何気なくボウリングを始めて、5歳の子どもに負けた時、私の中で何かが音を立てて崩れました。たかがゲーム、そうたかがゲームなのに、目は真剣そのもので怖いほどだったでしょう。ちゃんとボールいやリモコンを構えて、手を大きく振って助走をしながら、えいっとばかりに思い切り振り抜きます。
ところが…。あーれー。またも何ピンか残してしまいました。
続いて投げたのは5歳児です。おそらくは実際のボウリングなら、ボールさえ持てないはずでしょう。それなのに、ゆるゆるボールが真ん中に行って…。ああ、またもやストライク
その瞬間、頭に血が上り、アドレナリンが分泌されているのが、自分でも分かります。だんだんフォームも大げさになり、テレビに向かってリリースした右腕は…。あ、あぶない、テレビ画面に突き刺さりそうです。
こうなったらと、強烈なフックをかけるべく手首をこねくり回すと、おお、面白いように曲がります。何度か試して、ようやくストライク。勝てるまで、そう勝てるまでゲームを繰り返す、大人げない私。
そこまでして、ようやく勝利を収めた時に、右肩に鈍い痛みが…。うう、選手生命が….。
そうです。ゲームの進化はここにあり。攻略本必須の難しくなりすぎたゲームよりも、誰もがすぐに理屈なく楽しめるゲーム。コントローラのボタンをいくつも押すような頭を使うゲームよりも、スポーツそのままの自然な操作で体を動かすゲーム。高精細の3Dコンピュータグラフィックが視覚に訴えるゲームより、手のひらの皮膚感覚で音や振動を味わうゲーム。ひとりで個室の中で楽しむゲームよりも、みんなでリビングに集まって楽しむゲーム。
そんな「正常進化のゲーム」が出てきたおかげで、当分、体のあちらこちらが痛くなりそうです。しかし、痛みの分だけ、リビングには笑い声が絶えないことでしょう。