今年も新米の季節がやってきた。うまい米をさらにうまく味わうための土鍋を求めて伊賀上野まで出かけた。
名古屋駅からJR関西本線亀山駅で加茂行きの単行ディーゼルに乗り換え、右も左も緑また緑の中を分け入るように駆け抜けて伊賀上野駅まで、およそ2時間のローカル線の旅である。
駅から乗ったタクシーは、狭い曲がりくねった山道をためらうことなく登って行く。もう三重県から滋賀県へと県境をまたごうかというあたりになって、やっと伊賀焼窯元の集落、丸柱に着く。
すぐそこの峠を越せば信楽焼の里、甲賀市だという。伊賀流忍術VS甲賀流忍術、伊賀焼VS信楽焼のライバル同士が峠ひとつはさんで文字通り対峙している。
180年前の天保3年築窯という伊賀焼の老舗、長谷園のヒット商品「かまどさん」は、手間いらずで必ずおいしくご飯が炊ける土鍋として人気が高い。一合炊きから五合炊きまでそろっている中から、迷った末に二合炊きを選ぶことにした。
小ぶりでもしっかり重い土鍋を持ち帰って、早速炊いてみる。強火のガスコンロに掛けて10分余り、蒸気が噴き出したのを合図に火を止めて20分蒸らす。多孔質で、「呼吸する土」と異名をとる琵琶湖湖底層の陶土が勝手に「はじめチョロチョロ中パッパ」をやってくれるので、火加減なしでぴかぴかのご飯が炊き上がる。
開発には千点を越える試作を重ね、3年半の年月を要したという。忍術も窯術も一朝一夕に出来るものではない。
- 1949年
- 東京生まれ。
- 1973年
- 東京造形大学デザイン学科卒業
- 1982年~88年
- INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
- 1989年
- 世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
- 1991年
- (株)オープンハウスを設立
- 1994年
- 国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
- 1995年
- Tennen Design '95 Kyotoを主催
- 現在
- (株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。