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共立製薬株式会社 営業本部
コンパニマル薬品営業部次長 桜井雅樹さん。
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これがマイクロチップ(商品名「アイディール」)。サイズはインディカ米を一回り大きくしたくらいで、極めて小さい。
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埋め込みに使う専用の注射器(商品名「アイディール」)。先端からマイクロチップを押し出す仕組みだ。
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番号の読み取りに使用するリーダー(商品名「アイマックス」)。電磁誘導を利用してマイクロチップに電力を発生させる。
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今、日本ではどのくらいの数のペットが飼われているか、ご存じだろうか? ペットフード工業会が行った「第15回(平成20年度)全国犬猫飼育率調査」によると、飼育率から推計される飼育頭数は、犬が
1,310万1,000頭、猫が1,373万8,000頭。犬と猫だけでも、15歳未満の子供の数を超えているのだ。
その一方で、年間約34万頭の保健所等に保護され、そのうち約30万頭が処分されているという現実がある。この中には、何らかの事情で飼い主とはぐれてしまい、迷子になったペットが相当数いると見られている。
飼い主にとって、ペットは大切な家族の一員だ。我が子同然に可愛がっているペットがある日突然姿を消したら、どれほど悲しいことだろう。迷子や逸走ばかりではない。地震などの災害、不慮の事故、盗難など、ペットが飼い主とはぐれてしまう機会は思いのほか多い。
更に、はぐれたペットが発見・保護されても、「どこの誰に飼われているのか」という身元証明がなければ、無事に飼い主の元へ戻るのは難しい。そのため多くの飼い主は、ペットの名前や自分の連絡先を書いた迷子札やIDペンダントを首輪に付けている。
迷子札の効果は大きく、行方不明になったペットが戻って来たという話をよく聞く。だが、頼りの迷子札も外れてしまえばお手上げだ。誰かがペットを発見してくれたとしても、飼い主を探す手だてはほとんどない。
マイクロチップは、行方不明になったペットの身元確認を行う最も有効な方法と考えられている。それはどんなもので、どのように使うのだろうか? 国内でトップシェアを持つ共立製薬株式会社の桜井雅樹さんにお話を伺った。
「マイクロチップは、動物の体内に埋め込んで使う個体識別用の電子機器です。当社が扱っているのはスイス製の『アイディール』という製品で、大きさは長さが13ミリ、直径が2ミリ。細長いカプセル状で、中にはIC(電子回路)とコンデンサー、そしてアンテナの役目をする電磁コイルが入っています」
マイクロチップのICには、世界で唯一の番号が記録されている。この番号は書き換えることができないため、確実な個体識別が可能だ。また、全体が生体適合ガラス(鉛を含まないガラス)やポリマーで覆われているため、安全性が高い。耐用年数も25〜30年と長いため、犬や猫なら生涯にわたって認識できる。
「このマイクロチップを、専用の注射器を使ってペットの体内に埋め込みます。埋め込みは獣医療行為ですので、獣医師しか行えません。犬や猫の場合、埋め込む場所は背側頸部の皮下5ミリから1センチ程度。痛みは普通の注射と同じくらいですね。個体差はありますが、犬は生後2週齢、猫は生後4週齢くらいから処置できます」
体内に埋め込むわけだから、当然ながら迷子札のような脱落の心配がない。素人が簡単に取り外せないので、盗難にあった場合の身元証明としても心強い。
番号を読み取る際は、専用のリーダーを使う。リーダーから発信される電波が電磁誘導によってマイクロチップ内のコイルに電力を発生させ、番号をリーダーに伝送する仕組みだ。そのため、マイクロチップ本体は電源を必要としない。
この仕組み、どこかで聞いたことがないだろうか。そう、これは電子マネーに使われているものとほぼ同じで、いわゆる電子タグ(情報を書き込んだ小型チップ)の応用例にあたる。物流の商品管理や図書館の蔵書管理、食品トレーサビリティーなど、産業の幅広い分野で導入が進んでいる電子タグは、こうした形でペット業界にも導入されていたのだ。
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