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なるほどテクノロジー
ハイテク道しるべ「カーナビ」の謎に迫る

見知らぬ土地に行く際には、欠かすことのできない「カーナビ」。衛星からの電波をキャッチして自分の位置を把握しているらしいこと、更に最近では渋滞を回避する抜け道情報を教えてくれるなど、目覚ましい発展を遂げているらしいのですが、どうしてそんなことが可能なのでしょう。最新カーナビの謎に迫ります。


位置や渋滞情報をどうやって入手しているのか?

遠距離ドライブに欠かせない道具となったカーナビ。2005(平成17)年9月現在、累計2016万台が出荷されているなど(財団法人道路交通情報通信システムセンター調べ)、もはやカーライフには当たり前の存在になりつつあります。
カーナビはGPS電波を受信するためのアンテナ、地図データの記録されたディスク、テレビモニタ、これらを処理するコンピュータで構成されています。他にもクルマの速度を測定する「車速パルス」や、方角を確認するための「ジャイロセンサー」を併用しているタイプが多いようです。
カーナビは常に複数の人工衛星から電波を受信して、自分の位置を正確に割り出しています。そもそもGPSとはGlobal Positioning System(全地球測位システム)の略で、アメリカが軍事目的で開発したものです。航空機や船舶などを誘導するシステムとして利用されていました。
地上2万1千kmの上空を6つの軌道で回っている衛星は全部で24個あり、そのうち電波を発信しているのは23個、残り1個は予備として稼働しています。測位精度は1m以内の正確さを誇っていますが、悪用されることが無いように、わざと測位制度を落としているとのこと(30〜100m)。カーナビは23個の衛星のうち、最低3個の衛星を受信できれば自分の位置を知る事ができます。
もうひとつ、カーナビは渋滞情報を外部から受信しています。
VICS(Vehicle Information and Communication System)と呼ばれる仕組みに対応しているカーナビでは、渋滞情報をリアルタイムに入手でき、更にモニターの地図上でどの程度の渋滞なのかを確認することができます。最近のカーナビでは受信したVICS情報を活用し、渋滞からの抜け道を教えてくれるものもあるなど、進化を遂げています。


「パソコン」並のスペックを実現

近年、カーナビが最も進化を遂げているのが、地図データを収容している「ディスク」です。カーナビは衛星から取得した緯度、経度、高度データをもとに、今、自分が居る場所を地図上に描画しています。それに欠かせないのが地図データなのです。
カーナビが発売された当初、地図データを記憶させておくメディアはCD-ROMが主流でした。容量は約630MB。しかし、詳細な市街地図を入れようとすると、全国を網羅するには10数枚にもなってしまい、エリアごとに差し替えをしなければなりませんでした。
そこで登場したのが、CD-ROMの7倍の記憶容量を持つDVD-ROMです。数GBの容量があるため、詳細地図を入れても全国を1枚のディスクでカバーできるようになりました。しかも、DVDはCDより読み込み速度が10倍近く速いので、当然処理能力も速く、ストレスなくナビ操作ができるようになりました。
またCD-ROMでは2次元の平面的な地図しか表示できませんでしたが、容量が大きくなったことでDVD-ROMでは、ビルなどの建物の形状までも再現したり、立体交差の様子をきめ細かく表示するなど、より分かりやすいナビゲーションを実現できるようになりました。
ここ数年ではさらに進化を遂げ、上位モデルではDVDからハードディスク(HDD)が主流となっています。数十GBの容量を誇り、全国の詳細地図データだけでなく、音楽CDの音源をMP3ファイル化して、HDDにコピー。そのままクルマのなかで聴けるようにもなりました。
読み込み速度が一層、高速化され、ナビゲーションだけでなく、音楽も快適に楽しめるようになっているのです。



まとめ

これまで渋滞情報は、VICSセンターが都道府県警や高速道路を運営する会社などから情報を入手して、光やFM電波を使って配信していました。しかし、新たな取り組みも始まっています。
ある自動車メーカーが提供するシステムでは、クルマが今、走っている道路と速度を把握し、その情報を携帯電話などの通信網を使って、メーカーが設置するデータベースに蓄積するという仕組みを備えています。この新しいシステムに対応したクルマが普及し、何十万台というクルマが全国の道路を走るようになると、細かな渋滞情報がデータベースに集まることになります。次にその情報を、何十万台がダウンロードして共有することで、渋滞の影響を受けるクルマが格段に減ることになるのです。
これまで衛星やVICSなど、情報を受けるのみだったカーナビでしたが、自ら情報を発信し、共有することで、更に快適なドライブができるようになるのです。

 

     

「1画面2画像」に進化

進化を続けるカーナビ。最近、特に世間の注目を浴びたのが「1画面2画像」の表示できる液晶ディスプレイです。1枚のディスプレイだけで、運転席側からは道案内の地図画像、助手席側からはDVDの映画など、異なる映像を見ることができるものです。これは、液晶ディスプレイ上に「視差バリア」というものを設けて、バックライトからの光の向きを左右に分離させることで、2方向の異なる表示させるという仕組みになっています。カーナビの新たな使い方として普及しそうです。


「VICS」とは?

VICSとは、渋滞や工事などの情報を、財団法人日本道路交通情報センターから入手し、センターを経由して、通信や放送メディアを使って、クルマに情報を配信するシステムのことです。情報は、主に「光ビーコン」、「FM多重放送」、「電波ビーコン」と呼ばれる3つメディアからカーナビなどに配信されています。光ビーコンとは主要一般道路の前方30km程度先までの一般道の道路交通情報を、道路の5m上空に設置された装置から光に載せて配信しています。一方、FM多重放送とは全国にあるVICS-FM放送局から放出されているFM放送波に都道府県単位の交通情報を載せて提供しています。また、電波ビーコンは、高速道路に設置され、前方200km程度の高速道路の交通情報を電波に載せて配信しているものです。VICSユニットの累計出荷台数は1337万台(2005年9月末現在)となっています。


政府を中心として推進される「ITS」

カーナビの高度化や、VICS、自動料金システム(ETC)などが連携した新しい交通システムを総称して、ITS (Intelligent Transport Systems・高度道路交通システム)と呼んでいます。情報技術を用いて人と車両と道路を結び、交通事故や渋滞などの問題の解決をはかることを目的としており、1995(平成7)年から政府を中心に推進されているものです。今後はカーナビとVICS、ETCが連携し、「自動運転」といった、更に便利で快適なドライブが実現できるようになると見られています。


ジャイロセンサーとは

カーナビは複数の衛星から情報を元に自車の位置を割り出しています。しかしトンネルや立体交差など、空が見えない場所では、衛星からの電波を受信できないことあります。この場合、当然ながらカーナビは自車の位置が分からなくなっていまいます。そのような状況を回避するためにジャイロセンサーが活躍します。ジャイロセンサーとは、クルマに搭載されたコンピュータから車速のデータを受け取り、移動した距離を割り出して、地図上に表示するものです。これにより、トンネルなどでも誤差を最小限にして自車の位置を表示できるようになるのです。


更に精度を高めるDGPSとは?

通常のGPSでは、自分の位置を測定する場合、10m程度ずれてしまうことがあります。最近では、より精度を高める仕組みとして「DGPS(Differential GPS)」があります。これは、地上にあり、すでに位置が分かっている基準局という場所からFM電波などを飛ばし、衛星からの電波と併用することで、精度を高めるというものです。これにより5m程度までに誤差が軽減されるようになるのです。

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