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特命捜査 第49号 服を「情報化」するオンラインクローゼット 「パソコンの中にクローゼットがあるみたい」

あふれた洋服はオンラインクローゼットに

ドレスファイルのホームページ

ドレスファイルは、洋服のクリーニング・保管・宅配を行うオンラインサービスだ。

サービスの流れ

預けたい洋服やブーツを宅急便で送ると、すぐにクリーニングし、空調完備のアパレル専用倉庫で保管。自宅や外出先に宅配でお届け。

ドレスファイル_西さん

株式会社ドレスファイル 社長 西 宏司さん。

空調完備のアパレル倉庫

空調完備のアパレル倉庫なら、高温多湿の日本でも安心して預けることができる。

アイテムを管理するタグ

クリーニングから保管まで、すべて同じタグで管理される。

お届けの形態

お届けの箱は、ジャケット類をたたまずに梱包できるオリジナル。シワになりにくい。ハンガーに掛かったまま届くので、そのままクローゼットに保管できる。

服がクローゼットに入りきらず、困っている人はいないだろうか。あるいは夏の間にブーツにカビが生えてしまったとか…。そんな人の要望に応えるサービスが、株式会社ドレスファイルが提供する「オンラインクローゼット」だ。同社社長の西 宏司さんにお話を聞いた。

「オンラインクローゼットサービスは、洋服のクリーニング・保管・宅配をワンパッケージにしたオンラインサービスです。預けたい洋服やブーツを宅急便で送っていただき、クリーニング。それを1着ずつデジカメで撮影し、空調完備のアパレル専用倉庫に保管します。撮影した写真は、本人だけが見られるWeb上の『マイコレクション』に表示されます。必要な時に写真をクリックするだけで、自宅や外出先に宅配でお届けします。いつでも1着ずつ取り出すことができ、自宅まで届けるところが、他のサービスとの大きな違いです」

シーズンオフの間、クリーニングした服を保管するサービスは2003年頃から登場している。春や秋という衣替えの季節にまとめてクリーニング店に預けると、クリーニング後、約6ヶ月間保管し、その服が必要になる季節に返却してくれるというもの。クローゼットに余裕ができるので、家のスペースを有効に使えると好評だ。しかも、料金は無料か、1着200円程度。大手チェーン店からネット専門のところまで、多くの企業が参入しているサービスだ。

このサービスがなぜ料金を安くできるかといえば、衣替えのシーズンに集中するクリーニングの依頼を、いわば「納期延長」することで、閑散期に作業を行い、工場や人手を効率良く稼働させることができるからだ。
ただデメリットもある。依頼したクリーニング品が、急に必要になったという場合、1点だけ返却してもらうことが難しいことや、クリーニングが終了していないかもしれないこと。また、長時間クリーニングされない場合、シミなどがとれにくくなってしまう可能性もあることだ。

西さんは「シーズンオフの預かりは、割り切って利用する分には、お客さんにも工場にも双方にメリットがあるので良いサービスだ」と話す。

一方「オンラインクローゼット」は、文字通り、Web上に自分のクローゼットを持つ感覚に近い。服の管理をトータルにサポートしてくれるという点で、クリーニングに付随したシーズンオフの預かりサービスとは、コンセプトが異なるかもしれない。いつでも1着から最短1日(倉庫は土日が休みのためオーダーの曜日、時間、配送場所によって変わる)で返却されるので、季節もののほか、パーティ用の服や礼服など、年に数度しか着ない服などにも適したサービスといえる。遠隔地で結婚式がある時などには、指定の場所に送ってもらうことも可能だ。

保管料は1着1カ月290円。例えば冬物を30着預けると1カ月8,700円になるが、それで自宅のクローゼットはゆったりと使えるようになる。トランクルームなどに近いイメージだが、保管は空調完備のアパレル倉庫なので、高温多湿に弱いデリケートな服も安心だ。

「このサービスは、ニューヨークで行われているセレブ向けオンラインサービスをヒントにしたものです。ニューヨークでは、ファッションコーディネートやイメージコンサルティングなどを組み合わせた、コンシェルジュ的サービスでした」

