■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
◆ ホットスポット・ビジネス急成長の兆し
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◆ 無線LANに関する最新情報

12月初め、2つの興味あるニュースが発表された。一つは大手会社によるホットスポット運営会社の設立の話で、二つめはIEEE802.11専門会議の開催(カリフォルニア州サンタクララ市)である。

一つ目のニュースでは、IBM, IntelそしてAT&Tによる全米のホットスポットを繋ぐネットワークを運営する会社(Cometa Networks Inc.)が設立されるとのこと。筆者は(自分の会社内の無線LAN サービス以外は)スターバックコーヒー店のホットスポット・サービスしか知らないので、これを機に少し調べてみることにした。

まず802.11専門会議にも登場したベンチャーのBoingo Wireless Inc. であるが、全米主要都市で運営されており、サンフランシスコ市内では約51カ所あり、そのうちいくつかは無料のホットスポット(商店街等でホットスポットを運営しているもの)であった。そして有料の多くはコーヒーショップやホテルで、ビジネス用は見当らなかった。料金は月額24時間、10日使用コースで29.95ドル、無制限使用で月額49.95ドルとなかなか魅力ある値段である。この値段は通常の携帯電話料金とほぼ同じであるだけでなく、今売り出し中の高速データ通信(GPRS又はCDMA1x)の付加料金より遥かに安い。 T-Mobileを調べてみるとBoingo と同じように全米主要都市でサービスされているが、最も有名なのがスターバックスでのホットスポット・サービスであろう。値段もBoingo とほぼ同じであり、時間制限で25ドル、無制限で50ドルといったところがアメリカでの相場のようだ。

今回調べてみなかったが、東芝アメリカもホットスポットを運営する会社を持っているとのこと。東芝は無線LAN内蔵のポケットPC e740を米国限定で発売しているので、ホットスポット運営は当たり前だろう。多分ビジネス用途であろうと推察できる。

これらの報道によると新しい会社(Cometa Networks)は、ホットスポット・ネットワークを構築して、そのサービスをISP, 携帯電話会社、そしてケーブルテレビ会社に提供し、その対象は企業ユースであり、それに必要な稼働率を目指しているとのこと。

◆ ホットスポット・ビジネスに興味を持つ理由

なぜこのニュースに興味が有ったかというとそのタイミングと用途である。米国での3Gスタートは、やはり惨たんたる結果で、携帯電話で話すこと以外考えている人が現在のアメリカにはいないことを如実に示した結果となっている。アメリカの若い人は日本と同じように、携帯電話での通信サービスに興味があることは筆者の周りの人と話していても判るのだが、いかんせん、それらの人たちには購買能力が無いのみならず、彼らの買い物リストのトップに上がって来ないのが原因である。なぜアメリカが日本と違うのかについての議論や検証が余りになされていないようなのが不思議である。

そしてホットスポットの大多数のユーザーはノートPCを使い、PDAユーザーは殆どいないようだ。なぜそう言えるかというと、アメリカではCFカードタイプの無線LANアダプターは、Pen Computing MagazineによるとSocketとSymbolから発売されているそうだが、見たことがないし、一般に売られている物はPCカードタイプである。iPAQなら外付けのPCカードアダプタがあるので使えるが、他の製品すなわちパームなどでは使えない。

ここに来て、専門会議でも述べられているのだが、802.11チップの値段、消費電力が最近急激に下がって来ており、これからはPDAやPCのみならず、色々な家電やおもちゃにも組み込まれていくだろうと予想している。面白いのは、携帯電話にも組み込まれると予想している点だ。これらの話は何やらBluetoothの発表時のエキサイトな話とよく似ている様に思えるのだが、違いは無線LANの方が着実に企業ユーザーを掴みつつあるということだろうか。その意味でアメリカのホットスポット・サービスは、日本のホットスポットと少々事情が異なり、足が地に着いているビジネスプランと言えるのではないか?

◆ 無線LANチップセット搭載パソコン

このサービス開始にタイミングを合わせて、来年前半にはIntel社の新型CPUであるBaniasと、無線LANチップセットCalexicoを搭載したノートPCが各社から出て来る。これらのホットスポット利用がこれにより飛躍的に伸びる可能性がある。利用料金も適切であり、3Gケータイのサービスなどは、料金の見直しを余儀なくされるだけでなく、サービス自体縮小せざるを得ない可能性すらあるのではないかと思う。

面白い事に、現在ホットスポット・サービスにも乗り出して来ているのが、T-MobileとAT&TのGSM陣営だけであるということだ。CDMA陣営はCDMA1xによる(GPRSより)高速データな通信とそのネットワーク構築に自信を持っているのかも知れないが、所詮は144Kである。

車社会のアメリカで、日本的なケータイ文化が発展するとは思えない。日本のケータイ文化は公共輸送機関であるバスや電車を使う時間に密接に関連していると筆者は見ている。だからアジアのほとんどでケータイ文化は受け入れられたし、ヨーロッパの多くでも受け入れられ始めている。

アメリカは、特に西海岸は未だに車オンリーの社会である。その一つの証拠としてアメリカでは殆どの会社が通勤費を(毎月の手当として)従業員に支払ってはいない。すなわち車を持ち、会社まで通うことは、給料以前の(生活するための)前提条件となっているからだ。無線LAN付きのタブレットPCとかPDAなどが街角で(すなわちコーヒーショップなどで)使われる方が、ずっとアメリカ的であると思う。少なくとも石油が尽きるまでこれは変わらないと思うし、その日の来ることを想定してアメリカが国内の石油生産を最小に絞っていることも周知の事実である。この戦略のためにイラクをねじ伏せたいのだという穿った見方もあるくらいだ。


戻る



月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]