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日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 漆器黒Vol.21 過去と未来を記憶する漆器 根来寺×紀州塗り

本物の根来塗りに会いたくて紀州を訪れる。新大阪から乗ったJR阪和線特急「くろしお」は、なぜかパンダ列車だった。聞けば白浜の「アドベンチャーワールド」にはパンダが13頭もいるという。和歌山からはきのくに線で海南市まで15分足らずである。市の北側の黒江地区は、のこぎりの刃のようにずれながら白壁と瓦の家が並ぶ、独特の景観を持つ紀州漆器の街である。
会津、輪島と共に日本三大漆器に数えられる紀州塗りだが、室町時代までさかのぼる歴史がある一方で進取の気性が強く、戦後はプラスチックの生地や化学塗料などを積極的に取り入れてきた。そのため今では少なくなってしまった、伝統的な漆器作りの技法を守る工房の一つ、谷岡漆芸店で一対の銘々皿を求める。
和歌山市から紀の川を20キロほど上った根来寺(ねごろじ)は、戦国時代には強大な勢力を誇ったという。その何千人もの僧侶が使った黒い漆器が傷んだのを朱塗りにして更に使い込んだところ、擦れて下地の黒が現われたのを趣があるとして再現したといわれる根来塗りは、紀州塗りの代表的技法のひとつである。中世の記憶を留め、これから使い込まれてゆく漆器の未来の姿をも映す根来塗りは、普段使いに祝いの席にと、使われてこそその価値を増す。

画像 漆器赤画像 漆器かすれ画像 漆器に菓子

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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