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◆ 電子産業の行方
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◆ 米国半導体産業の動向
11月6日、SIA(米国半導体工業会)が楽観的な2003年の見通しを発表した一方
で、データクエストは先の見通しを変更して、かなり慎重な見通しを発表して
いる。SIAによれば、2002年第3四半期の売り上げは8.2%増で年間では1.8%増
になるとの事で、2003年は20%増、2004年は29%増の予測をしている。これに
対しデータクエストでは2002年は0.5%増で2003年は12.1%増になると予想し
ている。どちらが正しいかは競馬の予想みたいなものだが、一つ言えることは、
2002年第3四半期から着実に景気が回復に向かっている事だろう。株価も10月は
尻上がりで、過去15年間で最良の10月だったと報道されている。アメリカでは
選挙も終わり、対イラク戦争も秒読みに入って、もはやこれ以上悪いニュース
は何も無いといって良い。イスラエル状況も以前に戻り(つまり通常の戦闘状態)、
イラク戦争が終われば(いずれにせよ最終決着はつかないだろうが)アメリカの
景気は戻ってくると期待される。すなわち、アメリカ国民が再び安心して商品を
買いまくり始める訳だ。しかし、まだレイオフをする会社もある。例えばAMDは
20%程度のレイオフを実施するようだ。次世代のCPUの計画を先延ばしにした直
後だが、インテルとの対抗上ワイヤレスLANのチップ市場には参入する意向を表
明しているので、コスト的にはいっそう苦しくなるためとみられる。このように、
成熟期に入った半導体産業では、他の成熟産業と同様に商品の絞り込みとリソー
ス(人材と資金)の重点投資が行われ、かつ絶え間ないコスト削減が必須となる。
◆ 日本の半導体メモリー製造
日本のメモリー製造に目を移すと、エルピーダメモリーの社長に坂本さんが就
任した。坂本さんはTI出身で最近では確かUMCジャパンの社長をされて居られた
が、元NMBSのDRAM工場を運営されていた関係で日立と縁が有ったものと思われる。
最初の社長はNECの徳山さんだったので、いわゆるたらい回し人事かもしれないが、
もはや誰もなり手がいなかったとも言えるかもしれない。何度も言うようだが、
筆者の意見では、日本でメモリー製造会社はひとつにしなければ全部潰れてしま
う。韓国、ドイツ、アメリカ、イタリア・フランス連合、と各国一社の時代に何
で日本だけ何社もあるのか、いまだに旧態以前のメンツ重視の発想だ。互角に勝
負するには、まずあらゆる資源をひとつにする必要がある。会社の統合と一本化
は日本の会社文化からいって数年、いや5年以上かかるかもしれない。
そのためにはカリスマ的人材をトップに据えていくのが常道だが、かなりラジカ
ルな改革となるので強力な支援がなければ挫折してしまう。アメリカでもHPな
どが最近のこの例であろう。また、メモリー製造でなくメモリー販売(つまり委
託生産=台湾利用)なら、何も日本がやる必要はないのではないか?坂本さんの
就任挨拶の中で、50%は台湾委託(合弁会社?)とのコメントがあり、それまで
して日本にメモリー製造会社の名前を残す必要はないと思うのだが。少し実体を
調べてみると、最近の提携では中身はそれぞれの親会社の工場に生産委託する形
になっているようで、実体はすでにペーパーカンパニーになっているようだ。時
間は刻々過ぎて行き、日本に残された時間は今や後2-3年しか、いや後1-2年で決
着がつくだろう。過去四年間何も改革できなかったものが後1-2年で改革されるの
か? いや政治の事をいっているのではないのだが・・・?
