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◆ eラーニングについて
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◆eラーニングとは何かと言われても?
アメリカでは、少なくともシリコンバレー辺りでは、eラーニングと言ってもあまりピン
と来ない。昔からこれに類することは当たり前のようにやって来たからだ。CBT(Com
puter Base Training) とかSPT(Self Pace Training)とか言われているものがそれで、
パソコンまたは端末を利用して簡単な教育やテストを行うものである。
アメリカの会社では(特に製造業では)仕事をするのに資格(Qualification)が必要
である。まずは安全教育と工場内立ち入りのための細かい規定の理解、そして業務
を遂行するためには初級、中級そして上級の各業務に応じた資格を取る必要がある。
これらの資格を得るために、従来は毎期クラスが設けられて、これに参加しかつ試験
に合格する必要があったが、今ではこれらは全てCBTに置き換わっているので、い
つでも必要な時資格を取ることができる。又このような資格は通常一年で期限が切
れるので、その都度資格を取り直す必要がある。そのためにもコンピュータ化が必須
であったわけだ。
◆自分の例
筆者の最近の例ではアリゾナ州の工場に来て仕事をする際、どのような資格が必要
か工場のサイトで調べて、必要な教育を(工場立ち入りの規定教育のみが必要だっ
た。後はすべて1年以内にカリフォルニア州の工場で教育を受けたものであったので
今回は不要であった)約1時間かけてCBTで終了して工場立ち入りのバッチをもらった。
自分の教育の履歴は会社の教育サイトの教育記録を見れば会社入社以来(実はコン
ピュータ化してからしかないのだが)の履歴が一覧となっている。もちろん誰の教育履
歴でも見ることができる。この方式はどちらかと言うと個人の便宜が主であって、会社
の利益は副次的なものである。日本のITの記事を見るとeラーニングと称するものを
売り込まんがために、会社の利益が表立っているうたい文句のようだが、これではう
まくいくはずがない。
◆もうひとつの例
もうひとつの私の例で説明すると、最近、新しいプロジェクトに参加したのだがプロジェクト・マネジメントの技能が少々欠けているように思われたので、トレーニングを受けたいと思って向こう6ヶ月以内のプロジェクト・マネジメント・クラスをサーチしたところ、どのクラスも地元では無い上に、3日間で600ドルもとられる。あきらめてSPTのクラスをサーチしたところ、無料のクラスがありプロジェクト・マネジメントの初歩から上級までマスターできるようになっていた。すぐに初級のトレーニングを受けたが、これが今言われているようなサードパーティのeラーニングのコースであった。1科目終わるごとに
試験があり、なかなか難しかったが、2科目までこなして一息ついた。コース自体は非
常に良くできていて、ハイパーリンクやヘルプが充実していて自分で回答が見つけら
れること。従来のクラスとコンパチであること、すなわちハンドアウトなどが印刷できるなど従来の教室でのクラスと違和感がない作り方になっていた。何より自分が必要だ
と思ったときに受講できるので、内容が直ぐに身につく、そして仕事の上ですぐ応用で
きることが何よりである。
◆企業での教育
すなわち企業での教育とは個人の技能向上が目的で、すぐ仕事に適用でき、結果が
すぐ判断できることが重要であり、そのためにeラーニングを導入して社員の便宜をは
かっているわけだ。会社で勤務中に技能不足、知識不足と感じた時、直ぐに勉強で
きることが要点でありその結果(効果)が上司を含めた周りから認識されることが重要
である。これを言うと皆さんは、何だアメリカでは目先の技能しか要求していないのか、と思われるかもしれないがそれは違う。5年後、10年後にどんな仕事をしたいかによっ
て上司と相談の上で、将来の仕事に備えた教育を受けることが出来るからだ。これは
人事考課の一環なので上司は将来のための教育を拒否することができない。これが
アメリカでのeラーニング(もしもこの言葉があれば)とも言えるべきものなのだが・・・。
◆技能と能力とは異なる
ちなみに個人の技能と能力とは違うものである。能力は潜在的なもので現在の環境
では発揮されていないか、あるいは必要ないものかもしれないが、技能は今の仕事
に欠くことのできないものであり、本人がその技能の向上に努めないと能力があるの
に仕事は出来ないという結果になる。使われていない能力に対して賃金を支払うアメ
リカの企業は無い。日本ではここの違いが判っていない会社がまだ多い。また直属の
上司が必要な技能について助言し、本人が必要と思っている技能との食い違いを訂
正することも必要である。本人が必要だとか改善すべきだと思っている技能でも、実は
今の仕事に対してあまり重要でないかもしれない。
◆師匠の真似で始まっても、超えれば独創となる
何度も言うようだがITの真似はできてもその本質や歴史的、文化的背景の理解なし
には真のITは実現しない。日本ではいつの時代でもアメリカの新しい概念の真似で終
わっているケースがほとんどである。その昔MIS(Management Information System)
とアメリカが言い出した当時も日本から政府調査団が派遣されてアメリカで大恥をか
いた顛末が菊地誠さんの本に詳しく載っている。聞くところによると、芸術の世界では、まず真似からスタートするのだがどこかで元(師匠)を追い越す時期があり、この時点
で真似から独創になるとの事。スポーツでも同じことが言えるだろう。
◆ノーベル化学賞の田中さんの場合は?
今回のノーベル化学賞の受賞者、田中さんはその意味で、はじめは大学留年、学卒、
43歳主任とやや平凡な履歴であるが、畑違いの分野で、その分野の人ならやらなか
ったであろうことに手を出して成功したと言う点で、どこかで独創的に切り替わったも
のと思われる。まあ東北大出身と言えば独創的な方は沢山おられるのだが、田中さ
んの経歴を研究することによって新しい世代の独創性がどこで生まれてきているのか
を知る糸口になるかとも思える。いずれにせよ、この人を今後どう処遇するのか、島
津製作所のトップの技量が世界から問われている。
◆アメリカならではのeラーニングの例
アメリカで交通違反を犯すと裁判所に呼ばれて罰金の上、反則によっては交通教室
に行かなくてはいけなくなるが、今ではこれらは全てオンラインで行える。即ち、裁判
所にも交通教室にも行かなくて良いのである。オンライン上で反則切符の番号を入れ
てやると、オンラインのドライバー・スクールにしますか?という質問が出て、はいと
答えると費用をクレジットカードで支払った後ドライバー・スクールのページに切り替
わる。このドライバー・スクールは大変良くできていて、早すぎるペース(つまり読ま
ないでページだけをめくるほどのスピード)では警告がでて元のページに戻ってしまう
。又一章終わるごとのテストもかなり難しく不合格(100点満点のみ合格)の場合ま
た元のページからやり直しとなる。筆者の経験では終わるのに一日2時間で4日ほどか
かった記憶がある。もっと面白いのは、このドライバー・スクールのリンク先に Speed
Trap というサイトがあって、このサイトではアメリカ国内のスピード違反を取り締ま
っている場所が緯度経度情報付(つまりGPSに入力しておける訳だ)で掲載されている。
このサイトを先に見ておけばスピード違反でつかまらずに済んだのだが、リンクされて
いるというのがなんともアメリカ的ではある。日本ではどうなのだろうか?
次回は第10回目記念、東芝Genio-e550Gの持つ可能性について
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