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日本デザイン探訪~「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 自由という名の雲台Vol.43 自由という名の雲台 精密金属切削技術×アイソン彗星

秋が深まると夜空を見上げることが多くなる。思いがけなくさえざえとした月に出会うのもうれしいが、なんといっても星の数は澄んだ空気のバロメーターだ。たまには夜空を撮りに出かけてみようかと考え、三脚を持ち出して気がついた。雲台が違うのだ。

雲台というのは、撮影用の三脚の上に取り付けてそこにカメラを据え付けるための台である。一般的な雲台は、三軸の回転機構を2本の棒状のハンドルで操作する。一方、自由雲台というのはカメラを一つの球体で支えているような構造なので、ストッパーのねじを緩めてやるだけで自由自在にレンズの向きを変えられる。広い夜空を観察するには、ぐるりとカメラを回せるこの自由雲台が好都合なのである。

自由雲台は多くのメーカーから発売されているが、なかでもUMEMOTOは自由雲台の専門メーカーとして、マニアの間で高い評価を得ている。東京都江東区にある梅本製作所の通販以外でこの雲台を扱っている店は少ないが、中野駅前のフジヤカメラ店でSL-40ZSCを見つけた。金属を削りだして一台一台作られるそれは、やや無骨なデザインながら精巧で、あたかも工芸品のようなディテールを持っている。蜂蜜をかきまわすような滑らかさでスルスルと動き、ピタッと止まる操作感はまさに一級品である。

この11月は、おうし座流星群、しし座流星群が極大となり、下旬にはアイソン彗星(すいせい)がやってくる。自由という名の雲台を担いで、星空探しに出かけるか。


梅本製作所 http://umemoto.ecnet.jp/

画像 球体拡大画像 シュー部分拡大画像 支えている様子

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年~88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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