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 未来形ITはSFやサスペンス、アクション映画で重要な役割を果たしている。アメリカ映画「エネミーオブザステイト」(邦題「エネミーオブアメリカ」)は、知らぬ間に危険なデータを持たされた黒人弁護士が思わぬ事件に巻き込まれ、執拗な追跡のターゲットにされる。この追跡に登場するシステムがまさにGPS(Global Positioning System=全地球的測位システム)だ。地球上のどこに行こうと隠れようがなく、常に自分の位置が明確にばれてしまう…丸裸にさらされる人間の恐怖を描いて見応えある映画だ。ただ主人公の危機を救う役を演じたジーン・ハックマンが、やたらと万能過ぎてうそ臭かったのがちと残念?…(まあ、絶体絶命のピンチを救ってくれるのは、いつもうそ臭いヒーローだから仕方ないかもしれない)。
 さて、このGPSは決して架空のものではなく、すでに商品化されていて、ご近所のアウトドアショップでも簡単に手に入る。一見、携帯電話みたいで、なんだこんなもんか?って感じ。ものにもよるが、カーナビより安いものも沢山ある。野外スポーツ、特にマリンスポーツ系、登山系など、位置情報を明確にすることで危険を回避できるスポーツには救世主だったようだ。
 まだまだ情報精度をより高くしていく技術革新は続行中ではあるが、やがてはK2を舞台にしたアクション要素たっぷりの「バーティカル・リミット」のような遭難映画も、今後あまり臨場感を持たなくなるだろう。なにしろ、どこにいてもその位置を確認することは容易になるのだから。
 福祉や医療の世界も、GPS活躍の場である。徘徊する老人にこのGPSを持たせれば、家族の不安解消の一助になるし、心臓疾患があるなど、突発的な症状が予測される患者にとっても朗報だ。症状の発生におびえて外出できなかったり、心配からとはいえ行動を拘束する家族の愛情が重荷になったり…そんな不自由から開放され、生き生きとした人間らしい暮らしを取り戻せるに違いない。病気になったら寝ていなさいという、社会的通念を押さえこんでくれる。病気の人もお年寄りも、行きたいところに行って人生を謳歌する機会をつくってくれるのだ。

 これがビジネスの世界になると、営業マンに持たせよう…などということになる。行動情報のすべてが上司にバレバレになるのだ。おちおち昼寝もしていられないし、サウナにしけこむことも不可能だ。それだけは勘弁して欲しいという意見に、賛同者は多いことだろう。
 家庭に目を転じると、一味違ったこれからの活用もありそうだ。子どもの入園、入学準備で世のお母さんたちの手を煩わせる「お名前書き」。上履き、教科書、ノート、体操着はもちろん、鉛筆1本消しゴム1個にも、こんな小さな物にまで書くの?とため息のでる、膨大な作業である。モノをなくさないように、他の人との区別がつくように…というのなら、小さいシール型の「GPS地域限定版」が登場したらどれだけお母さんは楽になるだろう。我が子の持ち物すべてに小さいシールを貼るだけで、落し物をしてもすぐ発見でき手元に戻る。これがあれば、おみくじから「失せもの」という項目はついに姿を消すことになるのだ。
ITコラムニスト  久保 直
 
 
「GPS 居場所を知らせるITが身近になったとき」には、たくさんのご意見が寄せられました。賛否両論、面白談義を、ここにご紹介します。
 
怖さじんわり 「エネミー・オブ・アメリカ」 (yurika 40代母 埼玉県)
GPS持たせて仕返ししたいな あの課長 (あっちゃん 30代OA営業 東京都)
子育てママの味方だね (nonoji 30代母 札幌市)
監視される人生、あなたは、それで大丈夫? (竜平 20代学生 東京都)
そこにある未来を、私は楽しむぞ (miyako 40代 塾教師 神奈川県)
人に優しいツールに するもしないも 人間次第 (ひなママ 30代母 東京都)

怖さじんわり 「エネミー・オブ・アメリカ」 (yurika 40代母 埼玉県)

