一覧に戻る
COMZINE BACK NUMBER
上級者ほど気を付けたい、知らずに送る文字化けメール

なくて七クセと言いますが、メールにおいても、差出人が知らず知らずのうちに相手に迷惑をかけている困ったクセを、しばしば見かけることがあります。その代表例が「文字化けメールのクセ」。中でもやっかいなのは「部分文字化けのクセ」です。
もしも、全文が「文字化けメール」であれば「メールが読めません」という返信で、差出人は、その過ちを知ることができます。ところが「部分文字化けメール」では、文全体の意味は何となく伝わってしまうので、わざわざ受信者が差出人に文字化けを知らせてくれない場合が多いのです。ですから差出人はいつまでたっても「部分文字化けメールのクセ」に気づかないことになります。

もう一つ困ったことに、部分文字化けメールは、マッキントッシュを使いこなすデザイン名人や、ワープロが得意なビジネス文書達人から届く場合が少なくありません。これは、マッキントッシュやワープロ専用ソフト・専用機に特有の「機種依存文字」が「文字化け」の主な元凶だからです。メール以外では達人級というIT活用に自信満々の差出人に、たかが「部分文字化け」の注意をするのは気が引けるものです。そのため、当人はそのクセに気づかないまま文字化けメールを出し続けてしまうことになります。
そこで、今回はITが得意なビジネスパーソンであっても、ついつい出してしまいがちな文字化けメールのクセと、その対策について考えてみましょう。

文字化けグセ1 ビジネス文書を読みやすくするはずの数字が文字化け
 

これは、ビジネス文書作成が得意な方、読みやすい文書を心がけているワープロ達人ほど陥りやすい、文字化けメールのクセです。
読みやすいビジネス文書は、大見出し、中見出し、小見出しに段落分けされた上で、そこに数字が振られている場合がほとんどです。その際、大見出しはピリオドつき数字、中見出しはカッコつき数字、小見出しはマルつき数字とする場合が多いようです。また、更に細かい分類をする場合に、ローマ数字を併用することもあります。

ピリオドつき数字・カッコ数字・マルつき数字やローマ数字などは、ワープロのかな漢字変換機能を使って簡単に表記することができますが、そのコード体系は多くの場合ワープロソフト独自のもの、すなわち「機種依存文字」になっています。ですからメールで読み書きする場合、互換性がないため文字化けしてしまう場合が多いのです。また、マッキントッシュやワープロ専用機を使っている場合も、同様の問題が起こります。

そこで慣れ親しんだビジネス文書での段落数字の表記方法をメールでは改めて、ワープロ変換した記号文字を使わない方法を心がけましょう。もちろん、ワープロで作ったビジネス文書を、そのままメール本文としてコピーペーストしても、文字化けが起こりやすいので注意いたしましょう。

→対策 ピリオドつき.カッコつき.マルつき数字や、ローマ数字は使わない

文字化けグセ2 宛名や署名に記した会社名や電話番号が文字化け
 

ビジネスメールの冒頭には、相手先の宛名と会社名を表記するケースが少なくありません。また、文末に添える自身の署名にも会社名が入ることが多いでしょう。こうした場合は、○○○○株式会社、有限会社□□□□などと、略さずに表記するのが基本です。

しかし、例えば「かぶしきがいしゃ」と入力した途端に、ワープロが「(株)」と勝手に略した表記に変換してしまう経験を、誰もがお持ちでしょう。こんな時に困るのは、(株)を、うっかり全角一文字の記号文字、それもワープロ機種に依存した文字に変換してしまうことです。いわば、企業の顔とも言える会社名に文字化け文字を冠しては、とても失礼にあたります。
そこで失礼な「社名文字化け」を避けるためにも、会社名をメール冒頭の宛名や、文末の署名に表記する場合は、できるだけ略式表記をするのを避けましょう。どうしても略して表記したい場合には、ワープロで変換をしないで、例えば「(」+「株」+「)」と、全角かっこと漢字を一つ一つ打った方が確実です。そうすれば、うっかり記号文字に変換してしまうミスも避けられるでしょう。
また、署名に必須の電話番号を表記する際によく使われる、「TEL.」や「(代)」という略字も、ワープロに頼らず、一文字ずつ同じ方法で打つ方が確実です。ただし郵便番号の表記で使われる「〒」については文字化けをしませんので、使ってもよいでしょう。

