実際にはどのような仕組みで授業が行われているのだろうか。大学との授業が行われるプレゼンテーションルームを案内してもらった。
機能的にレイアウトされた円形のデスクが並ぶ中、まず目に付くのは何枚もの大型スクリーンと、部屋の隅に置かれた2つの不思議なカメラだ。いったいこれらをどのように使うのだろう。
「例えば、中央大学の多摩キャンパスで行われているメディア授業をここで受講しているとしましょう。スクリーンには教授の授業がリアルタイムで映し出されています。教授の動きは、先方のカメラが自動追尾します。一方、こちらの学生の様子は、この角突きのカメラが常時捉えています。角の部分に人間の声に反応するセンサーが付いており、学生が発言しようとするとカメラが瞬時にそちらを向き、ズームアップする仕掛けになっています。もうひとつのカメラは魚眼レンズを搭載しているのですが、電子的に歪みを補正して、常に見やすい映像を先方に提供しています。もちろん、これらのカメラはコンピュータによってコントロールされており、システム全体はネットワークサーバーによって集中管理されています」
なるほど。これなら対面授業を受けているのと感覚的にはほとんど変わらない。多摩にいる教授から見れば、目の前にいる学生と同じように、小金井で自分の授業を受けている学生の姿がスクリーン上に映し出されているわけだ。小金井の学生を指名して質問することも簡単にできる。こうなると物理的な距離も心理的にはゼロに等しい。
逆にこの教室から遠隔地に授業を発信する場合でも、先のカメラが自動追尾してくれるので、先生は自分の動きをまったく意識せずに済む。しかも、すべてのシステムはあらかじめプログラミングされており、先生が細かな調整を行う必要もない。授業の前にスイッチを入れるだけでいいのである。
「教える方、教えられる方の双方が体温を感じられるようなコミュニケーション環境を作りたいと考えています。そのためには特別な操作が必要なシステムであってはいけません」
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