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日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 棕櫚箒Vol.38 雨が待ち遠しい京の洋傘 和傘職人×「あめふり」

傘を持っていないというアメリカ人から「日本人は雨が降るとなぜ傘を差すんだ?」と聞かれて返答に窮したことがある。日本では年間1億3,000万本の傘が売れるというから、よほど傘好きな国民なのだろうと思いきや、その90%はいわゆるビニール傘だというから、何のことはない使い捨てである。こんな風に傘を消費するのは日本人だけである。
梅雨を前にして、まともな傘が欲しいと思った。和傘に興味があるものの、さすがにあれを持ち歩くのは億劫(おっくう)だ。和傘屋さんはどんな洋傘を作るのだろうかと考えて、京都で探すことにした。二条城の近くに、和傘職人が商う洋傘店があると聞いて訪ねてみた。
JR二条駅で降りて千本三条脇のアーケードに入ると、店先に傘や提灯(ちょうちん)などを溢れんばかりに吊り下げた「ピチ&チャプ ニシカワ」はすぐ見つかった。
ちょうど、提灯に筆を入れていたご主人が手を止めて応対してくれた。折り畳み傘を見せてもらう。まず、傘袋が良い。しっかりと織られた袋から引き出した傘の鮮やかな織り柄。広げてみるとシャフトや骨がしっかりしていて、軽くない分、手元に安定感がある。
表の織り柄は、内側とはうって変わって上品な色合いで、その対比が粋である。小さな部品の作りから塗装、生地の縫製まで、作り手が気を抜いていない。見えないところに修繕保証のシールが貼られている。
最近まで西陣の生地が手に入ったが、今は八王子から取り寄せていること、骨はかろうじて地元のものを使っているが、そのメーカーも先行きが危ぶまれているので、当座のストックを抱えていることなど、仕入れの事情を聞くにつけ、良いものづくりを続けることが難しい時代であると、つくづく思う。
店を出るときに振り返ると主人は提灯の仕上げに戻っていた。

画像 シャフトと骨画像 骨の関節部分画像 鮮やかな織り柄

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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