→対策 (株)(有)や、TEL.(代)などの略号を表す記号文字は使わない
文字化けグセ3 気がつかないうちに、うっかり本文でも文字化け
 

もちろん、メール本文にも無意識のうちに「部分文字化けグセ」は現れます。中でも、気づかないうちに使ってしまいがちな「文字化け記号」を挙げるとするなら、上位には「半角記号」の数々が並ぶでしょう。半角記号とは、鍵カッコ、濁点、半濁点、長音符、句読点、中黒(もちろん全て半角)などです。

うっかり使ってしまうのは半角の中黒でしょう。中黒は、例えば「ジョン・レノン」というように外国人の姓名や「インフォメーション・テクノロジー」といった複合語を区切る場合、あるいは最近では複数の単語を併記したい時に使う区切り記号です。ビジネス文書のみならずメールを読みやすくすることにも役立つ大切な記号です。中黒は、全角で表記されていれば問題なく使うことができます。しかし同じ中黒でも「半角の中黒」は文字化けしてしまいます。通常は、JISキーボードの「め」のキーを押すと、全角で候補表示されるはずですが、うっかりもう一度漢字変換キーを押してしまうと半角になってしまう場合もあるようです。また漢字変換ソフトの設定によっては、最初に半角で変換されることもあるので、全角中黒に変換されるように直しておきましょう。

それから「半角記号」と同様に「半角カナ」も文字化けしてしまうので注意が必要です。半角カナは、例えば「インターネット」「メール」といったカタカナ表記の外来語を、ワープロ専用ソフトで変換するときに、うっかり半角にしてしまうケースが多いようです。ビジネス文書作成に慣れている人は、表示できる文字数が少ない場合にあえて半角カナを使うこともあるようですが、メールでは文字化けするのでやめましょう。また、WindowsXPに付属するMS-IMEを始めとして、多くの「かな漢字変換システム」は、変換候補一覧に「半角カナ」を表示させないように設定できますので上手に活用いたしましょう。
その他、年月日を記す時の大正、昭和といった元号や、メートル、グラム、パーセントといった単位を短く記す単位記号なども文字化けの原因となります。メールを打つときには、こうした特殊な記号を使わないように注意いたしましょう。

→対策 半角記号、半角カナ、元号記号、単位記号は使わない
提言:メールソフト上で本文を打つorテキストエディタを活用
 

今回は「部分文字化けグセ」の傾向と対策をご紹介いたしましたが、多くの場合、メール本文をワープロソフトで作ってから、コピーペーストすることが原因となります。ワープロソフトは多機能であるがゆえに、知らず知らずのうちに「機種依存文字」を使った独自の変換や、文書整形をしてしまうことが多いからです(機種依存文字について詳しく知りたい方は、TETSUROさんのホームページにある「機種依存文字劇場」が分かりやすいので、ご参照ください。)。

ですから、私は、通常の連絡メールの発信、返信は、メールソフト上で直接文書作成して対応しています。また清書が必要な少し長めの文書については、MK-Editorというフリーのテキストエディタを活用しています。慣れれば、下書き→清書というプロセスを省くことと、ワープロソフトで余計な文書整形や修飾をしないことの効率性を体感できるでしょう。その上、シンプルなテキストデータほど互換性が高く、文字化けすることもなく、多くの人が読むことができるのです。

 
久米信行(くめ・のぶゆき)プロフィール

1963年

東京都墨田区生まれ

1987年

慶應義塾大学 経済学部卒業

1987年

イマジニア株式会社入社 ファミコンゲーム開発

1988年

日興證券(株)入社 資産運用・相続診断システム開発

1991年

久米繊維工業(株)代表取締役に就任

1995年

ティーシャツ・ギャラクシー(株)設立 代表取締役
(現ティーギャラクシー・ドット・コム(株))

 

このほか、(社)ソフト化経済センター客員研究員、(社)東京商工会議所 IT推進委員会委員、(株)カレン 社外取締役などを務める。

●『メール道』が本になりました!!  
   
NTT出版より1680円で好評発売中
お求めは全国の書店かNTT出版へ
詳細はNTT出版ホームページ 
http://www.nttpub.co.jp/vbook/
list/detail/0129.html
 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]