西さんは、このニューヨークのサービスをヒントに、家が狭く、湿気が多い日本向けに、一般の人から服を預かり、保管するサービスとして作り上げたわけだ。


大切な服だからこそ高品質クリーニングで

ドライクリーニング洗濯機

洗濯機は同じだが、使用する洗剤は高性能なものを使用している。

手作業でアイロン掛け

アイロン掛けは職人さんによって、1枚ずつ手作業で行われている。

ブーツは水洗いで

ブーツは水洗いして汚れを落とすことで、カビを防ぐことができる。

ドレスファイルのオンラインクローゼットサービスのもう一つの特長ともいえるのが、クリーニングの質の高さだ。

ドレスファイルでは、クリーニングや保管業務は、関連のクリーニング工場、毛皮専門のクリーニング、アパレル専門倉庫など、それぞれの専門業者にアウトソーシングで依頼しており、それが品質の高さにもつながっている。
関連会社で行っている一般のクリーニングでは、生地を傷めにくい上質な洗剤を使用し、また必要なものには、手洗いでクリーニングを行っている。更に、アイロン掛けも機械ではなく、1点ずつ手作業で行う。染み抜きなども、納得できるまで行っているそうだ。

「クリーニングにそこまで手を掛けられるのは、時間に追われていないからということに尽きます。一般のクリーニングでは、翌日とか3日後とか、返却日が決まっているので、時間が限られますが、オンラインクローゼットでは、すぐに使用するということはほとんどないので、しっかりクリーニングに時間を掛けられるのです」

シミなどを発見した場合には、どんなシミかを電話でユーザに問い合わせることもあると言う。更にボタンのほつれ、ブーツ底の修繕など、必要と思われるものもユーザに確認して、別料金で補修を行うといったサービスもしている。ブーツもしっかりと水洗いして汚れをとり、空調の完備された部屋で保管するため、夏の間にカビが生えたりすることもない。

こうした丁寧な仕事が評価され、会員の中には、保管サービスは利用しなくても、クリーニングだけ依頼する人も多いという。大切な洋服には、お金と時間を掛けても、しっかりクリーニングを行いたいというニーズにも応えるサービス内容なのだ。

ちなみに、クリーニング料金は下記のように設定されている。

スカート 700円〜
ジャケット 1,100円〜
コート 1,900円〜
ワンピース 1,400円〜
ブーツ 4,900円〜
バッグ 4,000円〜

クリーニング料金として安くはないが、質を考えれば納得のいく価格だろう。更に、集配料金が1回700円となる。写真3カットの撮影や、Webサイトへの掲載は無料だから、その手間を考えると、むしろ安いといえるかもしれない。


情報を共有するための写真撮影

1着ずつ撮影

クリーニングの終わった服は、1着ずつトルソに着せて撮影される。前、後ろ、特徴のある部分の3カットを撮影。

MyCollection_1

本人だけが見ることのできる「マイコレクション」。預けているアイテムを一覧できる。

MyCollection_2

アイテムごとの情報。ブランド名はドレスファイルで入力してくれる。コメントを入れることもできる。

このサービスがユニークなのは、1着ずつトルソに着せて写真を撮影する点。この写真が「マイコレクション」という本人だけが閲覧できるページに掲載され、ここから返却依頼を行うようになっている。

本やCDであれば、タイトルで識別することができるが、洋服は文字では認識しづらい。「○○というブランドの、赤いワンピース」といっても、赤にも、青みがかった赤もあれば、深紅もあり、本当に特定できたかどうか、定かではない。もちろん、ドレスファイル側では服それぞれに番号が付けられ、それによって管理されているが、ユーザには分からない。そこで、ドレスファイルとユーザの双方が情報を共有するために、どうしても写真が必要だったわけだ。写真を使ったことで、ドレスファイルとユーザの双方で「どの洋服か」を特定することが可能になった。写真によって洋服がデータとなり、情報が共有されたわけだ。

ところが、この写真による「データベース」は、ドレスファイルとユーザの情報共有という以外に、ユーザに大きなメリットをもたらした。

「自分がどんな服を持っているか分からなくなるという女性は少なくありません。そのため、同じような服を何度も買ってしまったり、探していた服が忘れた頃にクローゼットの奥から出てきたり…。そういう方も『マイコレクション』を見ると、自分がどんな服を持っているかがひと目で分かるようになったのです」

「マイコレクション」では、預けてある服が表示されるだけでなく、取り出した服も表示され、返却済みであることが分かるようになっている。一度入力したデータはそのまま残るため、出し入れしているうちに、自分の服のデータベースができるのだ。このデータベースによって、自分の服の全体像が「見える化」されたというわけだ。

