「阿吽」「膏肓」「躑躅」――こんな難しい漢字には“ルビ”を振ってほしいもの。ルビとは、皆さんもご存じのように、漢字などに付ける振り仮名のことだが、どうして振り仮名をルビと呼ぶのだろうか?
意外なことに、ルビという言葉は宝石の「ルビー」に由来していると言う。
18世紀初頭まで欧米には活字の大きさを表わす一定の単位がなく、活字に宝石やその他の名前を付けてその大小を区別していたそうだ。例えば――
・ 4.5ポイント
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ダイヤモンド |
・ 5ポイント |
パール |
・ 5.5ポイント |
ルビー(英国) |
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アガット(=めのう、米国) |
・ 6.5ポイント |
エメラルド(英国) |
・ 11ポイント |
スモールパイカ |
・ 12ポイント |
パイカ |
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日本では活版の時代、通常、本文は5号活字、振り仮名は7号活字を使っており、この7号活字がイギリスで5.5ポイント活字とほぼ同じ大きさだったことから、振り仮名活字を「ルビ」と言うようになった。印刷の手法は活版、写植(写真植字)、DTPと移り変わったが、ルビは今もルビのまま。さしずめ、印刷の歴史の小さな証人といったところか。
さて、今度、ワープロソフト「Microsoft Word」を使う時、「フォントサイズ」の欄をクリックしてみてほしい。上から、8、9、10、10.5、11、12と並んでいるが、「10.5」だけ0.5刻みになっているのはなぜ? 実は10.5ポイントは、活版の本文組みに使われた5号活字に相当する大きさ。ここにも活版が名残を留めている。
※冒頭の漢字は「あうん」「こうこう」「つつじ」と読みます。
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