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今月のテーマ:「買収」

企業買収の話題が茶の間をにぎわせています。エンタテインメントの世界で「相場師」というキャラクターは昔から小説や映画で描きやすい存在でしたが、ITの発展と共にそのイメージもかなり変化し、どこかしらソフィシティケートされた印象を受けます。その舞台裏はかなりハードな「買収」が、今月のテーマです。


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CINEMA:ウォール街

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制作: 1987(昭和62)年 米
監督: オリバー・ストーン
出演: マイケル・ダグラス/チャーリー・シーン/ダリル・ハンナ
生き馬の目を抜く証券業界で暗躍する男たちの物語

昨今のテレビとIT企業の騒動で何か新しい動きがあると、専門家から語られるのがアメリカでの実例。80年代にブームを巻き起こしたM&A(企業買収)が、世相に敏感なハリウッドが見逃すわけはなく、80年代後半から90年代初めにかけて、スクリーンには金融関係で活躍するヒーロー、ヒロインが続々と登場した。中でも、タイトルもズバリな映画がこの作品(原題も『Wall Street』)。1987(昭和62)年の作品である。
上昇志向の強い若き証券マン、バドの憧れは、業界の黒幕的存在で大富豪のゲッコー。ある日、多忙なゲッコーとようやく面会できたバドは、「俺の知らない話をしろ」と容赦なく迫る彼に、自分の父親が勤める航空会社の内部情報を流してしまう。それに気を良くしたゲッコーは、すぐに取引を開始、航空会社の買収に出る。ゲッコーの後ろ盾を得たバドは、トントン拍子に出世し、莫大な金を手にして一気に成り上がる。だが、成功の美酒に酔いしれる間もなく、ゲッコーが買収を単なるマネーゲームとしか考えておらず、航空会社を解体しようとしていることを知るのだった。
インサイダー取引、敵対的買収とまさに時代のキーワードを散りばめながら、生き馬の目を抜く業界を描いた作品。バド役にチャーリー・シーン、ゲッコー役にマイケル・ダグラス。そしてバドの父親役に、チャーリーの実の父親でもあるマーティン・シーンが扮している。ちなみに、この当時のアメリカ映画には、日本の強い経済力を背景にした会話がよく登場し、興味深い。そういえば、ソニーが米大手映画会社コロンビアを買収し、世界を驚嘆させたのも89(平成元)年。こちらは友好的買収でしたが……。

イラスト:小湊好治
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BOOK:高級ブランド戦争ーヴィトンとグッチの華麗なる戦い

買収、引き抜き、裏工作高級ブランド業界の熾烈な内幕

本書によると1999(平成11)年と2000(平成12)年に高級ブランド業界で50件以上の合併と買収が行われたという。その背景は95(平成7)年から00年にかけて誕生した「ウルトラHNWI(ハイ・ネット・ワース・インディビジュアルス)」と呼ばれるインターネットや新しい技術革新によって、相続ではなく個人の成功によって3000万ドル以上の資産を獲得した人々の消費行動に支えられている。地球規模でみると高級ブランドの売り上げは1000億ドルに達し、武器取引の2倍の数字だという。
世界一の高級ブランド消費国でありながら、日本ではなかなかその内幕が見えにくいこの高級ブランド業界の引き抜き、買収、裏工作、スパイ合戦などを、フランスの大手新聞「フィガロ」の副編集長で、主に国際問題と経済問題を担当している著者が、冷静に分析する。雑誌やウェブ上で毎シーズン、高級ブランドの新製品情報は、欧米と時間差なく手に入れられるようになったが、そのブランドの背景にある国際的な政治情勢、経済状況を踏まえた情報は、日本では大手新聞でもなかなか取り上げられることがない。その後ろにうごめく人間模様は、IT企業の企業買収ニュースより、熾烈で残酷。
次々に都心にオープンする高級ブランドのブティックに関心のない人も、本書を読むと消費とは違った観点でファッションを楽しめる。

BOOK
ステファヌ・マルシャン 著
大西愛子 訳  
発行:駿台曜曜社 /1,800円(税別)
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