親父とおしゃべりできないのは、さびしいかもしれない。

米粒に精緻な絵を書く芸術は、その小ささゆえに感動をもたらしたのだが、これからマイクロマシンがどんどん浸透していけば、技術は美術・芸術の域にまで発展するだろう。匠の芸術は、もはや珍重されなくなってしまうのだ。そうなったら一粒の米に七福神を書いてもらい、「お米一粒七人の神様」を量産してもらうこともできるようになる。それをぜひともばあちゃんに見せて、一緒に有り難くいただくことにしよう。

ITコラムニスト  久保 直
 
 
<マイクロマシン>「匠の世界に入りこんでいくミクロの決死隊」に頂いた皆様からのご意見を順次掲載いたします。これからもたくさんのご意見をお待ちしております。皆様と一緒に楽しくIT談義をしていきましょう。
 
IT医療最前線のこれからに期待します (谷岡もち 50代 自営業) 
ミクロの決死隊ファンでした (あいこんりん  HP制作)
ふむふむ・・・ここまで来ているIT社会 (boom 30代 運送業技術職)
病気が怖くなくなるか? (クリボー 20代 金属加工)
IT技術の進歩の早さにビックリ! (TOKI 30代 メーカー勤務)
これまでのコラムはどこ? (テオドール 50代 会社役員)
BB回線にしてスピードに追いつかなきゃ (みやまさ 30代 会社勤務)
次回が楽しみ (あめぞうもどき 20代 福祉関係)

IT医療最前線のこれからに期待します (谷岡もち 50代 自営業) 

医療の最前線のITの話を非常に興味深く読まさせて頂きました。身近な知人にもガンなどの病気にかかっている方がいるものですから、他人事とは思えません。本当に近い将来、ガンはこうしたITによって克服されるのかと思うと、期待する気持ちでいっぱいです。検診システムにしても、無医村などの地域からだけではなく、地方であまり高度な医療を期待できない地域に住んでいる者にとっては、こうしたIT進化は大歓迎です。どんどん進んで欲しいと思う面が多々あります。もちろんいろいろな課題もたくさんあるのでしょうけれど、それはその時に順次解決していけばいいのかなと思います。ITフォーラムを毎回とても楽しみに読んでいます。これからもいろいろな情報を掲載してください。自分たちの生活の中に、いかにITが関わっているのかをもっともっと知っていきたいと思います。

久保 IT医療はすごい勢いで進んでいますね。2001年に行われた「21世紀の福祉・医療とIT」のシンポジウムなどでも、2010年代にはカプセル・メディカル・マイクロマシンは実用化すると言われています。いまでも医療現場では、CTスキャンやMRIなどの検査機器が大活躍して、病気の早期発見などに多大な貢献をしています。医療や介護・福祉の現場でIT技術が大活躍して、多大な貢献してこそ、「真のIT時代」という感じがしますね。ガン治療もどんどん新しい治療方法が開発されています。谷岡もちさんのご友人の方も希望を持ってがんばって頂きたいです。

ミクロの決死隊ファンでした (あいこんりん  HP制作)

ミクロの決死隊・・・すきだったなあ。でもそうですか・・・。面白い世の中になったものです。

久保 私もとても印象的に残っていたのですが…。あの映像を記憶だけではなく、今、再度見てみたいなあ。ストーリーもうろ覚えなんです。

ふむふむ・・・ここまで来ているIT社会 (boom 30代 運送業技術職)

へー。そうなのか、ふーん、なるほど。ほうほう。ふむふむ。 いやー。面白いです。IT技術の話。感心します。 ここまできているのか・・…世の中。

久保 いやーーーー。そうなんですよね。技術の進歩の速度って言うのは、加速度的にスピーディになっています。頭で理解できても、なかなか感覚っていうのはついて行きにくいものですよね。わかっちゃいるけど〜♪って、感じになります。しかし、「お米一粒7人の神様」感覚は失わずに生きていこうと思っております。

病気が怖くなくなるか? (クリボー 20代 金属加工)

いろいろと、何でも、ロボットが出来るようになると、仕事が無くなる。でも、病気になっても、今までは、難病と言われていた、病気も、怖くなくなる。・・・かな?

