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かしこい生き方を考える COMZINE BACK NUMBER
COMZINE PICK UP BOOK 今月の1冊『新ネットワーク思考〜世界のしくみを読み解く〜』 ネットワークというフィルターを通し世界を見てみる楽しさ、発見!!

世界中のサイトとサイトがリンクでつながり合うウエブネットワークをはじめ、人と人とのつながりによる社会ネットワーク、野生に生きる動物や植物の生態系ネットワーク、体内の細胞間における遺伝子ネットワーク…と、世界にはさまざまなネットワークが存在する。
本書は、こうしたすべてのネットワークに共通する法則があるということを、いろいろな切り口から紹介したネットワーク理論の解説書。専門知識が全くない人でも楽しめるよう、クラッカー、伝道者パウロ、エイズワクチン、マイクロソフト、アルカイダ、さらにはハリウッド俳優のケビン・ベーコンまで、さまざまなキーワードを挙げてネットワークの仕組みを説明している。

ネットワークはランダムにつながっているものというイメージが強いが、実は小さな点の集まりが多く存在する中で、膨大な点が集まる“ハブ”が少数あり、このハブのおかげでネットワークが一つにまとまっているのだと作者は言う。これについては、少数のリンクしか持たない個人や企業のサイトと「Yahoo!」「Google」といった検索サイトとの関係を想像すると分かりやすいかもしれない。しかし、このハブはインターネットの中だけでなく、社会ネットワークや生態系ネットワーク、遺伝子ネットワークなど、他のネットワークにも存在しているのだ。

そのため、ハブを攻撃すれば、そのネットワークは崩壊の危機に瀕することになる。例えば、2001年の同時多発テロでアルカイダが世界貿易センターとペンタゴンを狙ったのは、この2つがアメリカの経済力とセキュリティのハブだと考えられていたからだし、1997年に起きたアジア通貨危機もIMF(国際通貨基金)の判断ミス、つまり経済界のハブの故障が次々と他のハブに影響を及ぼした結果。また、この考え方を応用すれば、エイズ感染の広がりを抑えるにはハブとなる人を優先的に治療すると効果的なことや、崩れかけた地域生態系の保護にはハブとなる動植物の庇護が第一であることが分かってくる。

本書には、一見何の関係もなさそうだったそれぞれの事象が、ネットワークの概念を通して見ると、同じ法則で進んでいることを発見できる楽しさがある。さらには作者が現在の考えに至るまでのベースとなる考え方・研究・理論を生み出した数々の学者のエピソードが物語風に散りばめてあるのも魅力の一つだ。
スイスイ読み進められる内容ではないが、面白いエピソードはいっぱい詰まっている。ピンとこない部分は飛ばして、拾い読みをするだけでも十分楽しめるのではないだろうか。

『新ネットワーク思考〜世界のしくみを読み解く〜』
『新ネットワーク思考〜世界のしくみを読み解く〜』
アルバート・ラズロ・バラバシ 著、青木 薫 訳
日本放送出版協会/1900円(税別)

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