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◆ アメリカ携帯事情 (その2)
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◆ アメリカにしかないスマートフォン

スマートフォンが生まれたのはそれほど古くなく、まだ5年もたっていないだろう。大き く分けて2種類のスマートフォンがある。ひとつはパームOSベースのもので、もうひと つは新しいポケットPC2002ベースのものである。形態としては携帯電話にPDAのOS が乗っているものと、PDAに携帯電話機能がついているものに大別される。PDAが 一般的であるアメリカを除いたら、マニア以外にはとても売れそうに無いと思うが、ア メリカで仕事をしているとこういう品物があると買いたくなる。なぜかというと前回述べ たようにケータイとページャーそしてPDAはアメリカのビジネス・パーソン、特に西海岸 では3種の神器であり、これら3つをひとつにまとめたら至極便利であるからだ。

◆ なぜPDAがアメリカで生まれて一般的になったのか

インターネット・ショッピングが抵抗無く受け入れられたように、アメリカではPDAが 抵抗無く受け入れられる要因があった。それはアメリカのビジネスの習慣からきている。 アメリカの会社では昔からデイ・プランナーというものが使われていた。PDAに切り替え る前には私もデイ・プランナーを使っていた。デイ・プランナーのサイズはいろいろあって ポケットサイズからレターサイズのバインダーにはさんで使う日記兼予定帖でって、 私が日本の米国法人で働き始めた17年前にも皆が使っていたのを思い出す。
アメリカの仕事のやり方からいってこれが無いとまったく仕事にならないくらいの必需品 であって、会社が無料で支給している所も多い。この辺のアメリカでのビジネスのやり 方はアメリカのITの進め方に密接に関連していると思うので、次回以降にお話ししよう。

PDAは私の記憶ではシリコンバレーでパームパイロットとして誕生したのが始まりだと 思うが、発売当時に(今や日本人でも良く知っている)サニーベール市のフライ・エレ クトロニクスのショップで見た記憶がある。当時はこんな電子手帳まがいのものが売れ るのかと思っていた。3年位前、友人が使っているバイザーを見せて貰いびっくり仰天、 すっかり考えを変え、それ以来デイ・プランナーを捨ててPDAに切り替えた。何しろでっ かいバインダーを抱えなくて済むのが魅力的であったし、デイ・プランナーとまったく 同じ感覚で抵抗無く使えたのも(手書き文字入力も同じ感覚)大きい。

この頃、会社のメールもマイクロソフトのアウトルックに切り替わり、PDAとの連携が かなり楽になっただけでなく、シリコンバレーの会社がPDAに切り替えるための補助金 を出し始めたのも普及を促進した。会社からみれば毎年デイ・プランナーを買い与える より、1回の補助金のほうが安いという計算も有ったと思うが、あっという間に広まった。

証券会社に勤める私の友人(ロシア人)は、私のPDAを見て昨年自分でも買ったが、 ニューヨークの本店ではだれも持っていなかったと話してくれた。そういえば昔、仕事 でニューヨークの法律事務所に3日間ほど業務提携の話し合いに行った時、ノートPCを 取り出してメモをとりメールを打っていたら弁護士が眼を丸くしていた。それもそのはず、 かなり有名な法律事務所ではあったがデスクトップ・パソコンですら見当たらなかった。 アメリカでもかなり地域差、あるいは業界間格差があるという事だろう。但し口コミによる 普及がアメリカでもかなりの影響力があるのはこの例をみてもお判りになると思う。

◆ PDAがスマートフォンになった経緯

パームにワイヤレス機能を搭載してメールとウエブ・サーフィン(パームネット)ができる ようになったのが最初で、サービスがニューヨークとかサンフランシスコとかの大都市 に限定されていたので、それほどのブームにはならなかつた。そうこうするうちハンドス プリング社からバイザー用電話モジュールが発売になり、そして京セラから、次いでサ ムスンからパームOSベースのスマートフォンが発売になったので、私も今までの携帯 電話とPDAをやめてこれに切り替えた。これも友人が持っていたのを見せられて決断した。

私が現在使用中のスマートフォンは、サムスン製のPDAにSprintPCSの電話機能(CD MA)が載っているものだ。カラー表示でパームOS3.5だが、ソフトウエア・グラフィティで フル画面表示が可能である。会社のアウトルックに登録してある電話帳が使えるし、 ショートメールやページャー機能もあるのですこぶる便利がよい。しかし通信速度は 最大14.4Kbpsなのでホームページをみるには、昔のダウンロードという言葉がぴったり するくらい待たなくてはいけない。幸いアメリカにはPDA専用のサイトがあり、パソコン 経由でダウンロードしたり、直接ワイヤレスでダウンロードしたりできるので結構重宝して いる。このようなサイトで有名なのがAvantGoあるいは Vindigoで最近有料になったが、 ただ同然(年20ドル)で企業が宣伝目的でサイトを作っているケースも多いようだ。 SprintPCSではYahooと提携してウエブサイトの更新ごとにショートメッセージを送る サービス(有料)もしている。株価の変化を知らせるのが主な用途とも聞くが、私は使用 していない。AvantGoで適時ダウンロードすれば株価は見られるし、他のアメリカ人の ように毎時間株式売買はしていないためだ。ただしダウンロードには10分くらいかかる。 スマートフォンを使い込んでみて、思ったより使いにくいと感じたのがその形状で、PDA 一体型は大きくて持ち歩きにくいだけでなく、電話応答がしにくく番号も入力しにくい。 またLCD画面が汚れたり傷ついたりもしやすい。まあこれを解決するには有料のボイス ダイアル(名前を呼べば自動的にダイアルしてくれるサービス)を使えばよいのだが。 やはり携帯電話にPDA機能が載っているほうが私の仕事の用途には合っている。

