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淡麗辛口の味わいが楽しめる「ワンカップ大吟醸」。180ミリリットル。参考小売価格は税別247円。 |
「ワンカップ純米酒」は飲みやすく値段も手頃。200ミリリットル。参考小売価格は税別190円。 |
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軽量紙カップタイプの「上撰金冠ワンカップコンパクト」。180ミリリットルで参考小売価格は税別211円。 |
人気の「ワンカップブラック」は甘さと辛さのバランスが絶妙。200ミリリットルで参考小売価格は税別150円と値段もリーズナブル。 |
現在、日本酒の市場規模は全体で約380万石(1石=180リットル)ほど。カップ酒はそのうちの約30万石を占めている。約380万石という数字は、1973(昭和48)年のピーク時に比べると半分ほどに過ぎない。ここ10年ほど、日本酒市場は緩やかに縮小しているのだ。アルコール飲料の多様化、若い層の日本酒離れ、日本酒特有のネガティブなイメージ等々、理由は多々あるが、どのメーカーも現状を打破できるような対策を打つまでには至っていない。
93(平成5)年に販売のピークを迎えたワンカップ大関も、その後は徐々に販売本数を減らしてきた。それでも、依然としてカップ酒市場で約4割弱のシェアを確保しているのはさすがと言うべきだろう。
ワンカップ大関は、多様化する消費者の嗜好の変化に合わせて、次々とファミリーを拡大してきた。スタンダードな「上撰金冠ワンカップ」を中心に、「ワンカップ大吟醸」「特撰
しぼりたて純米」「ワンカップ純米酒」「ワンカップコンパクト」等、年を追ってバリエーション商品を追加。今ではトータルで約30種類ものラインアップを揃えている。
もちろん、1ブランドでこんなフルライン戦略を取れるのは、ブランドが確立しているワンカップ大関だからこそ。数え切れないほど多くのカップ酒が売られるようになった今でも、市場におけるワンカップ大関の存在感は抜きん出て大きい。
最近のヒット作は、多くのメーカーがしのぎを削る200ミリリットル市場に投入した「ワンカップブラック」。意表を突くブラックラベルを採用し、消費者に強烈な印象を与えた。製品の評価も高く、大関は先行メーカーに奪われていたこのジャンルのシェアを取り戻すことに成功した。
ユーザーニーズを的確に捉えた商品開発を進めた結果、ワンカップ大関は前年実績を上回る水準の売り上げを確保している。日本酒全体が低迷している中にあって、ワンカップ大関の健闘は業界全体にとっても明るい話題といえそうだ。
これからのワンカップ大関はどのように展開していくのだろう。3年ほど前にちょっとしたカップ酒ブームのようなものが起こったが、カップ酒の種類が増えただけで、ワンカップ大関の売り上げは変わらなかった。市場規模もほとんど変わらず、メーカーが期待した女性層や若年層の取り込みにもつながらなかった。
焼酎やワインのように、規模の大きなブームをカップ酒に期待するのは難しいかもしれない。だが、市場活性化のためのヒントはありそうだ。そのひとつが40歳代のマーケット。かつてのワンカップ大関を支えた層より一世代下にあたるこの層は、日本酒にそれほど抵抗がない。また、韓国や台湾など、日本酒が人気を集めているアジア圏を始め海外市場へ進出するという手もある。
誕生して44年、好調な時もあれば苦しい時もあった。かつては若者の酒として大人気を誇ったが、今はオジサンが飲む酒というネガティブイメージを背負わされている。
それでも、“元祖カップ酒”という大きな看板を背負った日本酒の革命児は健在だ。市場を牽引するカップ酒は、ワンカップ大関をおいて他にない。歴史はまだまだ続くのである。
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