今更ながら(知る人ぞ知る)悪魔の辞典に載っているIndecisionという言葉の意
味が思い起される。すなわち、決断しないというのは、ただ一つの最良な方法で
あって、なぜなら決断というのはいくつもあり、どれもが成功するとは限らない
からだ。エルピーダメモリーには既に様々な噂が流れていて、三菱が参加すると
か、大手CPUメーカーが資本参加するとか、今後大ブレークする可能性もあり眼が
離せない。
◆ 今後の戦略
このように2003年は更なる清算、統合がもっと起る可能性、と言うより起るだろう。
回復期にもかかわらず成長率は間違いなく10%程度の低成長だろう(つまり完全
な成熟期に入ったわけだ)。半導体機器業界もトップのアプライドマテリアルが
更なるレイオフを発表しているし、東京エレクトロンやニコンもこれ以上の赤字
には耐え切れないのではないか。新製品の分野も既に限られているので、他社を
買収するしか生き残りの道がないようにも思える。筆者の持論では、日本の半導
体機器メーカーは韓国に足場を移し、日本では最先端の物だけやる覚悟が必要だ。
つまり韓国に本拠を移し、来るべき中国やベトナムの大ブレークに備えるわけだ。
製鉄、造船、自動車等いくらでも過去に例があるではないか。アメリカではもう
かなり日常茶飯事になって来ているが、日本ではまだまだ取り組みが遅れている
ように思う。見習うべきはホンダである.(F1レース再戦の部分は謎だが)。ア
メリカではいつでも盗難車のトップはホンダと言うぐらい魅力ある車を作り続け
ているし、ベトナムや中国のバイクブームを最後に制したのもホンダである。
◆ 激戦が予想される無線通信用半導体
激戦となるのは今でも中小の会社がひしめき合っている無線通信(ケータイを含む)
用半導体であろう。中小の会社がひしめき合えるのは、とりもなおさずシステムが
標準化されていないからであるが、PDAとケータイの融合の時代を目前にして、ど
この会社がデファクト標準チップを作り、どこの会社がデファクト標準のOSを作る
のか興味が尽きない。北斗の拳風に言えば(古くて申し訳ない)、モトローラは既
に死んでいる。パーム用とマック用のCPUは既に他社に移って、激戦のケータイ用
チップしか残っていない。STマイクロがモトローラの半導体部門を買収すると言う
噂が絶えない。ケータイのGSM陣営とCDMA陣営の戦いは世界中に広がっている。技
術的にはCDMAだがインフラではGSMと消費者から見るとGSMのほうがわかりやすい。
3Gの普及が進めば間違いなくCDMAに有利なのだがこの不況で普及が遅れている。日
本ではCDMA陣営が技術を売り物にしないマーケティングで伸びて来ているようであ
るが、インフラ整備がCDMA陣営の必勝パターンだ。日本独自のPHSも電話からデー
タ通信にスタンスを移し、PDA市場の立ち上がりと共に生き延びているだけでなく、
将来的にも無線LANの基地局としての発展が見込まれ、3Gケータイに立ちはだかろ
うとしているようにも見られる。
◆ 飽和市場でのマーケティング戦略
しかし、日本のケータイを見ていると、技術的にはもう限界で(ツインカメラに
ツインカラー液晶、昔はやったCDラジカセの新製品ラッシュを思い出させる)、
これからでてくるものはいわゆるゲテモノでしかない。これでは消費者はかなら
ず飽きてくる。ソニーのクリエしかり。もはや屋上屋を重ねた化け物でしかない。
一時、ビデオレコーダーもそれに近いところまで行ったと思うが、PDAはある意
味でシンプルでないと実用にはならない。ZEN of Palmのゆえんである。日本人
は(私も含めて)ともすればステータス・シンボルを求める傾向があり、それは
車、家、そして家電に大きな影響を与えている。インプレスのケータイ・ウエブ
サイトに本日の一品と言うコラムがあるが、それをいみじくも代言している。
つまり人に見せびらかしたいから買う、持つことでそれでなにか意味のあるこ
とをするのかと言うとそうでもない。趣味の域を出ないといわれる所以だ。以前
はこれが日本に蔓延していて、みんなが私も欲しいという風潮を(大量宣伝によ
り)生み出し、それを大量生産する松下電器のような会社が儲かっていたわけだ。
今は他人の趣味は他人の趣味、私は別な趣味というかなり個人主義に近くなった
わけで、あまり大宣伝は必要なく、ティーザー広告で一部の趣味人の眼をひいた
後、限定販売をすることによって、完売(リベートが要らない販売)を果たすよ
うなマーケティングになったようだ。確かソニーが日本で初めてこの方式に切り
替えて、いち早く前回のバブル崩壊を抜け出したように記憶するが。
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