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米国のブロードバンド事情(4)
〜ブロードバンドの利用状況〜
「ブロードバンド・インターネットを利用するためのネットワーク・インフラの整備はある程度進展したものの、インフラ整備以外の阻害要因により、ブロードバンド・インターネットへの爆発的な需要の創出までに至っていない。」(「21世紀におけるインターネット政策の在り方」、総務省情報通信審議会、平成14年8月)
利用時間数でブロードバンドがダイヤルアップを超過
ブロードバンド需要は爆発的に伸びていないが、着実に増加している。インターネット加入数の測定・分析で有名なNielsen/NetRatingsが発表した調査報告によると、米国では2002年1月におけるブロードバンド・インターネットの総利用時間がオンライン総利用時間数の半分以上を占め、初めてダイヤルアップ時間数より多くなった。2001年1月から2002年1月までの1年間に、ブロードバンド・インターネット利用時間は64%増加し、推計11.9億時間に達した。一方、ナローバンド・インターネット利用時間は逆に3%減少し、11.4億時間であった。なお、全米のインターネット利用時間総数は同期間に22%増の23.3億時間に増えた。
ブロードバンド/ナローバンド・インターネット利用時間数(家庭・職場の合計)
| 2001年1月 | 2002年1月 | 増減率 | ブロードバンド利用時間 | 7.3億時間 | 11.9億時間 | 64% | ナローバンド利用時間 | 11.8億時間 | 11.4億時間 | -3% | 合計 | 19.1億時間 | 23.3億時間 | 22% | 出所:Nielsen//NetRatings, January 2002
高速回線でインターネットへアクセスしているユーザー数も、家庭と職場の両方で急増している。2001年1月にブロードバンド回線でインターネットへアクセスした家庭ユーザーは、対前年比67%増の約2,190万人、総オンライン家庭人口の21%を占めた。また、職場のブロードバンド人口は1年前の1,800万人から2,550万人に増加し(42%増)、オフィス・インターネット人口の63%に達した。一方、ナローバンド・ユーザー数は家庭では6%減の8,200万人に対し、職場では23%減の1,500万人になり、ナローバンドからブロードバンドへの移行が、家庭より職場で急激に進んでいることを示唆している。
家庭・職場別ブロードバンド/ナローバンド・インターネット利用者数
| 2001年1月 | 2002年1月 | 増減率 | 家庭のブロードバンド・ユーザー数 | 1,310 | 2,190 | 67% | 家庭のナローバンド・ユーザー数 | 8,700 | 8,200 | -6% | 職場のブロードバンド・ユーザー数 | 1,800 | 2,550 | 42% | 職場のナローバンド・ユーザー数 | 1,930 | 1,500 | -23% | 出所:Nielsen//NetRatings, January 2002
米国におけるブロードバンド需要は今後も堅調に推移する見込みだ。Solomon-Wolff Associatesでは、米国のインターネット・ユーザー数の約半分が2004年までに現世代ブロードバンド(ケーブル及びxDSL)でアクセスするようになると予測している。
どんなアプリケーション/サービスが利用されているか
ブロードバンドの成長に伴い、双方向オンライン通信が増加し、電子商取引やストリーミング・メディア、インターネット・コンテンツ全体に影響を及ぼすことが予想される。Jupiter Researchが、2002年9月に米国人4,341人を対象に調査したインターネット利用状況は次表のとおりである。
米国の上位オンライン活動(2002年9月)
アプリケーション | 比率 | 電子メール | 93% | 検索エンジン | 79% | 製品・サービスの検索 | 63% | ローカル情報 | 60% | コンテスト/懸賞 | 59% | ニュース | 53% | インスタント・メッセージング | 52% | e挨拶(電子ポストカード) | 52% | オンライン請求書の閲覧 | 48% | オンライン新聞 | 46% | オンライン電話帳 | 46% | 健康・医療情報 | 46% | 旅行調査 | 45% | チャット | 41% | 仕事の調査 | 38% | 無料ソフトウェア・ダウンロード | 38% | オンライン・バンキング | 36% | オンライン料金支払い | 34% | 求人広告 | 33% | 音楽サイトの閲覧 | 32% | オンライン・オーディオ聴取 | 32% | 出所:http://cyberatlas.internet.com/big_picture/geographics/article/0,1323,5911_1466661,00.html
