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メールにおけるセキュリティ:安全でスマートな個人情報の伝え方守り方

個人情報保護法が施行されてからというもの、企業に求められる情報セキュリティ対策は桁違いに厳しくなりました。顧客データベースの管理はもちろんのこと、お客様と接するオフィススペースのレイアウトまで変更せざるを得なかった企業も多いでしょう。更に、私が所属している東京商工会議所や、子供が通っている学校でも、会員名簿・クラス名簿を配らなくなったのですから驚きです。
しかし、個人が「自分自身のプライバシーをどう扱うべきか?」については、まだ各自の判断に任されているようです。メールの受信箱を開ければ迷惑メールばかりで、個人情報保護の必要性をお感じの方も多いはずです。しかし、現状では自分の情報は自分で守るしかありません。
その一方で、新たな友人を増やすためのブログやソーシャルネットワーキングも大人気です。プライバシーやセキュリティの問題と、出会いや自己実現を求める心との「二律背反問題」に悩んでいる人も多いかもしれません。

そこで、今回は、メールにおけるセキュリティ、安全でスマートな個人情報の伝え方と守り方の基本について、一緒に考えていきましょう。

1 ビジネス上のおつきあいでは、法人用アドレスをお伝えする
 

会社で使うメールアドレス、住所、電話番号等は、法人用=会社の連絡先に統一いたしましょう。ビジネス上のお付き合いでは、心許せる特別なお客様以外には「個人の連絡先」を教えないことが基本です。
具体的には、お客様にお渡しする名刺と、メールに添える署名に書くべきデータは、それぞれ会社の郵便番号、住所、社名、所属・役職名、電話番号(携帯電話)、ファクス、メールアドレス(携帯メール)ということになります。
電話番号を見れば、経営者、管理職など要職にある人は、直通番号よりも代表番号が書いてある場合がほとんどです。これは、歓迎しないセールス電話等が殺到するため、受付や秘書を通す必要があるからでしょう。
しかし、メールアドレスについては、一部上場企業の社長や市区町村の首長と名刺交換をしても、直通アドレスが書かれているケースが増えました。先日、ある市長と歓談した時も、名刺にあるアドレスに届いたメールは、匿名メール以外は自ら読んでいるとおっしゃっていました。
今やメールアドレスこそが、コンタクト手段の中心となり、それも直通でなければ信頼されない時代になったということでしょう。
私の経験では、名刺や署名には、電話番号よりも、メールアドレスを先に書く、上に書く、大きく書く、目立つように書くことが大切です。それによってメールでのコンタクトが増えますので、時間と迷惑コンタクトのコントロールがしやすくなります。
また、法人用のアドレスで、迷惑メールやネットストーキングに悩まされる事態になりましたら、システム管理者に相談してフィルターをかけてもらうか、アドレス変更をしてもらうと良いでしょう。

2  携帯電話番号は、署名には乗せない。必要な時だけメール本文で
 

携帯電話の番号や携帯メールのアドレスを伝えるかどうかは、業務上の必要性や会社の方針によって違うでしょう。
業務上、携帯電話が不可欠で、会社が支給してくれる場合には、名刺や署名にも番号を明記します。お客様の便宜を図るため、携帯電話番号の表記を義務付けているケースも多いかもしれません。その時、特に女性の場合は、携帯電話番号に(ビジネス用)(会社用)と明記するだけで、迷惑電話が減るケースが多いでしょう。
中には、個人の携帯電話をビジネスでも使っている方もいらっしゃるかもしれません。個人用とは別に、ビジネス用・受信専用のPHSなどを持てれば良いのですが、余分なコストがかかります。その場合にも、ビジネスの相手には(ビジネス用)(会社用)と伝えるだけで、プライバシー侵害の抑止力になるでしょう。
私は、これ以上のセールス電話を避けるため、署名に携帯電話番号を表記していません。その代わり、顧客との待ち合わせなどお互いの携帯電話番号が必要になる場合は、メール本文に、さりげなく一文を添えるようにしています。

3 個人のアドレスは、フリーアドレス・セカンドアドレスでワンクッション
 

オンラインショッピングや、流行のソーシャルネットワーキングなどで、間接的にとはいえ、よく知らない人に個人アドレスを明かさなければいけない場合もあるでしょう。もし、その後で付きまとわれるのが嫌だと思う場合は、無料で取得できるフリーアドレスを使うのも一つの方法です。しかしながら、フリーアドレスではショッピングができないことも少なくありません。
そんな時に便利なのは、多くのプロバイダーが、月々わずかの料金で提供しているセカンドアドレスサービスです。見知らぬ第三者にメールアドレスを伝える場合には、セカンドアドレスを使い、そこから主要なファーストアドレスに転送するように設定すればよいのです。
いざセカンドアドレスに迷惑メールが殺到するようになったら、そのアドレスを変えれば良いのです。これならメールアドレスを変更するたびに、わざわざ親しい人に連絡を繰り返す必要もありません。
ただし、うっかり、セカンドアドレスから転送され、ファーストアドレスで読んだメールに返信してしまうと、相手に主要なアドレスを知られてしまう可能性もあります。ですから、セカンドアドレスのメールはセカンドアドレスのメールアカウントで読むなど、うかつにファーストアドレスで返信しないようにしましょう。