 「エネミー・オブ・アメリカ」、ビデオで見ました。そうか、あのシステムをGPSというんですね。 知らないうちに、自分の靴底に、ペンに、携帯にと、それこそ身体中に発信機が仕掛けられていて、どこに逃げてもどこに隠れても、敵が追跡してくる。衛星からとらえた映像が瞬時にパパッと拡大されて、主人公の弁護士(ウィル・スミス)を映し出す。かなり怖かったです。 もっと怖かったのは、家族関係、銀行口座の取引き、メールや電話の通話相手に至るまで、あらゆる個人情報が引き出されてしまうこと。そして、自宅には隠しカメラと盗聴機。ジーン・ハックマン扮する男の協力で、ようやく発信機を取り外してほっとしたのもつかの間、公衆電話からのたった1本の電話で居場所を突き止められてしまう。息つく間もない展開で、面白かったのは間違いないんですが、見終わったあと息切れして、ちょっと疲れちゃいました。 それにしても、あのGPSシステムがすでにアウトドアショップなどで売られているとは…。久保さんのコラムを拝見して、じんわり怖さがよみがえりました。 たしかに、登山などであれが利用できれば、どんなにか助かりますよね。ご老人の徘徊も迷子も防げそうだし、ペットの行方もすぐわかる。でも、いったん悪用されると、プライバシーなどなくなってしまう。 映画の終幕、「政府機関が国家のために個人のプライバシーを侵す権利はない」といった意味の言葉が出てきます。誰が今どこで何をしているか、わかってしまう……そんな国にはなりたくないものです。

久保 ホント怖いものですが、技術そのものが悪いのではなく、使い手である人間次第なんですよね。いうなれば、技術って言うのは、『鉄人28号』ですね。「良いも悪いもリモコン次第〜♪」ってね。清く正しく正義の「正太郎君」になりたいものです…。(昔のアニメネタで、知らない若い方スミマセン)

GPS持たせて仕返ししたいな あの課長 (あっちゃん 30代OA営業 東京都)

  身近なGPSで、真っ先に浮かんでくるのは、カーナビです。かなり高い買い物ではありましたが、後悔どころか、頼り切っております。これなしでは、安心してドライブには出かけられないぐらい。頼り切っています。実際に私が活用しているGPSはこれだけではないかと思うんですが…。 私はOA機器メーカーの営業ですが、某ライバルメーカーのサービスマン(SE)の話では、一人ひとりがPHSを持たせられ(ドラエホンと同じようなものなんです!)、集中管理センターで行動が監視されてるそうです(怖っ)。訪問先の滞在時間が長いと電話が入り、時間がかかると判断すると、一番近くのサービスマンに応援依頼の連絡が入る…という具合。こういったことがGPSで安くできるようになった暁には、我が社の連中にも持たせるよう、本社トップに無名で投稿したいところです。 GPSがマイクロチップ並になり、私が代表取締役社長に就任した暁には(?)、うちのサービスマン全員とx課長の頭に埋め込み、絶対にサボれないようにしてしまうつもりです!

久保 ついに、携帯電話とGPS合体が出ましたねえ。CMでも、宇宙から上司に引き戻されるシーンが涙を誘います。(ToT)可哀想過ぎるぜ、セールスマン。課長の頭に埋め込むとは、なかなかハンニバル。

子育てママの味方だね (nonoji 30代母 札幌市)

 1歳の子供を持つ母親としては、小さいシール型の「GPS地域限定版」が、絶対ほしい!と思いました(うーん、値段次第だけど)。忘れ物を発見できるし、子どもの居場所もわかるしね。旦那には、持たせたいけれど、知らなくていいことも分かってしまうかもしれないよね。私自身は、もち、もちたくなーい、ぜったーいに。

久保 そうそう、「迷子センター」も要らなくなりますね。旦那さんは、きっと持つことを強固に拒否するでしょう。しかし、それが夫婦円満の道かもしれません…。

監視される人生、あなたは、それで大丈夫? (竜平 20代学生 東京都)

 「居場所を知らせるIT」が私たちの日常生活に密接に関わってくると、これは大問題であると思います。営業マンはサウナに行けないし、学生は学校をサボれないし…。なぜなら24時間監視されてしまうからです。 福祉や医療の世界で、GPSは活躍するでしょう。ですが、「居場所を知らせるIT」が、子どもの持ち物に小さいシールを貼るだけで、落し物をしてもすぐ発見できるほどにまで、身近になったとき、私たちのプライバ シーなんてものは無くなります。また自分がなくした物を見つける能力まで退化してしまうのではないか、なんて心配になります。 携帯電話を持たない人の意見は、「いつでもどこでも連絡がつくことに我慢できない」というのが多いようです。 あなたは24時間監視される生活をおくれますか? 昨日あなたは3回トイレに行きましたね。お腹を壊していませんか?