更に、コメント欄に自由に書き込みができるので、友人の結婚式で着たとか、何かの発表会で着たというコメントを記入することもできる。これをうまく利用すれば同じ仲間の結婚式で同じ服を着ないようにするといった使い方もできる。服の一点一点が情報化され、利用の仕方が感覚だけでなく、情報として活用されるようになったといえるだろう。

パソコンが倉庫に

写真でアイテムを特定することができるので、倉庫をクローゼット代わりに使用することができる。Web上に自分のクローゼットを持つ感覚。


オンラインでノウハウを情報発信

ドレスファイルのこだわり

現場の職人さんの経験やノウハウを伝える「ドレスファイルのこだわり」。

ドレスファイル活用法

ホームページではクリーニングのノウハウや、活用法、キャンペーンなど、さまざまな情報が発信されている。

オンラインでのサービスである以上、対面サービスにくらべれば、コミュニケーション不足になることは否めない面がある。例えば、服についたシミを発見したら、対面であればすぐに指摘できるが、オンラインではそうはいかない。こうした点について、ドレスファイルではどのような対応をしているのだろうか。

「むしろリアル店舗よりもコミュニケーションがとれているのではないかと思うくらいです。リアルなクリーニング店で受付をされている方は、習熟度に差があり、しかも実際の作業は別の場所にある工場で行っていることがほとんどです。その工場から問い合わせがあることはまずありません。問い合わせをする前に、作業にかからないと間に合いませんから。ところが、ドレスファイルでは、シミなどを見つけると、電話で直接お話をさせていただくし、事務所が工場に隣接しているので、現場の職人さんからの意見もすぐに聞くことができます」

修繕などのオプションサービスを行っていることは先に述べた通り。こうしたきめの細かい対応は、「締め切りに追われていない」という余裕がなし得ることだ。

また、ホームページに「ドレスファイルのこだわり」というコンテンツを設け、現場の職人さんの声を掲載したり、「ドレスファイル活用法」という情報ページも作成。更に、「公開マイコレクション」と銘打って有名人のファッションアイテムを公開するなどの工夫も怠りない。加えて、スタッフのブログやTwitterなどを使ってキャンペーンを告知するなど、ユーザへの情報発信も積極的に行っている。
オンラインだからこその武器を使って、ユーザにアピールする努力を行っているのだ。


ライフスタイルを変えるデータベースに

ドレスファイル西さん_説明

会員間でのオークションや交流など、ソーシャルネットワークによるサービスの構想を語る西さん。

西さんは、この「マイコレクション」というデータベースを活かして、もっとユニークなサービスができないかと模索している。その一つが「ソーシャルクローゼット」だという。現在は「マイコレクション」という自分のページしか閲覧できないが、このデータベースを会員間で公開し、お互いにコミュニケーションすることで、新しい楽しみ方ができるのではないかという。

「一つは、フリーマーケットのような『ソーシャルマーケット』です。会員間で不要になった服を売買しあったら面白いのではないかと考えています。それから、『この服とこの服の組み合わせが良い』と助言し合うようなシステムや、メーカーからの割引販売の斡旋なども考えられます」

ドレスファイル全体像

「マイコレクション」というデータベースを核に、様々なサービスを展開したいというドレスファイルの将来像。現在行っているのは、左上の「オンラインクローゼット」のサービス。

ドレスファイルの会員は、服を非常に大切にすると同時に、所有数、購入数も非常に多く、デジタルにも慣れた人たちという属性がある。こうした層に対して、適切なマーケティングができれば、ユーザが求めるサービスはますます広がりそうだ。

更に現在はパソコンからしか「マイコレクション」にアクセスできないが、将来的には携帯電話やスマートフォンにも対応させたいと言う。自分で撮影した写真をアップロードできるようになれば、もっと便利なデータベースになる可能性もある。

「流行の言葉で言えば、クラウドです。さまざまな機器を使って、いつでもどこでも好きな時に、洋服を一着ずつ預けたり、引き出すことができるようにしたいのです」

将来的には、ファッションアイテムのデータベースを元にした、自由度が高いサービスを目指している。ファッションアイテムの購入、保管、コーディネートという女性にとって楽しみであると同時に、悩みでもある部分を大きく変革し、ライフスタイルまで変えてしまうかもしれないユニークな取り組みとして、これからの発展にも期待したい。

協力:株式会社ドレスファイル(http://dressphile.jp/


神山 恭子 0012 D.O.B 1966.7.3調査報告書 ファイルナンバー049号 服を「情報化」するオンラインクローゼット 「パソコンの中にクローゼットがあるみたい」
イラスト/小湊好治
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