かしこい生き方を考える COMZINE by NTT コムウェア

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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.014 指に寄り添うフォークとスプーン
 

欧米からやって来た日本びいきの客人を蕎麦屋に連れてゆくほど困ることはない。そばを音もたてずに食べるのは容易なことではないし、第一美味くない。だから構わずいつもの調子でズルッズルッとやると、こちらが食べ終わっても相手はまだ半分も済んでいない。
箸はそばを手繰って高く持ち上げて、ほぐしたヤツを口へ運ぶまでが役割で、あとは一気に吸い込むしかない。これを途中で噛み切ってしまっては汁の中に切れ端ばかりが残って始末に終えない。どんぶりと箸一膳で細切りのそばを扱うところに、そばの食い方の型が生まれる。

道具の形というものは、その目的と使用機能によって半ば自動的に決まるようだが、実際にはしきたりや作法、あるいは習慣といった文化的側面によるところが大きい。特に食事に関連する道具類はその好例で、道具の形が先にあって、その扱い方をやかましく教え込まれることで、動作の型を習得する仕掛けになっている。
スプーンやフォークの柄がまっすぐなのは、もともと柔軟性の乏しいこの道具を、ナイフとともに両手の指先でくるくると自在に扱い複雑な仕事をさせるためである。一定の持ち方を想定するなら、例えば離乳期の幼児用ベビースプーンのように違った形が考えられる。
この、波型の柄を持ったスプーンとフォークのシリーズは、人差し指と親指で軽くはさむように持つと、ぴったりと指に寄り添うようにデザインされている。実際に持ってみると薄く、軽く、ほとんど持っている感覚がないほどバランスが良い。もともと指の動きに制約があるとか、握る力が弱いなど、何らかの不自由を持った人を想定して、力を入れずにしっかりホールドできるようにデザインされている。
しかし、一般の日本人が洋食器を使う場合も、日常的には利き手に持ってすくう動作がほとんどなので、この形はなかなか具合が良いのである。フルセットのカトラリーを必要としない日本の家庭料理用として、進化の過程にあるスプーン、フォークなのかもしれない。

株式会社コラボ ウェーブ

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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