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◆ どうやらaに勝負あったか?
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◆ 無線LAN規格の動向

以前、aかbかgか、とのテーマで無線LANの次世代の規格についてご紹介したが、どうやらaが次世代の規格として有利な状況になって来たようだ。

1月16日、802.11aの製品を作っている大手メーカーの製品がWi-Fi認定を受けたとの報道があった。今迄このWi-Fi認定を受けているのは802.11bの製品のみであるから、今回の認定は、次世代は802.11aと認定したに等しい。そして2月4日にはFCCが802.11aの周波数の拡大について、国防総省と商務省電気通信情報局が合意に達したと発表した。

この結果、使用出来る周波数が、従来の5.150 - 5.350GHz帯に加えて5.470 - 5.725GHz帯も使用可能となるものだ。6月のWRC(世界無線通信会議)で、世界共通に利用出来る周波数として提案され、最終決定されるそうだ。国防総省への妥協案として、電波障害を防ぐ手立てとしてはDFC (Dynamic Frequency Selection)を採用することとし、その帯域幅についても以前提案されていた値よりやや低い値とすることで合意がなされている。業界団体によれば、この提案が採択されれば802.11aの帯域幅は802.11bのそれと比較して4倍になると言っている。筆者は今迄なぜ802.11aの周波数割り当て拡大が、大きな問題であるのか良く解らなかったが、今回の合意内容でやっと理解出来た。高速接続であればある程、その帯域幅の広いことが重要になって来るのは、3Gケータイの例をみても良く解るし、現在の2.4GHz帯が既に非常に混雑しているので、将来の標準には出来るだけ広い帯域を用意するというのは尤もだ。

◆ 無線LANチップの動向

今年の802.11チップ製品の動向を、CentrinoブランドのノートPCを売り出すインテル社を例に取ってみると、最初の製品は802.11bのみで、Phillips製のチップを搭載したものが第2四半期に発表される。続いて802.11bと802.11aのコンボチップを搭載したものが第3四半期 から発売され、更に802.11bと802.11gのコンボチップを搭載したものが第4四半期に発売される予定だ。また他の大手の会社でも、コンボチップとして802.11bにaまたはgを搭載して来る所がほとんどらしい。これはどういうことかと言えば、今拡大しつつある無線LANの大半は802.11bであり、企業や一部の有料サービスがそれよりも高速であるaまたはgのサービスを開始するのは、早くても今年の後半以降ということである。企業が先行するとすれば、802.11aがその国際性や帯域で採用される確率が高い。もし個人が家庭で利用するのが先行するとすれば、802.11gがその価格からいって有利になって来るかもしれないが、54Mbps以上の高速接続をしている個人が無線LANカードの価格にこだわるとも思えない。その意味で比較的高価なマニア向けのMacがgを標準として来たのは面白い。

ところで日本では周波数が異なり4.9GHzだそうで、ここでも国際規格と合わせられない日本の弱みが出ている。もちろん5GHz帯への移行や帯域確保の話は出ているようであるが、業界の力量が試されている。もともと電波の使用について、日本では省庁の力が強すぎて世界の動向の後追いとなっているのは周知の事実ではある。

◆ 無線LANの利用料

無線LANのもう一つの強みは(少なくともアメリカでは)、3Gケータイのように電波使用料を政府に支払う必要がないから(ライセンスフリー)だそうだ。そのためアメリカでは商店街や貸しビルそして地方自治体までが、無料の無線LANスポットを構築し始めている。地方自治体では助成金がこのブームの牽引力ともなっているそうだ。企業誘致や商店街の再開発でも、無線LANが一つの歌い文句になって来ているらしい。 大手の携帯電話会社も、3Gの投資は見返りが少なかったとして、今はどんどん無線LANに力を入れ始めている。無線LANのコストは消費者にとっても、とても魅力的な内容だ。無線LANカードはかなり安く手に入るし、これから新しいノートPCやPDAを買えば、無線LANが内蔵されている。もし有料の無線LANサービスを使用するとしても、その料金は月30ドルと現在の不景気状況でも手が出る程度の低額で、携帯電話の料金よりはるかに安い。

◆ アメリカでは3Gケータイから無線LANにシフトした?

統計によれば、アメリカではコーヒーショップでのアクセスが46%、ホテルでのアクセスが23%、地域アクセスが12%となっていて、無料サービスもかなりを占めている(例えば地域アクセス)。またGartner Dataquestの予測によれば、公共アクセスは世界各地域とも2003年を1として2007年までに4倍に達するとなっている。そして今年2003年だけをとっても、その伸びは2倍以上と推定されているから、まあ2003年のIT業界最大のテーマと言っても良いのではないか?アメリカでは(既に何度も述べているように)、3G携帯電話から無線LANに完全に興味と焦点が移ってしまっているように見受けられる。

面白いことに、有料と無料の無線LANの違いはISPの接続(Back holeと呼ぶらしい)に料金を取るかどうかにかかっているらしい。無線LANそのものの構築と、その経費回収は余り問題になっていないようだ。一つの無線LANの範囲がそれほど広くはないのでその経費は余り多くないとも言える。

このような無線LANの急速な拡大を見越して、これからの技術についてもかなり研究開発が進んでいる。すなわち今後はあらゆるLANが自動的に接続され、現在のようにいちいち有線LANから無線LANへの切り替えとか、ホットスポットごとの切り替えなどでPCやPDAをアイドルモードにする必要がなくなるらしい。これは筆者が無線LANを使い出してからちょっと面倒くさいと思ったことなので、実現すればもっと無線LANの利用者が増えることに繋がるだろう。今年の無線LANの動向は(少なくともアメリカでは)大いに楽しみである。



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