上表のとおり、回答者の93パーセントが電子メールを利用しており、通信系アプリケーションの人気が高い。また、ますます高度な活動(例えば、オンライン・バンキング、請求書の支払い、各種の調査、ソフトウェアのダウンロードなど)に使用される傾向が見られる。
これらのアプリケーションは、次のとおり分類できる。
1) ナローバンドでも可能だが、ブロードバンドでもあまり変わらないアプリケーション:
電子メール、インスタント・メッセージング、e挨拶、コンテスト/懸賞、オンライン・
バンキング等。
2) ナローバンドでも可能だが、ブロードバンドだと使いやすいアプリケーション:
製品・サービスの検索、ローカル情報、ニュース、オンライン新聞、オンライン電
話帳、オンライン請求書、音楽サイトの閲覧等。
3) ナローバンドでは不可能だが、ブロードバンドだと可能なアプリケーション:
オンライン・オーディオ聴取。
上記の分類から言えることは、ナローバンドでも利用可能なアプリケーションがまだ主流であり、ブロードバンドでしかできないアプリケーション、例えば、ビデオストリーミングはまだ利用ランキングの上位に入っていない。
男女、年齢別の利用状況
男女別の利用状況では、男性が毎月又は頻繁に利用する上位のオンライン活動は、ニュース、無料ソフトのダウンロード、スポーツ・サイト、成人娯楽サイト、オンライン・オーディオなど。一方、女性の利用が多い上位オンライン活動は、e挨拶、コンテスト/懸賞、インスタント・メッセージなど。男女で利用差が最も大きいのは成人娯楽サイト。男性の36%が成人サイトを楽しんだが、女性は8%だけ。
年齢層別の利用状況では、電子メールはすべての年齢層に利用されているが、以下は年齢層によって利用にかなり差がある。
アプリケーション/サービス | 若者層(19-34歳) | 中年層(35-54歳) | 高齢層(55歳以上) | インスタント・メッセージング | 59% | 49% | 45% | 健康サイト | 39% | 50% | 54% | チャット | 47% | 37% | 31% | 映画サイト | 37% | 26% | 18% | 出所:http://cyberatlas.internet.com/big_picture/geographics/article/0,1323,5911_1466661,00.html
仕事でのインターネット・アクセスがますます増加
eCom Ohio(オハイオ州政府のサイト)がTPG (Technology Policy Group)に調査委託を受し、2002年9月に発表された調査結果では、米国企業の48.3%が何らかのブロードバンド・サービスを使用しており、前年比27%上昇した。(TPG / eCom Ohio, “Ohio and National Business Online Survey 2002,” Sept. 2002)。
また、Nielsen-NetRatingsが9月発表した調査結果によると、2002年8月にインターネットを利用した米国のオフィス・ワーカー数は、対前年比17%増の約4,600万人に達し、同社が2000年1月にこの調査を開始して以来、最も多かった。また、インターネットを使用したオフィス・ワーカーの性別では、男性の方が女性の数より多い。しかし、仕事でインターネットを使用している女性オフィス・ワーカー人口は、この1年間に23%も増え2,040万人に達したが、男性は12%増の2,530万人であった。
オンライン(インターネット利用)時間では、男性の方が女性より多い。2002年8月における男性のオンライン時間数は平均31時間、女性は27時間。また、利用したセッション数は、男性が月平均54セッション、女性が50セッション。見たウェブページ数は、男性が1,900ページ以上、女性が1,700ページ弱であった。
(2002.11.5)
(次回は、欧州ブロードバンド事情について)
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