4 個人アドレスは、長くする。第三者が類推しづらいものにする
 

携帯メールのスパムに悩んだ経験をお持ちの方でしたら、メールアドレスを長く複雑にするだけで効果的な事を良くご存知でしょう。この方法が有効なのは、多くの迷惑メールが順列組み合わせでメールアドレスを生成して、大量発信しているためです。また、銀行ATMのパスワード決定時の注意ではありませんが、第三者に類推ができるメールアドレスをよく見かけます。例えば、姓名のローマ字表記を採用している会社などは、相手の名前さえわかれば、メールアドレスも類推できてしまいます。
ですから、特にプライバシーが気になる方は、個人のメールアドレスは長く複雑なものにする方が良いでしょう。たとえ、アドレスが複雑でも、親しい相手ならメールのやりとりでアドレス帳に登録することができるので苦にならないはずです。更に、セカンドメールなどを組み合わせて、こまめにアドレスを変えていれば、迷惑メールもついてこられないはずです。

5 個人アドレスを、Webサイトやブログなどにむやみに掲載しない
 

個人アドレスを、ご自身のホームページやブログに掲載している人も少なくありません。たとえブログ自体は、親しい人が中心になって訪れるとしても、プライバシーを気にする人なら、これは避けた方が良いでしょう。なぜなら、ホームページ上のメールアドレスを自動的に検索して集めるようなプログラムを、日々悪用している人がいるからです。そうして集めたメールアドレスを使って迷惑メールを出し続けるのです。ですから、メールアドレスはホームページに表記せず、ブログを見てくれた第三者との交信は、私書箱機能などを使って間接的にコンタクトができるようにしましょう。
もちろん、反対に誰かのブログや掲示板などにコメントする時にも、うっかり署名を乗せたり、メールアドレスを併記したりしないようにしましょう。

6 迷惑メールは見る前に捨てる。開かない。返信しない。
 

それだけ注意を払っていても、迷惑メールが届くのを防ぐことはできません。ですから、プロバイダーやメールソフトが提供する迷惑メールフィルタを活用して、なるべく見る前に捨てるようにいたしましょう。なぜなら、メールを開くだけでプライバシーを侵害するような悪質な仕組みがあるからです。もちろん、htmlメールの画像表示や、スパイウエアなどを使った手口も、最新のセキュリティ対策ソフトで、若干は防げるようになりました。こうしたセキュリティ対策ソフトを使うことは今や必須になってきましたが、常にイタチゴッコであることに変わりはありません。
また、対策ソフトでは防げないものもあります。それは、ついうっかり見知らぬ人のメールに返信してしまうことです。怪しいと思ったメールには、決して返信しないようにしましょう。

7 大切なことはメールや電話で伝えない。なるべく面談をする。
 

確かにメールも電話も便利なツールではありますが、セキュリティを考えれば完全なものではありません。本人は一対一のメールで「秘密の会話」をしているつもりでも、実のところ、隣の会話もよく聞こえる「喫茶店で大声で話している」ようなものなのです。ですから、大切な情報については、便利だからといってメールや電話ではうかつに伝えない方が良いでしょう。ネット全盛の時代だからこそ、ネットに個人情報や機密情報を載せておかないほうが得策です。メールはあくまでも「簡便なツール」に過ぎないと割り切った方が良さそうです。

今回は、安全でスマートな個人情報の伝え方と守り方について、7項目を列挙しました。しかし、相反するようですが、プライバシーやセキュリティに、あまりに過敏になりすぎるのも考えものです。
実のところ、私は、多くの人に読まれているメールマガジンの文末にも、署名を添えています。もちろんメールアドレスなども明記されています。そのバックナンバーは、署名ごとWebにも掲載されています。その結果、確かに毎日数百通のスパムメールにさらされ、時には不快なメールに腹を立てることもあります。しかし、迷惑メールなどで困るデメリットよりも、会うべき人に会えるメリット、多くの人に自分を知っていただくメリットの方が、はるかに大きいような気がします。
また、尊敬する経営者の中には、携帯電話番号やスカイプのコードまでも署名で公開している達人もいらっしゃいます。やはり、メリットの方がデメリットよりも大きいからだそうです。もちろん、高齢者、若い女性、子供など、悪い輩に狙われやすい人は、これまで以上に、しっかりセキュリティ意識を持つ必要があります。しかし、前向きなビジネスパーソンはリスクばかりにおびえる必要はありません。むしろ適度な自己表現と情報開示をしていき縁と運とを切り拓いていきましょう。

 
久米信行(くめ・のぶゆき)プロフィール

1963年

東京都墨田区生まれ

1987年

慶應義塾大学 経済学部卒業

1987年

イマジニア株式会社入社 ファミコンゲーム開発

1988年

日興證券(株)入社 資産運用・相続診断システム開発

1991年

久米繊維工業(株)代表取締役に就任

1995年

ティーシャツ・ギャラクシー(株)設立 代表取締役
(現ティーギャラクシー・ドット・コム(株))

 

このほか、(社)ソフト化経済センター客員研究員、(社)東京商工会議所 IT推進委員会委員、(株)カレン 社外取締役などを務める。

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イラスト/小湊好治 Top of the page

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