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◆ アメリカでgが普及しない理由
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◆ アメリカでの無線LAN動向

またまた無線LANの話だが、何せ今はこれぐらいしか話題がないのだから仕方がないというか2003年の景気の動向も自ずと知れるというものだ。

無線LANは802.11bを標準として、アメリカではワイヤレス・アクセスポイントが急速に全米に拡大しつつある。中でも積極的なのがインテルとIBMそしてAT&TとT-Mobileだ。既にインテル、IBMそしてAT&Tが共同で出資して全米のホットスポットを繋ぐネットワーク運営会社(Cometa Networks Inc.)が設立されている。最近ではインテルとT-Mobileが共同でT-Mobileの高速ワイヤレス・インターネット・サービスをプロモートすると発表している。T-Mobileはスターバックコーヒー店でのワイヤレス・サービスを手掛けていることでも知られているが、ドイツテレコムの子会社だけあって、長期戦略はなかなかのものだ。面白いことにT-Mobileの主要ビジネスである携帯電話サービスは、GSM/GPRSであり高速といっても56Kbpsしかなく、CDMA 1xのオーバー300Kbpsにはとてもかなわないが、WAPや写メール程度であれば実用上問題ないだろう。

問題はそれ以上の高速データサービスが携帯電話に必要なのかどうかであり、無線LANをポートフォリオに取り入れることで、高速データサービスを50Mbpsに迄高めることが出来るし、これによって携帯電話を越えた携帯端末に移行することがかなり楽になる。T-MobileはポケットPCフォン・エディションをアメリカで発売している最初の会社であり、今年予定されている各種のポケットPCベースの携帯端末のいくつかはT-Mobileからリリースされると筆者は見ている。

◆ホットスポットの普及地域

さて、インテルの最近の調査によれば、全米トップ10のホットスポット都市圏は、第一位にポートランド(オレゴン州)で第二位にサンフランシスコ(カリフォルニア州)、以下オースティン(テキサス州)、シアトル(ワシントン州)、オレンジカウンティ(カリフォルニア州)、ワシントンDC(ワシントン州)、サンディエゴ(カリフォルニア州、デンバー(コロラド州)、ベンチュラ(カリフォルニア州)そしてボストン(マサチューセッツ州)と続く。西海岸が8カ所を占めているのが特徴だ。既に無線LANが一般化しているこれらの都市圏を中心として、これからの高速化とか、高速ワイヤレス・インターネット・サービスが発展していくのは間違いないだろう。

◆ aかbかgか?

これらの都市圏での無線LANサービスを見てみると、その殆どが802.11bが中心だが、802.11aもサービスしているところも、いくつかある。802.11gを既に取り入れたところ、これから取り入れようとしているところはまだ無いようである。なぜかといえば802.11gは、まだ正式リリースではないし、かつ現在無線LANに投資しているインテルを始めとする会社が802.11gをサポートしていないからと考えて良いだろう。

なぜインテルが当初予定されていた802.11 b/aのコンボチップセットを延期したのかのいきさつについても、技術的問題以外に、5GHzの帯域確保と国防省説得が必要だったためとも言われている。なぜこれ程迄に802.11aの帯域確保に執着するのかは、現在の802.11bの使用している周波数の帯域が狭く、かつ他の機器も同一周波数を使用しているための干渉や速度低下が予測されるためと言われている。従って同一周波数を使用する802.11gは将来的にはあまり期待できないとも言える。すなわち将来的にも公称54Mbpsが維持できるのか極めて疑わしいということであり、既にいくつかの802.11g使用レポートには最良でも20Mbpsで、最悪8Mbps位しかスピードが出ないと報告されている。ドラフト仕様のためかもしれないが、何やら初期の56Kモデムとよく似ている。

そして最大の問題は、802.11gが標準であるノートPCは、(現時点で)マックだけだという点であろう。インテルのCentrinoノートPCは、専用チップセットを使ってのみCentrinoという名称を使用出来る。専用チップセットは現在802.11bのみサポートし、802.11b/aコンボは第二期からになる。802.11gチップセットは来年2004年リリースの予定らしいが、マーケット担当者は、日本市場のみ今年中にはリリースしたいと言っている。これは日本では802.11aの屋外仕様が規制されているため、取り敢えず802.11gで高速化需要に対応せざるを得ないという特殊事情によるものらしい。当然、アメリカではこのようなことはないので802.11gのリリースを早める必要がない。

◆ 結局802.11gは普及しない?

これらの状況を考えると、802.11gが広く一般になるとはとても思えない。802.11gが使えるようになる今年末から来年にかけて802.11bが飛躍的に広まり、そのための混雑によるスピード低下が顕著となって802.11aに移行する人がかなり出て来ると思われる。もちろん無線LANカードを購入して使用する人もいるだろうが、ノートPCのみならずPDAでも無線LANカードはそのアンテナ部分の突起が災いして持ち運びが不便になってしまう。そのため無線LAN内蔵のノートPCとかPDAを購入する人が一般的だろう。

そうなると、無線LANの選択は、メーカーの推奨する802.11bもしくは802.11b/aコンボと言うことになる。マックファンは802.11gを選択出来るが、あくまでも個人ユース(自宅内無線LAN)に留まり、今の時期、有力なホットスポット運営会社が大多数ユーザーになるであろう802.11aに投資こそすれ、802.11gまでサポートするかどうかは、はなはだ疑わしい。これらの情報から筆者は少なくともアメリカでは802.11g普及しないのではないかと見ている。



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