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ニッポン・ロングセラー考 〜やめられないとまらないスナック菓子の元祖 かっぱえびせん

小麦粉で作った「かっぱあられ」

♪やめられない、とまらない、かぁ〜っぱえびせん♪ あまりにも有名なこのCM。
えびせんは分かるとしても、なぜ“かっぱ”なんだ?
パッケージにもエビのイラストこそあれ、かっぱは登場しない……。

“かっぱ”の謎解きは、今から50年程前に遡る。
広島でキャラメルなどの飴菓子を作っていた「松尾糧食工業株式会社」。
この会社が現カルビー株式会社の前身である(※)。
戦前は米を製粉して菓子原料にするなどの加工を、戦中および敗戦直後は澱粉に
山菜を混ぜた団子などの代用食を作り販売していた。
ちなみに、この団子はよく売れ、行列ができたという。

米がまだ十分にない時代、「小麦粉であられはできないものか」と考えた社長の松尾 孝は、
その製造技術の開発に着手。1954(昭和29)年、小麦粉であられを作ることに成功した。
松尾は、当時、社会戯画で一世を風靡した“かっぱ天国”の作者である清水 崑画伯に、
シンボルキャラクターのかっぱの絵を描き下ろしてもらう。
商品名にも「かっぱ」の名前を付けて「かっぱあられ」と命名し、55(昭和30)年に発売。

かっぱあられには一番槍や鯛あられ、横綱かっぱなどのバリエーションがあったという。
鯛あられと横綱かっぱは、蜜がけしたほの甘い風味。子供のころ、西日本に住んでいた人の中には、
魚のカタチをした甘い鯛あられを食べたことのある人がいるかもしれない。

※正確にいえば、カルビー製菓株式会社 → カルビー株式会社となる。


55(昭和30)年に発売された「かっぱあられ」 55(昭和30)年に発売された「かっぱあられ」。この年、社名をカルビー製菓株式会社に変更。カルビーの「カル」はカルシウム、「ビー」はビタミンB1の略。食糧難であった当時、人々の健康に役立つ商品をという願いが込められている。
故・松尾 孝名誉会長
かっぱあられ、かっぱえびせんの生みの親、故・松尾 孝名誉会長。新製品開発に賭ける熱い思いは、昨年10月末に91歳で亡くなられる直前まで衰えることはなかったという。

かっぱえびせんの原点はえびのかき揚げ

64(昭和39)年発売当初のパッケージ

64(昭和39)年発売当初のパッケージ。エビの背中のところに「かっぱあられ」の文字が見える。130g入り50円。

69(昭和44)年から放映されたCM

69(昭和44)年から放映されたCM。「やめられない、とまらない」のCMソングが大ヒット。

かっぱあられ誕生後も、松尾の研究は続く。
彼には、ずっと製品化したいと思っていた味があった。
それが、小さいころよく食べたえびのかき揚げ。
少年時代、広島湾に注ぐ太田川で川エビを獲ると、母がそのエビでかき揚げを作ってくれたという。

大好物だったえびのかき揚げをお菓子に…。
アイデアマンの松尾は、魚を獲る時に網にかかる5〜8センチの小エビに着目した。
これといって使い道のなかった瀬戸内の海の幸を小麦あられに練り込んでみると……おいしい!
試行錯誤を繰り返し、64(昭和39)年、ついに「かっぱえびせん」が完成。
小麦あられ誕生から、ちょうど10年後のことだった。
商品名の「かっぱえびせん」は、かっぱあられの“えびせんべい”ということ。
つまり、かっぱえびせんは、いろいろなバリエーションを作ってきた
“かっぱシリーズ”の最終商品なのだ。

かっぱえびせんは発売直後から人気となり、
翌65年にはカルビー製品の中で売上げナンバー1に踊り出る。
この大ヒットで、同社は69年まで、ほぼ倍々ゲームの勢いで売上げを伸ばしていく。
あまりの人気に出荷が間に合わず、当時、新設された宇都宮工場では
建設中の工場内で生産したという話も残っているほどだ。

お菓子は甘いものという常識を打ち破った、塩味のかっぱえびせん。
発売6年後の70(昭和45)年には、カリフォルニア州ロサンゼルスにカルビーアメリカを設立し、
海外進出を果たした。

カルビーは70年のアメリカを皮切りに、タイ、香港、中国でもかっぱえびせんをはじめとするスナック菓子を製造・販売。写真は、価格は少し高めながら舌の肥えた香港人に人気の七味(左)と、中国の新BBQ味の現行品。   香港、中国かっぱえびせん

40年後の現在も主力商品の位置をキープ

パッケージの変遷
パッケージの変遷。写真左上より、81年、90年、99年と現行品。85年以降は、味の劣化防止に有効なアルミ蒸着フィルムを採用。
隠れキャラ
かっぱえびせんのパッケージに登場した隠れキャラ。写真は98年の「シャンパンゴールドの携帯電話を持っているえび」(左)と「ワイングラスを持っているエビ」。

今回の取材で、カルビー製品の「年度別の売上げベスト3」という資料を見せていただく。
60年から現在に至るまで、カルビー製品の中で何が売れたかを、一覧表にまとめたものだ。
かっぱえびせんが発売翌年に1位となったことは前述の通りだが、
77年にポテトチップスにその座を譲るまで、なか2年を除いて12年間も1位をキープしている
(72年には仮面ライダースナック、74年にはサッポロポテトバーベQ味が1位)。

