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◆ aかbかgか….無線LAN
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◆ 職場でも無線LANを使い始める

今年に入ってから筆者も会社の無線LANを使い始めた。各会議室にはテーブル中央にACコンセントとLANコネクタが付いているが、場所によってはいくつかのLANコネクタが死んでいることがあるし、LANケーブルをいちいち持ち運ぶのも面倒だった(日本からスリムなケーブルを持ち帰ってはいるのだが)。但し、筆者のノートPCはやや古いIBMの600Xなので、ACアダプターは持ち運ぶ必要がある。カタログでは2時間持つはずのバッテリーだが、実際は1時間ちょっとというところか。Back-to-back (連続した)の会議が2つもあると、ACアダプター無しでは仕事にならない。会社で昨年から採用しているT30には無線LANがPCIカードとして内蔵されている。今年中には、このT30かCentrinoのノートPCにアップグレードされることを期待している。そうすればACアダプター無しに、本当にノートPCのみを持って歩けば良くなる。アップルも今年はノートPCの年と言っているようなので、珍しくも今年は皆がノートPCの市場(おそらく唯一の儲かる市場)に期待しているようだ。企業が無線LANの付いた小電力のノートPCに切り替えていけば、それなりに市場は拡大していくと思われるが、個人用としてはまだまだ先の話ではないかと思う。それは「aかbかgか」の課題を考えても良く判る。

◆ 無線LANの標準化のゆくえ

無線LANのデファクト標準である802.11b(2.4Ghz帯)のスピードを越える、次の標準と目されているのが802.11aなのだが、aは5GHz帯を使うことから、米国内では国防省が軍用レーダーで使われる5.470-5.725GHzとの干渉を問題視していて, FCCの周波数の割り当てが進んでいない。

このため、業界団体では上院議員に依頼して、帯域幅255Mhzを割り当てるような法案を提出する方向で進んでいるようである。一方、更に次の標準(5月に承認予定)を目指している802.11gは、bと同じ2.4GHz帯を使用するため、このような問題が無く、正式標準を待たずに日本でも(メルコ)、アメリカでも(アップル)、製品を発表するところが相次いでいる。確かにgでは最大54Mビットの速度が出るので、bの5から10倍の速度だが、筆者の経験からして5Mビット以上の速度が絶対必要な速度(昔、モデムが56Kになった時はそれが絶対必要だったが、標準が浸透するまでにはかなりの年月を必要とした)とはまだ言えないだろう。

有線LANでも100Mビットのサービスをしている企業や家庭はまだ多いとは言えない状況で、次世代の標準がaかgかの戦いも、かなりの長期戦になるのではないかと筆者は思っている。そしてこれが(少なくとも)今年のノートPCの商戦には不利な状況であるとも思っている。つまり、一般大衆はaかbかgかは理解すらできないだろうが、企業のIT担当者にとってみれば、拡張性が有るのか無いのかは、採用時の基本的な問題であるからだ。この意味で802.11aの帯域割り当て問題が、5月以降にもつれ込むと、802.11gが俄然有利にならざるを得ないが、そうはならないだろう。

◆ PDAの無線LAN対応

一方、PDAはアメリカでは既に東芝をはじめとして無線LANを内蔵する形になって来ており、ソニーのクリエもやっとCFカードスロット(無線LANカードのみ使えるらしい)を搭載し始めた。PDAではCFカードを含めて802.11b対応の製品しか見当らないが、それでも消費電力がかなり大きく、実用で1から2時間といったところだ。今のところ、PDAの利用者で2時間以上ぶっ続けに使う人は、余りいないと思うが、802.11bチップの低消費電力が望まれる。とりあえずの対策として、外部バッテリーの利用とか取り外し可能なバッテリーにすることが、PDAメーカーで試みられているが、根本対策ではない。そういえば最近アメリカでCFカードタイプの無線LANカードが楽に手には入るようになった。ソニーのクリエのお陰である。このカードは珍しくIntel社製チップを使っているらしい。

◆ 企業内ネットワークの動向

今年は無線LANを中心にオフィスが構築される、とは筆者の友人である、LANシステム設計エンジニアの言葉だ。新しくLANを構築している会社は、まずダウンしないLANを目指しており、更にIP電話とか無線LANを組み合わせることにより、総合コストの低減を計ろうとしているそうである。このためLANを新しく構築依頼して来る会社が結構増えているとのことで、これがアメリカの景気回復の起爆剤になれば良いと思ったりしている。現在どこの会社でもLAN(サーバー)のダウンやLANが極端に遅いと言ったことを経験していると思うが、これはサーバーの配置が適切でないことが原因で、設計時点からredundancy(冗長度)を考慮に入れた設計をしておくことが基本だそうだ。

◆ 携帯電話もPDAも消える?

無線LANは携帯電話すら変える力を持って来た。ある予測では、3G携帯の次は無線LANを内蔵した携帯になるそうである。筆者の3G携帯(京セラ7135)は既にGPSを搭載しているので、無線LANを搭載すれば、もはやPDAを越えることになる。携帯電話会社最大手のVerizonは、先頃CDMA 1x EV-DOの計画を取り止めると発表している。EV-DOはデータ専用の回線になるはずだったのだが、噂によればそれは止めて、無線LANを導入すべく、動いており、通話機能はIP電話で行うらしい。もし本当であれば、携帯電話にIPアドレスを設定するわけだから、もはや携帯電話とは言えず、携帯端末というのがより正しい名称となるのではないか。まさに携帯電話が携帯端末(あるいは真の通信機器)になる日が近いとも言えるし、PDAと携帯電話の両方が無くなり、ひとつの新しい携帯端末に生まれ変わるとも言えよう。残念ながら、またしてもアメリカのほうが一歩進んでしまうことになるが、その方が(糸川博士のおっしゃったように)日本はびっくり仰天して、一生懸命マネをすることができるわけだから、それでも良いのではないかと思ったりする。



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