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ユニバーサルデザイン 益田文和
さりげなく見えて頼りになる明かり
 

最近では日常的に停電するということがなくなったので、家庭や職場で懐中電灯を使う機会もめったにない。災害時の備品として置いてあっても、普段使わないのでいざという時に役に立つかと考えると心もとない。被災した時すぐ手に届くところにあるだろうか。いざ点けようと思った時に電池が切れていて点灯しないなどということはないだろうか。かといって、用もないのにいつも懐中電灯を枕元に置いておくのも無粋である。あの、いかにも非常時のもの、といった大仰なデザインがいただけない。ところが、一方でいつでも手の届くところに明かりがあったらよいとも思う。夜中にトイレに起きた時や、病人を起こさずに様子が見たい時など、辺りをくまなく照らし出す強力なヘビー級のフラッシュライトなどではなく、むしろ優しい光が見たいところまでしっかり届くライト級のランプが欲しいと思うのだ。
このLEDランプ、プラスチックを一体成型したシンプルな構造で、軽くて一見頼りないが、実はポリカーボネートという、飛行機の窓や機動隊の楯にも使われるくらい丈夫な素材でできており、ちょっとやそっとでは壊れない。光量は決して大きくはないけれど、LED特有のまっすぐ飛んで行く明るい光が、乳白色半透明のセード部分で拡散されたり透過したりして、きれいな明かりを生み出す。手に持つばかりでなく、伏せても、立てても、転がしても使えるので、さまざまな使用状況に柔軟に対応するだろう。明るさはhigh/lowの2段階に切り替えられ、lowで使えば単4アルカリ乾電池4本で30時間連続で使えるから、非常時にも安心だ。
こういう、何がおきるか分からない時のために多様な使い方ができるように備えておくのもユニバーサルデザインの大切な要件なのである。

LEDポリカーボネート懐中電灯/無印良品

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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