久保 いやいや、ロボットがなんでも出来るようになっても、ロボットがやることを考えなくてはなりませんし、ロボットに指示を与えなくてはなりませんぞ。ロボットを作るのはロボットでも、ロボットは創造的仕事にはあまり向かないと聞きます。人工知能も研究されていますが、しかしながら人間の知識をデータベースするのだけでも、膨大な情報量を処理しなくてはなりません。認識技術も人間に追いつくのは大変そうです。仕事はまだまだ山積みです。 しかし、病気が解決されて怖くなくなるのは嬉しいです。病院が嫌いじゃなくなるかな〜??

IT技術の進歩の早さにビックリ! (TOKI 30代 メーカー勤務)

これを読んでとてもビックリしました。本当にIT技術ってどんどん進んでいるんですね。こんなに情報時代にも関わらず、意外に知られていないものなのだなと思いました。これを読んで「マイクロマシン」に興味が湧いてをネットで検索かけたんですが、掲載しているものは難しすぎて訳がわからないものが多かった。専門家以外にもわかるように書いてくれるので、このフォーラムは助かります。これからもいろいろな情報を提供しつづけてください。

久保 あまりの技術のスピードに、これまでの情報伝達方法では追いつかなくなっているのかもしれませんね。まして、新しい技術は、その応用範囲の分野やそれがどんなビジネスに展開するのかまではそこそこわかっても、そこから先、一般の生活にどのような影響を及ぼし、人間のありようをどう変えていくかまでは、なかなか予測しづらい面もあります。そんないろいろな側面からも、IT技術を考えていくフォーラムにしていきたいと思っています。これからもどんどん投稿してくださいね。

これまでのコラムはどこ? (テオドール 50代 会社役員)

いつも楽しく拝見しています。ITのことがいろいろな角度からわかり、勉強になります。お話しの感じもとても読みやすく、親しみやすく、ノリのいい感じですね。もっともっと、更新回数を増やして欲しいと思います。無理でしょうか? それと、これまでのITフォーラムをもう少し見やすくしたらどうでしょうか。探しにくいと思います。前のをもう一度読みたいと思ったときに、どこに行けばいいのか探してしまいました。これからも、どんどんこうした話しをいろいろなテーマで聞かせてください。

久保 あ、いや、申し訳ないです。コムジン表紙に「これまでのコラム」というボタンがあります・…。皆様から頂いた投稿も掲載しておりますので、新しいコラムに更新した後でもそちらをぜひ覗いてみて下さい。過去のコラムへのご意見やご感想もどんどん投稿してください。お返事書かせていただきます。(汗)

BB回線にしてスピードに追いつかなきゃ (みやまさ 30代 会社勤務)

すごいですなあ。こんな世界。自分たちが一体どんな世界に生きているのか、知らないものなのだと言うことがわかりました。いま、どんな位置に居るのかを知ることは、こんなに変化が激しいと、たいへんです。いつも情報を素早いスピードで入れなければなりません。結局、ブロードバンド回線にしなくっちゃってことになるのか〜?

久保 ブロードバンド回線は、確かにネットサーフィンするには快適ですなあ。あちらこちらからの情報を入手するのも、本当にスピーディな時代になりました。技術の進歩は、決して研究室で閉じこもっているものではないので、だからこそ面白いのかもしれません。

次回が楽しみ (あめぞうもどき 20代 福祉関係)

いつも楽しい話しで次の回が待ち遠しく感じます。もっとどんどん出してください。

久保 このハンドルネームから察するに、フォーラム・掲示板が大好きなかなりベテランの御方とお見受けしました。1行レスでは寂しいではないですか。もっともっとご意見やご感想を下さい。福祉関係のお仕事ですとIT技術による変革がこれからますます広がる世界ですね。楽しみですよね。
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