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なるほどテクノロジー
「キレイ」な写真を撮るための手ブレ補正技術を追う

「新三種の神器」などと言われる「デジタルカメラ」。
「キレイ」な写真を撮るために各社が熾烈な戦いを繰り広げている手ブレ補正技術に迫ってみましょう。撮影時には、誰しも気をつけるのがピント(焦点)です。これは通常のデジタルカメラであれば、撮影物が中央にあれば自動的にピントが合います。しかし、ピントはあっているはずなのに、なぜか画像がボケることがある…ということはないでしょうか?
画像全体がボケているといった場合、この原因は手ブレにあります。


画像がぼやけるのはなぜ?

デジタルカメラに限らず、カメラによる撮影は、瞬間を切り取っているように思いがちですが、実際わずかな時間、光を取り込んでいます(これを感光と言います)。この時間はカメラの機能である「シャッター速度」により自動または手動で調整されますが、周囲の光量に比べてシャッター速度が早すぎると十分な光を得られずに、暗い画像となってしまいます。そして1秒以下という短い時間とはいえ、この時間に手が少しでも動いてしまえば、撮影した像も歪んでしまいます。これが、ボケた写真、つまり「手ブレ」によってできる失敗写真です。


なぜ、手ブレ補正が注目されるようになったの?
■軽量化

重いカメラと異なり、軽いカメラは撮影時の静止が難しくなる。

■小型化

グリップ部分なども小さい分しっかりホールドしにくい、片手での撮影も多い
気軽に撮影する場面が多くなり、夜間など手ブレしやすい状況も多くなっている

■液晶の大型化

撮影時のプレビュー、撮った直後の確認など、視認性の向上により手ブレしていることがわかりやすくなった

■ズーム機能の搭載

ズーム高倍率時は、わずかな手ブレが大きな差として表れてしまう。


手ブレ補正技術
■検出

「1秒間に角度が何度動いたか」を検出するセンサーを角速度()センサーと言います。
これは、向きを検知することのできるセンサーで、カーナビでも現在の車の向きを検知して正しく表示するために利用されています。
このセンサーを縦横に組み合わせることによって、全方位をカバーし、どの方向にどのくらいブレたのかを調べることができます。

■制御

角センサーのアナログ情報をLSI側(処理回路)でデジタル的に制御します。また、検出された動きは意図するものなのか手ブレなのかといったことを判断して計算された量で実際の補正を行います。

■補正

センサーと制御によって手ブレの方向や量を認識したところで、もう一度手ブレの仕組みを思い出してみましょう。手ブレはシャッターを押してからのわずかな時間で起こる手のずれです。つまり、この時間の最初から最後までで感光する時の像が動かなければ良いということです。そこで手ブレ補正機能は、手ブレした「ズレ」の分を打ち消すようにレンズや可動式のプリズム、または撮像素子(CCDやCMOS)を角度・縦方向・横方向というように物理的に動かします。こうするとシャッターを押してから終わるまでが、出来るだけ同じ像を捉えるように制御されます。
デジタルカメラの場合は最終的に撮像素子が感光するわけですが、撮像素子にとっては手ブレが無かった時と同じ像が入力され、結果的に記録・保存される画像は極力手ブレが抑えられたものとなります。


まとめ

手ブレ補正技術を搭載するデジタルカメラはこのような仕組みを持ち、ユーザ側で意識することなく活躍しています。
今後も、デジタルカメラが発展を続けていく上で解像度といった画質だけでは無く「真を写す」ための技術、失敗しない画像を撮影するための機能を持つことが求められていくでしょう。

 

最近のデジタルカメラのキーワードは「スリム」、「大型液晶」、「プラスアルファの機能」を備えた製品となっています。
フラットボディ
普段からポケットや手提げカバンに入れておけるサイズ・フラットボディ
大型液晶
撮影時のファインダーや撮影後の画像確認などに視認性の高い大型液晶
機能
動画撮影機能、高倍率ズーム機能、手ブレ補正機能など

ズーム無し:ズーム有り
※角速度とは?
モノが回転すると、その速度方向と重力により垂直方向に働くという“コリオリの力“と呼ばれる物理現象を利用して検出します。
2台の電車が平行して走っているとして、その一方の窓から、もう一方の窓に向かって物を投げるとします。速度が同じだと、窓に届きます(等速直線運動)。手前側の電車が速く走っていると窓より後ろの部分に物が到達します。これに地球の回転と重力も計算したものがコリオリの力と呼ばれるものです。このコリオリの力は慣性と呼ばれる物理的な作用の1つですが、地球規模では非常に大きな力の差となって表われます。例えば、日本のある北半球では台風の渦が半時計周りとなる原因となっています。また雲や雨のほとんどが西日本から東日本へ流れていくのもこのコリオリの力が働いているためです。
角速度センサー

補正の仕組み
「バリアングルプリズム」。2枚のガラスに挟まれた液体を蛇腹で傾けることにより屈折の方向を変えて、手ブレを補正する
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