久保 私は、昨日からお腹の調子が悪いのだ。見てましたね、竜平さん。先月、一億円以上もする宝石が入ったカバンにGPSをつけていたために、泥棒がスピード逮捕されたニュースが流れました。人間につけずに、カバンにつけるのは良い案です。

そこにある未来を、私は楽しむぞ (miyako 40代 塾教師 神奈川県)

 映画「エネミー・オブ・アメリカ」を見たときの、丸裸でほおりだされたような恐怖を思い出しました。でもその恐怖は、素晴らしい利便性と裏表でもある。久保さんの文を読んで、その使い道の多様さにワクワクしました。 携帯電話が現れたとき一番喜んだのは、世の母親たちではないかと思うんです。私のまわりの古風な考え方のお母さんたちが、すぐに購入して、子供に持たせたのには、ちょっとびっくりしました。 「これで、子どもの居所が、すぐにわかって安心できる」彼女たちは言いました。子どもたちは、恐れも知らずに飛び出していきますが、母たちは、子の居場所を確かめるのに、かように悩んでいたのです。その時は、ふーんと思っただけの私ですが、自分が持ってみて、世界が変わったような感じがしました。 映画を見たあと、本を読んだあと、話のわかる相手とすぐに語りたい。それを可能にしたのが、メール。遠くの、学生時代の友達と、感動したその瞬間に語り合えるのがすごく楽しい。やっぱり、自分が感じたことを誰かに伝えることを望んでいたんです。 「でも、すぐ伝えるだけがいいことなのかな? 感動をゆっくり熟成させることも大事なんじゃないの。今の子どもたちを見てると、いつも携帯をいじって、誰かと交信していて、ぼーっとしてる時がない。ぼーっとしてる時に、子どもって成長するんだよ"と、IT化懐疑派の友人は言います。 確かにそう。でも、時代はこう進んできてる。洗濯機や掃除機ができたときだって、「そんなに急いで家事をして、なんになるの?」という声は多かった。テレビが現れた時も、テレビゲームが現れた時も、そうだったと思う。だけど、前にすすんでる力は、止められないよね。 私は、この進んでいくITの未来をうーんと楽しんじゃおう、と思ってます。新しいものが出たら、まず使ってみよう、と思ってます。面倒くさがりで、子どもの持ち物に一度も名前を書いてやらなかったせいで、今も、成人した娘から文句言われてる私としては、たちどころに「あり場所のわかるシール」なんて、いいなあ!

久保 常に前向きなママさんのご意見。どんどん明るいIT未来を作っていきましょう。今GPSは、アフガニスタンやパキスタンで人道支援をしているスタッフの必需品になっています。危険な場所で自らの危険を顧みずに、働いている人達の勇気を支えているようですよ。

人に優しいツールに するもしないも 人間次第 (ひなママ 30代母 東京都)

世の中のコンピューター化、電子化を、「コミュニケーションの希薄化」につながると考えて好ましく思わない人もいる。人の手が一番、自然が一番……でも、人間には文明というのがあるわけで、そんな単純に善悪や黒白つけて切り捨てることはできないですよね。 私事ですが、電話やFAX、パソコンがあったからこそ、子どもが小さいときにも友達と情報交換できたし、仕事にも利用して社会とつながることができた。ITって、コミュニケーションをつくるものなんだと思う。お金のない人でも、インターネットでメッセージを世界中の人に伝えることができる。 携帯の普及で人間関係は希薄になるどころか濃密になってる。だって、今までだったら連絡が取れないときでも、声やメールでつながりあってるんだから。 でも、ITに限らずどんなものでもそうだけど、使う人の良識と、使う人同士の信頼感が基礎にないと、その道具の一番いい面が出てこないですよね。GPSも老人福祉のシーンとか、遠くの学校に通う子どもの安全とかでは、ものすごく人に優しいツールになりそう。そのベースは、人を思う気持ち。これがすべてのコミュニケーションの原点ですよね。 近頃は子どもの周辺は、誘拐とかいたずらとか、本当に物騒。緊急のときに、居所を知ることができるというのは、とっても安心です。「緊急」を判断するのは使う人間。そういうふうに使いこなすためのテクノロジーは、十分に先行しているはずだから、後は人間が追いついていくことなのかもしれませんね。それが進歩、ということなんでしょう。

久保 使う人の良識、マナー。とても大事なことです。最近の子供はGPSを持っている…という認識が広まって、誘拐犯罪抑制に繋がるといいのになあ。子供としては、「隠れ家ごっこ」ができなくなってしまうけどね。そういう時は、知らないフリをしてあげるくらいの大人の余裕が必要ですね。

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