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◆ 日米の差はどこに(AIC)を読んで
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◆ プロスポーツの世界

筆者のアメリカで毎週読むウエブサイトの一つにAsahi Internet Casterがある。筆者のような海外住在の日本人の読者が多いらしいが、昔の週間朝日を思い起こさせる辛口の記事が多いせいかもしれない。この中で、元朝日新聞の記者が書いているゴルフを題材にしたコラムに、「日米の差はどこに」と言うタイトルで、日本のスポーツ選手がこぞってアメリカに来る傾向について触れられていた。筆者が常々提起しているテーマなのでここに紹介するとともに、この現象がスポーツ界だけなのかどうかについても考察してみたい。

これによれば、ソニーオープン(昔のハワイアンオープン)に、10人もの日本人プロゴルファーが参加していたとのこと。そして特筆すべきは、大学生ゴルファーで、卒業前プロ入り宣言した2人が入っていること(つまりプロ入り第一戦がアメリカツアー)が、今日の日米ツアーの関係を象徴的に語っているように思えたと述べられている。日本からアメリカに行く理由として、その賞金額の巨大な差とか、米国ツアーの回数が年間54試合もあるからとも説明されているが、結局は最後まで目を離せないゲームを展開するのが米国ツアーなのであると述べ、7位タイに入った丸山選手の談話でこう締め括っている。すなわち「まあ、ボクらにはボクらの人生がありますから。アスリートとして、より大きな舞台で、高い技術を競い合ってみたいし、強い選手と戦ってもみたい。仕方ないんじゃないですか。」 サッカーでも野球でも同じような談話を聞いた気がするのは筆者の空耳だろうか?そして最後まで目を離せないゲーム展開とは、日本で野球からサッカーに大衆の興味が移った理由と極めて似ている。筆者はこれを読んで、日本人もまだ棄てたものではない、このように既に日本のプロではあるが、日本のぬるま湯から出て、敢えて強者ひしめくアメリカで、人生の勝負をしようというのはプロとして当然であり、立派だ。 ゴルフだけでなくプロ野球そしてプロレスリング(WWF、今はWWEと称している)などでも、日本人プロが活躍している。この日本の不景気を良い機会として、もっと多くのプロやアマの日本人にアメリカ(海外)に来て活躍して貰ったらどうであろうか。これが日本の国際化の一助となることは、目に見えて明らかである。日本にいる子供たちは彼らの活躍を通じてアメリカでの生活など学ぶことになる。さてアマチュアは、そしてビジネス関係はどうなのであろうか。

◆ ビジネスの世界

ビジネス関連で、アメリカに来て、「ビジネスマンとしてより大きな舞台で、高い技術を競い合ってみたいし、強いビジネスマンと戦ってみたい」と言ったという話は、今迄聞いたことがない。科学者や技術者では今迄もかなりいた。ノーベル賞を貰った人のかなりは、アメリカでの研究がその元となっている。それもアメリカの大学や研究機関であって、日本の会社や大学ではない。ホンダやソニーは別にするとしても、日本の米国支社で、極めて日本的な環境で仕事をして、アメリカで仕事をしたといえるのだろうか?日本の政府はどうであろうか?政府官僚で、アメリカ政府官庁で働きたいとか、働いている人は果たして何人位いるのであろうか?国連で働いている日本人はかなりいるようだが、国連はアメリカではないし、日本は国連分担金のお陰で人事のポストがたくさん有ると聞く。第2次大戦後も、日本は政治、経済を根本から変える必要が無く(マッカーサーと朝鮮戦争のお陰と言う人もいる)、今日迄来ている。帝国主義から経済主義にお題目を変えただけで、明治時代と同じように、瞬く間に世界有数の経済大国になった。正に日本人の凝縮特性が発揮されたわけだ。しかし政治や経済は基本的には明治時代と変わりがない。

政治・経済関係で、このプロゴルファーのようなリスクを恐れず強い者に挑戦するような人材はいないのだろうか?日本の会社の現状は大手会社ほどひどいと聞く。現在のトップの方々はまだ戦前の教育を受けた方々であるから、軍事大国や経済大国といった大国事大主義から脱却できないのは当然とも言えるが、その下の事業部長や部長クラスの方々も今迄何ら自分の能力に挑戦することなく、上役にへつらってその地位に辿り着いたとすれば、(新しい方向への)会社の舵取りをする能力が無いのは致し方ないだろう。そしてトップに優秀な外国人を(一時的に)連れて来る位しか思い浮かばないのも、明治時代とちっとも変わっていない。今必要なのは、国際的に通用する次世代のビジネスマンを養成することではないか?次世代の政治家、官僚もアメリカ政府や官庁で仕事ができるくらいにする必要があるのではないか? 

◆ 世界に通用するビジネスマンや政治家よ出でよ!

極めてアメリカ的な会社に長い間働いてみて言えることは、仕事では日本語も日本人のセンスも全く通用しない。ただ、今迄培ってきた技術者の基本のみが日夜試されている。毎日他の技術者と競い合い、より高い技術と巡り会うというプロゴルファーと同じような環境で、気を緩めれば他に後れをとってしまう(すなわちレイオフに一歩近づく)ことになりかねない。プロジェクト・マネジメントや人事管理にしても、日本では考えられないくらい個人への責任が高い。仲間や上司を説得(英語で)する時、アメリカの高校や大学を出ていればもう少し楽だったかもしれない、といつも思う。アメリカも日本のことは、かなり研究しているし実践もしているので、会社でも時々なぜこんな日本的なことをするのかと驚くこともある。日本の会社は(アメリカの支社でも)特殊だというのは、最早アメリカ一般の常識に近い。先日もソニーアメリカ支社のマネジメントのアメリカ人が書いたソニーでの意思伝達とか決定方法が雑誌に載っていた。ソニーのアメリカ支社ですら日本的なのだから、その他一般の日本企業がどの程度なのかは、容易に想像が付くというものだ。日本はそのブランドネームで売り込みに成功した。今問われているのは、そのブランドにマッチした社会、政治そして経済の仕組みの近代化(すなわち国際化)であろう。プロゴルファーを見習うビジネスマンや政治家がいつかは出てくることを期待している。



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