そして、その後のかっぱえびせんの順位は――
・77〜79年には2位(1位は75年発売のポテトチップス)
・80〜98年には3位(1位2位はポテトチップスうすしお味、あるいはコンソメパンチ)
・99年からは4位(1位うすしお味、2位コンソメパンチ、3位じゃがりこサラダ)
徐々に順位を下げてはいるものの、毎年数多くのスナック菓子が発売されては消えていくなかで、
40年たった今も主力商品の一角を占めているのは立派。
子供から大人まで幅広いファンを獲得している証しだろう。

とはいっても、定番の1商品だけでこの売上げを支えてきたのではない。
嗜好品であるスナック菓子には目新しさやお楽しみ感も大切だ。
カルビーでは、86(昭和61)年の「フレンチサラダ」を皮切りに、数多くの味のバリエーションを発売してきた。
例えば「こんがりマヨ味」は、かっぱえびせんにマヨネーズを付けて食べるという
ユーザーの声をヒントに開発された商品。
また、冬のクリームチーズ、紀州の梅などの期間限定商品、地域の味を生かしたエリア限定商品も多い。

楽しさの演出としては、96年から4年間続いた「えびせんりゅう」がある。
パッケージに12種類の川柳のどれかが掲載されているもので、
97年からは川柳にちなんだエビの隠れキャラも登場。
隠れキャラはカルビーだけでなく、まゆげの付いたコアラが入った「コアラのマーチ」や
犬の足跡の付いた「マーブルチョコレート」などがあり、
一時、女子高生やOLの間でブームとなった。

※右に掲載した過去のパッケージ製品は、現在は発売されていません。


真面目なモノづくりがおいしさの秘密

1才からのかっぱえびせん
「1才からのかっぱえびせん」。現在の販売エリアは北海道、中部(静岡を除く)、近畿、中四国、九州だが、3月には全国発売される。コンビニでは販売していない。  
 
カップ入りかっぱえびせん  
カップ入りかっぱえびせん。カタチは、かさばらない小さな四角形。石垣島の天然海塩使用と食塩にもこだわった。

全日本菓子協会が発表している資料によると、お菓子の生産額は
93(平成5)年の2兆5977億円をピークに漸減している。
これはバブル崩壊はもちろん、少子高齢化や個食化、健康指向など、時代の変化による影響も大きい。
特に少子化は菓子業界にとっては頭の痛い問題。
現状では、子供という小さなパイを、スナック菓子だけでなく、
カップラーメンやファーストフード、コンビニのおでんや肉まんなどと取り合っている。

かっぱえびせんも、そんな時代の変化に対応して、新しい切り口の商品を発売。
その一つが「1才からのかっぱえびせん」。
元々かっぱえびせんは、天然えびを丸ごと使ったカルシウム豊富な商品だが、
「1才からの」では、さらにえびの練り込み量をアップ(カルシウムは1袋10g当たり33mg)。
そして塩分はかっぱえびせんの2分の1に、食塩や油の上掛けもしていない。
大人が食べると少々物足りないが、子供には安心な一品となっている。

もう一つの新製品がカップ入りのかっぱえびせんだ。
カッブ容器は、「じゃがりこ」で初めて採用し大ヒットしたものだが、昨冬からはかっぱえびせんでも展開。
鞄に入れてもつぶれない、おしゃれに食べられる、 車のカップホルダーにも置けると、
容器の評判は上々だ。

最後に、スナック菓子の元祖ともいえる「かっぱえびせん」が売れ続ける理由を広報ご担当に伺った。
「カルビーでは、どの商品も手を抜かないで真面目に作っています。
かっぱえびせんも、もっとおいしくならないかという研究を常に行っているんです。
例えば、エビは一番おいしい産卵期の5〜8月に漁獲して急速冷凍。
このエビを年内を通じて原料にしています。
解凍すれば、お刺し身でも食べられるくらいの鮮度なんですよ。
基本的には発売当初の味を踏襲していますが、
冷凍技術の進歩や流通のスピード化によって、製品は改善されています」。
やめられない、とまらないあの味の陰に、“もっとおいしく!”を追求する企業努力があった。

取材協力:カルビー株式会社(http://www.calbee.co.jp/
※ メインとプレゼント以外の写真は、カルビー株式会社からの提供です。

「かっぱえびせん紀州の梅」と「かっぱえびせんほんのりわさび味」   季節限定の「かっぱえびせん紀州の梅」と「かっぱえびせんほんのりわさび味」。ほんのりわさび味は3月22日発売。



かっぱえびせんのできるまで
かっぱえびせんはノンフライ。焙煎した後、適量の植物油を吹き付け、味や舌触り、喉越しにまろやかさを出している。原料を混ぜ合わせてから袋詰めまで約3日間で完成。

●原料 ●蒸練 (じょうれん) ●圧延 ●成形 ●焙煎 ●味付け ●袋詰め
原料 蒸練 圧延 成形 焙煎 味付け 袋詰め

瀬戸内や中国などで水揚げされるキシエビ、アカエビ、サルエビなどの天然エビを丸ごと使用。これに小麦粉、水を混ぜ合わせる。

蒸気で蒸しながらこね、小麦のもち生地にする。

 

もち生地になった原料をローラーで薄い板状に引き延ばす。

 

かっぱえびせんの大きさに細長くカット。

カリカリに煎り上げる。

植物油と食塩などを振りかける。

自動包装機で袋に詰める。1袋(100g)に約200本のかっぱえびせんが入っている。


撮影/海野惶世(メイン、プレゼント) Top of the page

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