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なるほどテクノロジー
体の見張り番「体脂肪計」の謎に迫る

秋は食べ物が美味しい季節。あれもこれもとグルメを気取っていると気になってくるのが自分の体重。肥満が気になり、ダイエットしたいものの、やはり目の前の美味しい料理やお酒には、ついつい手が伸びてしまう。特に最近は体重だけでなく、体脂肪も気にしなくてはならないのがなんとも悲しい……。ところで、体脂肪はどうやって測定しているのでしょうか。脂肪だけを計るには、最先端の技術が投入されているはず。体脂肪計の仕組みはどうなっているのでしょうか。


体の中の脂肪分をどうやって測定するのか?

そもそも体脂肪とは名前の通り、体についている脂肪のことを表しています。皮膚の下にある「皮下脂肪」だけでなく、内臓のまわりの「内臓脂肪」、更には血液の中に入っている「中性脂肪」(血液検査などでTG値として表される)などなど。他にもコレステロールなどを含め、これらすべてが「体脂肪」と呼ばれています。
体脂肪率とは、体重1kg当たりにどれ位の体脂肪が含まれているのか、その割合を示している数値となります。つまり、
体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100
で、算出することができるのです。女性で30、男性で20という値を超えると肥満に注意と言われています。
では、体脂肪はどのように測定されているのでしょうか。現在のように、体重計のようにプレートに乗るだけで体脂肪が測れるようになったのは1990年代ごろからと言われています。それまでは体脂肪を計るには「水中体重法」という計測方法が取られていました。これは人が入れるような大きな水槽の中に人間が潜り、水槽内に置かれた体重計で、頭まで水に沈んだときの体重を測定するという、大がかりな方法です。

水中では、体はその容積分の水の重さを浮力として受けます。水中の体重と外の体重の差から体積が分かり、大気中の体重を体積で割ることで、身体の密度を求めます。水中体重法はその身体密度から体脂肪率を算出することで体脂肪を計測しています。しかしこの方法では、体脂肪を計るために、いちいち水槽に潜らなくてはならず、体への負担が大きい、おおきな設備が必要になるなど、気軽に計測できるものではありませんでした。


家庭でも簡単に測定できる「体脂肪計」の威力とは?

1991(平成3)年、世界で初めて、体重計と一体となった体脂肪計の試作機が登場しました。この試作機は「生体インピーダンス法」という、現在、国内で販売されている体脂肪計のほとんどが採用している方式で製作されました。「インピーダンス」とは「電気抵抗」という意味で、電気を通さないという脂肪の性質を利用しています。体内に微弱な電流を流して、体を構成する水分、筋肉、骨、脂肪のうち、電気を通さない抵抗を測定。その数値を脂肪の量として考え、体内の脂肪量を割り出すというものです。具体的には体重計の台上、両足を乗せる位置に設置された金属の板(電極)から微量の電気を体に流し、その電気の流れにくさ(つまり電気抵抗)を測定しているのです。この電気はごくごく微量であるため、体への影響はありません。ただしペースメーカーを利用している人は体脂肪計を利用しない方が良いとされています。
最近の体脂肪計では測定する前に年齢、性別、身長などを入力します。なぜなら各体脂肪計メーカーは、先述の水中体重法や、X線を利用したCTスキャンの断面図から体脂肪率を求める方法で、すでに大勢の人のデータを収集しており、そのデータと測定した体重、更には電気の抵抗値を組み合わせ、独自の計算式によって体脂肪を「推定」で割り出しているのです。体脂肪はあくまで「推定」であるため、同じ人間が同じタイミングで違うメーカーの体脂肪計で測定しても、違う体脂肪率が出てしまうことがあります。各メーカーが持っている過去のデータや計算式が違うために、計算の答えが変わってしまうというわけです。
体脂肪は推定であるため、毎日、継続して計測することが大切です。日々の体の状況をチェックして、健康的に美味しいものを満喫しましょう!



まとめ

これまでは体重と体脂肪が測れるものが主流でしたが、最近では、「内臓脂肪レベル」や「基礎代謝量」、「筋肉量」「骨量」といった数値も測定できる機器が人気を集め始めています。これにより体の総合的な組成をチェックできるようになってきました。
更に体脂肪計もこれまでの「電気抵抗」だけで測定するものから、複数の測定技術を組み合わせることで、精度を向上させる取り組みが始まっており、より正確な体脂肪率が分かるようになってきました。

 

     

一日の中で変化のある体脂肪率

体脂肪は一日の時間によって大きく変動しています。これは、人間の体の水分量や水分の分布状況が変化することによって起きます。実際の体脂肪量自体は、朝と夜で変動はしません。しかし、体内の電気抵抗は就寝中に上昇し、活動中は低下する性質があります。体脂肪率が変動するのはこのサイクルに摂取、摂水や運動、入浴による体内水分量の変動などが複合されて起こります。また生活リズムや仕事内容、ストレスの状態によっても一日の体脂肪率は変化すると言われています。


正しい体脂肪の測り方

体脂肪率は、微弱な電流を体に流すことで生じる「電気抵抗値」を基に算出します。この電気抵抗値は、筋肉の緊張度や伸縮加減、関節の角度、電極と皮膚の接触圧力の違いによって変化しやすい性質を持っています。そのため筋肉の緊張や関節角度が安定しない姿勢で測定すると体脂肪率に誤差が生じやすくなるため、無理のない自然な姿勢で測定するのが理想です。また毎日測定する場合、服装、時間帯、直前の生活状況においても同じ条件に整えることが良いとされています。食後を避け、素足で裸に近い状態で行うようにします。

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