◆ 3Gサービスに伴って続々登場してきた新しいスマートフォン

最初は、驚いたことに東芝のポケットPC(旧型)にCDMAをつけたものがVerizonから 144KBpsのCDMA2000ネットワーク(VZW-MSN)で売り出された。SprintPCSでもT-2135 として売り出し始めた。e550Gベースだったら私も買っていたかもしれない。 SprintPCS ではTreo 300も売り出している。カラー画面でキーボード内臓、そしてフリップ・カバーが ついているのが売りだ。ハンドスプリング社はこれに賭けているようで、単なるPDAはも う製造していないし、結構なリベートもついている。続いてT-Mobileからヨーロッパで既 に売り出しているO2 XDAを売り出した。これはポケットPCフォン・エディションOSで製造 元は台湾とのことだ。GSM GPRSでは、速度が最大56Kbpsであるものの、毎月の使用料 は5メガで19.99ドルと一番安い。使っている人はまだ見たことがないが、ショップに行けば 見せてもらえる。店頭に展示していないところをみるとセール対象ではないらしい。

ソニーエリクソンのサイトにはP800というスマートフォンが紹介されていた。ATTのサー ビスになるらしいが、とてもソニーがデザインしたとは思えないような垢抜けしない代物で、 クリアなフリップ・カバーに電話キーがついていて(京セラの6135とそっくり)シンビアンOS で208X320と中途半端なサイズのカラー・スクリーンだが、カメラが背面についている。 クリエNRにGSM−GPRSをつんで出したらかなり売れると思うが、市場の様子見をして いるのかもしれない。ATT mモードで出している方のケータイは日本で出しているもの にかなり近い出来栄えなので、こちらが本命なのかもしれない。

スマートフォンの価格はおしなべて500ドル位でポケットPC版だと600ドル以上するが、 PDAとケータイとページャーを買うことを考えると合計としては安くなる。

前回紹介したFCCサイトの認可情報によると、これからサムスンと京セラから折りたたみ 式のスマートフォンが出てくる。サムスンのはポケットPC、京セラのはパームOSだ。 いずれもSDカードスロットやMP3再生機能等がつき、やっとPDAの最新トレンドに追いつ いただけでなく、どちらもCDMA2000―1900Mhz―144Kbpsが可能な3G携帯でもある。 私はパームOSの京セラ(7135)を買おうかと思っている。理由は単純。日本語化(中国語。 韓国語もOK)がJ-OSやCJK−OSでとても簡単であるからだ。ポケットPCでも日本語化は できるが レジストリをいじくったり、面倒くさいしなにより日本語化の情報が少なすぎる。 私はスマートフォンも日本語化して日本とメールをやり取りしたり、日本語のサイトをダウン ロードしたりして使っている。ちなみに日本語のメールができる携帯電話もアメリカでサー ビスされているが、一般の人にはあまり知られていないようだ。京セラのものは、アメリカ のウイスコンシン州で製造されているのでアメリカ製である。

◆ アメリカのケータイ市場

アメリカの携帯電話人口は1億4千万人でそのうちウエブ・サーフィンをしているのは2百 万人という記事を見つけた。2000年のセンサス(人口調査)ではアメリカの人口は2億8 千万人であった(もっとも調査対象外の人もいっぱいいたはずだが)ので、携帯電話を 持っている人は人口の半分以下でしかない。前回の発言でほとんどの人が持っていると 書いたがそれは事実からかけ離れていたのでここで訂正しておく。日本が7千万台とか9 千万台とかのようなのでアメリカは約2倍、潜在需要はもっとあると言えるのではないか。 ドイツ企業が出てくるのも不思議ではない。新聞報道でもこれから携帯電話料金の値下 げ競争になるだろうと言う論調が増えてきて、読者への調査結果では定額低料金の希 望が大半だそうだ。アメリカの携帯電話会社は中小の会社が多く、ATTもセルラーワン という会社を買収してから本格参加したくらいで、これから価格競争が進み、会社の整 理統合も進むものと思われる。このなかでやはりドイツ資本のT-Mobileが注目に値する。 GSM−GPRSでどこまでやっていけるのか?コンテンツはどんなものが出てくるのか? 今のところVerizonのVZWネットワークがMSNのコンテンツである以外は、各社とも着メロ、 ゲーム、写メール、待ち受け画面などしかなく、今年後半のアメリカ経済回復の起爆剤と してはやや心もとない。

次回はアメリカのビジネスITについてお話したい。


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